第27話 いつ雨止むんですかね
蓮兄さんとのデートの日にちも決まり、料理の先生にもなれそうなので少し気分が高揚している今日この頃。
「いつ雨止むんですかね」
「一応、今日の夜には止むみたいだよ」
私は左手に蓮兄さんの温もりを感じながら窓の外を見ると、昨日と同じくらいの雨が降っている。食後の蓮兄さんはスマホで天気予報を見てくれたのか私の聞いた事にすぐ答えてくれた。
「今日、何しようかな…」
独り言のように小さく言う蓮兄さんは何か物寂しそうにココアを飲む。
なんの変哲もないいつもの蓮兄さんの姿なのに家の中で手を繋いでいるってだけでドキドキして何時間でも見ていられるような…見ていたいというか。
「真凛ちゃん、今日何か予定ある?」
蓮兄さんは飲んでいたココアを飲み干し机にカップを置くとこちらを向いてそう聞いてきた。
予定と言う予定はない、出来る事なら蓮兄さんと何かしたい…なんちゃって。
「と、特にないですね。蓮兄さんは…?」
私は急に顔を見られた事で恥ずかしくなり、顔を逸らしてしまう。
「俺もないかな」
そうだった、私が仕事もせずに安静にしててなんて言ったから蓮兄さんは一日暇になっちゃたんだ。それに今日は雨でちょっと外に出るという事も出来ない。
蓮兄さんと何かするなら打って付けのタイミング!
ってまずお誘いしないとだよね。
「れ、蓮兄さん良かったら何か2人でしませんか?私も暇なので」
「あー、いいね。でも何しようか?」
「そうですね…」
やった一緒に遊んでくれる!嬉しい。
まぁそれはそれとして2人で出来る事ってなんだろう?
私1人なら漫画を読むかアニメ、絵を描けばいいけど蓮兄さんと何かするとなるとパッとはすぐに出てこない。
どどど、どうしよう、蓮兄さんもこっちを見てるし。言い出した私が何か言わないとだよね。
「えっとえっと…」
何か何か言わないと、そう思っていると繋いでいる手が軽く握られる感覚があり、蓮兄さんの顔を見ると優しい笑顔で私を見ている。
蓮兄さんは私が焦っているの見て察したのか優しく聞いてきた。
「真凛ちゃん、もしかして1人で何するか考えてる?」
「え、あ、はい」
「だと思った、2人でするんだし2人で決めようよ。案も出さずに待ってるのも悪いしさ」
それもそうだ、このまま1人で考えていても良い物が出てくるとは限らないわけだしそっちの方がいいよね。それに2人で考えるってなんか凄く良い…
「そ、そうですね!何やるかは2人で考えましょうか」
「うん。で、何が良いかな」
そう言う蓮兄さんは当たりを一通り見渡してこう言ってきた。
「真凛ちゃん、俺のアイパッド持ってる?」
「あ、はい。部屋に置いてます、アニメ見たりするのに使うので」
「そっか、ちょうど良さそうだね。今度、行くコラボカフェの今日のご飯は〜のアニメ見ない?俺見てないからさ、それで時間を潰しながら何するか一緒に考えようよ」
「良いですね、まだ私も見てないので興味あります!」
「良かった。じゃあアイパッド持ってきて貰える?飲み物用意して置くよ」
「いえいえ、蓮兄さんは座っててください。飲み物何が良いですか?」
「いいの?そうだなじゃあ、カルピス貰おうかな真凛ちゃんの飲んでるやつ」
「分かりました!」
私は少し名残惜しいけど繋いでいた手を離し自分のカップと蓮兄さんのを手に持ってカウンターに置き、アイパッドを取りに部屋に向かう。
アイパッドは寝る前とかにアニメや漫画を楽しむ為に蓮兄さんから借りているもので、これまでテレビの録画でしか見れていなかったから楽しくて毎日寝落ち覚悟で見漁っている。
漫画も本で読むのに慣れてはいるが、電子というのも最近良いなと感じていて娯楽には困りそうにない。
私はまだ殺風景な部屋に入り、いつも寝ているスペースまで歩き枕元に置いてある充電中のアイパッドを手持つ。
充電は100%ではないけど、80%はあるからコードはなくてもいいかな。
アイパッドを持った私は蓮兄さんの居るリビングに向かう。リビングに戻ると軽くおかえりと言ってくれた、嬉しい。
「蓮兄さん取ってきました」
「うん、ありがとう」
私は蓮兄さんにアイパッドを渡しキッチンに向かう。向かう時にチラッと蓮兄さんの方を振り返ると、見るアニメを探してくれているのかアイパッドを弄っていた。
こちらも遅れないようにとキッチンで飲み物の用意を始める。蓮兄さんは普段炭酸水のみだけど、今日は私と同じカルピス割りにすると言っていたので珍しい。
私のカップと蓮兄さんのカップを軽く洗い、冷蔵庫からカルピスの原液と炭酸水を取りだす。
自分の分を作り終わり、蓮兄さんのカップに原液を入れるのだけど…何対何の比で作るのが好みなのかを聞いておけば良かった。
私の場合は甘み控えめが好きだから、1か2対8、9が好きだけど蓮兄さんの好みが分からない。
さっき作ったココアも甘み控えめで私好みのを飲んで貰ったけど美味しそうにしていたから、大体私と好みが似ているのかも。
という事は1対9で作ってみよう。因みに私も今回同じの。
カップに原液を適正量注ぎ炭酸水を注いでいく。シュワシュワと音を当てて薄ピンク色の飲み物が完成した。
香りは仄かに葡萄の匂いがする…私の好み。
蓮兄さんは何味が好きなんだろう…?今度一緒に買い物に行った時にでも聞いてみようかな。
私は甘い香りのする2つのカップを両手に持ち、机まで運ぶ。
「蓮兄さんお待たせしました」
「うん、ありがとう」
白いカップの1つを蓮兄さんの前に置き、再び隣に座る。
蓮兄さんの作ったというこのダイニングテーブルは横長の机と椅子になっていて隣に座ると境目という境界線がないのでどこまでも近くに寄って行けてしまう。
「蓮兄さん見るのありましたか?」
「ん?うん、あったよ。現在放送中で6話まで放送されてるみたい」
「もう結構、進んでるんですね」
「みたいだね。全部見てたらお昼になるかな」
「じゃあ、見終わったらご飯ですね」
そんな話をしながら、見る準備を進めていく。
お昼は昨日のお鍋の残りを温めるとして、蓮兄さんも大分元気になって来ているし薄切りのお肉入れようかな。
お昼の事もおおよそが決まった所で、そろそろ再生するようだ。
「蓮兄さん楽しみですね」
「そうだね、漫画は全巻持っているからどこまで原作再現してあるのかも気になる…」
普段アニメやそういう話をしないのに珍しい。
本当に好きな作品なんだ。
蓮兄さんの部屋にあった漫画は、恋愛と異世界物、日常系で大方分かれていて恋愛物の今見ようとしてる作品だけは全巻揃っていた。
奏功しているとアニメのOPが再生され始める。
もう数分もすれば本編が始まり、物語が紡がれていく。そうすれば多分蓮兄さんは画面に釘付けになってしまうんだろうな。
私を見て欲しいなんて言えないけど、ほんの少しでも認識はして欲しくなってしまう。
またさっきみたいに手を繋ぎたい。
肩と肩が触れ合う距離で居る事なんてあまりないから、ドキドキしてしまう。
蓮兄さんはどうなんだろう、たまに恥ずかしそうにするけど私の事をどう思ってくれているんだろうか。
たまに手を繋いでくれるのは、どういう意味でしてくれているんだろう。
友達として見られている…という事はないと思う、多分。そうじゃないと私泣いちゃう。
こんな事考えていても時間は止まってくれない。もう少しで始まってしまう。
どうして始めるのが分かるのか、それはさっき蓮兄さんに嘘を付いたから。
蓮兄さんの場合、2度も同じ作品を見る事になるのは気が引けると言いそうだし。できれば直近で話題になりそうな作品が良いしもっと言うと恋愛物が良い。
キスシーンはまだ放送されてないけど、ちょっとエッチな描写はあった。
気まずくなるか、それとも良い雰囲気になるかは分からない。
けど、蓮兄さんとの関係を少しでも進みたくて私よりもひと回り大きなその手にゆっくりと左手を添えるのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回:第28話 こんな時間が
応援、☆☆☆レビューよろしくお願いします!励みになります。
『ブラコン妹の親友が、妹に隠れて部屋にいる話』こちらも現在連載中なので気になればどうぞ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます