第13話 ち、違いますかね!?

 あの後、真凛ちゃんはネイビーのクッションフロアにしたいと言って来たので再び理由を聞いたが、「な、何度も言わせないでください!」と顔を背けて怒られてしまった。


 冗談だったとしても何度も聞くのはダメだったのか思い、素直に謝罪をし買い物を続行する。


 床が決まったので、ついでに壁紙も選んだのだけど真凛ちゃんは一目見るや「これがいいです!」と無地の白い壁紙で即断即決してしまう。別に真凛ちゃんがいいのなら良かったが、もう少し選んでも時間的には余裕なので急がなくてもと思ってしまった。


「蓮兄さん次は何を買うんですか?」

「次はねー、壁用のウッドパネルかな」


「おっ!私希望の木の壁ですね!」

「そうそう、でもどうしようかな」


「?何か問題でもあるんですか?」

「いやね、真凛ちゃんが勉強したり絵を描いたりする机を付けるとなると、壁にくっ付けるだけのウッドパネルだと…」


 ウッドパネルは、薄い板を壁に糊で付けるだけなので強度がない。それに机に脚を付けるとなると、真凛ちゃん希望のデザインとは程お遠いものになる可能性があるわけで。


「よし、ウッドパネル辞めようか」

「え!?辞めちゃうんですか?」


「うん、強度の問題でね」

「え…じゃあ、木の壁は諦めた方がいいって事ですかね」


 そう言う真凛ちゃんは悲しそうに俯いてる。申し訳ない、そう言いたい所だが別に方法が無いわけではないのだ。


「真凛ちゃん、諦めないでいいよ。方法ならあるから」

「え、あるんですか?どんなのです?」


「ふふ、それはね。もう一つ壁を作っちゃえばいいんだよ」

「へ?壁を…作る?」


 このままだと伝わないよね。まぁそれは移動してから話せばいいか。



 *****



 真凛ちゃんは俺が壁を作ると言っても伝わっていないのか頭を傾けているので、「とりあえず着いてきて」というと頭に疑問符を浮かべながらもちょこちょこと後ろを着いて来てくれた。


 真凛ちゃんを連れ俺が向かったのは、縦幅のある木材が置いてある場所だ。部屋の高さは事前に測ってるので問題ないだろう。


「蓮兄さんそろそろ教えて貰えないですか?」


 真凛ちゃんは早く知りたいのか、そわそわしながら俺の服を掴んで答えを急かしてくる。最近やけに距離が近い気がするが、昔の真凛ちゃんはお姉ちゃんにべったりと言った感じだったから、それが俺に変わったと言う事なのだろう。


 だから変な勘違いをしてはいけない。クッションフロアを選んでいた時の冗談のせいか変に意識してしまっている。正常心を保たなくては…気持ち悪いと思われるのは嫌だからな。


「そ、そうだね。今俺が考えているのは、壁の手前に何本かの柱を建てて木の板で壁を作っちゃおうかなって」

「え、そんな事出来るんですか?」


「うんちょっと大変だけどね。YuuTubeでちょっと前に作っている動画見た事あったから、やってみるのもありかなって思ってさ」


 真凛ちゃんの使っている部屋は綺麗な長方形ではなく、入ると右側にちょっとした空間があり机などを配置する形にすれば見た目も悪くないのではないかと、昨日一緒に話し合って決まったことだ。


「だから少し待っててね。あ、待ってる間暇になると思うから真凛ちゃんは気にいる木の色とか見て置いて」

「わかりました!長さは気にしなくても良いんですか?」


「うん、後で切って貰うから気にしなくてもいいよ。あと値段もね!」

「は、はい」


 木材は真凛ちゃんが思っている以上に高いと思うから、怖気付いて何も選ばないなんて事になりかねないので先に言っておく。真凛ちゃんは俺がそう言うと一度値札を確認し、ハッとした表情をしたが頷いてくれたので大丈夫だと信じたい。


 真凛ちゃんが木材を選んでいる間に早めに選んでしまおう。部屋の高さはスマホにメモしているのですぐに目当ての長さを見つける事が出来た。


 部屋の広さを考えると、2本くらいあれば十分だろう。そして次に選ぶのは、アジャスターだ。これは壁や天井に直接木材が触れて傷を付けない役目と床と天井を突っ張る道具。今回は隠す予定なのでデザインを一切考えない。その為しっかりした物を購入する。万が一でも倒れて来ない様にしないと真凛ちゃんに怪我をさせてしまうかもしれないからな。


 柱が立ちそこに木の板を取り付ける設計だから、壁が完成すれば相当な重さになる事は避けられない。そんな物が倒れて来たら大怪我をしてしまうだろうし、もしかすると…いや考えない方がいいな…今は信頼出来る物を購入する事だけを考えよう。


 暫く俺と真凛ちゃんは特に話したりせず商品の品定めをし、お互いの納得のいく物を見つける事が出来た。


「蓮兄さん次は加工ですかね?」

「そうだね、まぁ信頼出来る人に頼んであるから待つだけかな。面取りとかもしてくれるから怪我する心配もないしね」


 真凛ちゃんは木材を選び終わると机は後で大丈夫ですよと言ってきたが、壁が出来たら取り付けるだけだからついでにするよと言うと何だが難しそうな表情を向けてきた。


 一度にしてしまう事で俺が無理をする事になるとでも思っているのだろうか。実際本当に手間が掛からないのだけどね。でも、真凛ちゃんが止めてくるなら辞めておこうかな、変に心配されるのもいい気分はしないし。


「それじゃあ真凛ちゃん、カットはして貰えるからこっちはソファベッド作って行こうか」

「わかりました!でも、私工具とか使った事ないですけど大丈夫ですか?」


「そこは問題ないかな。俺が教えるから、後簡単な事しか頼まないよ。難しい事頼んでも困らせちゃうだろうし、もしかしたら怪我に繋がるかもしれないからね」


 きちんと真凛ちゃんの知りたい事は事前に伝えて作業に移る。真凛ちゃんには伝えた通り、難しい事は頼まず俺が印を書いた所に傷を付ける作業をして貰う。傷を入れる事によりネジを通す穴を開け易くする目的があるので重要な作業だ。


 暫く真凛ちゃんの質問に答えたり、分からない所は見せたり隣で見守ったりをして、無事ソファベッドが完成した。後は色を塗ったり、家で組立てたりするのに一度バラす。


「蓮兄さん、これって明日持って帰るんですか?」

「うーん、木の壁が後でいいなら午後に色を塗って明日持って帰るけど、真凛ちゃんはどうしたい?」


「私は早くこのベッド使ってみたいので明日がいいです!」

「わかった、じゃあ一度ご飯食べてから色塗ろうか」


「え、ご飯?ってもう13時じゃないですか!?」


 真凛ちゃんは作業に夢中になっていたのか今が何時か把握していなかったのようだ。手に付けていた手袋を外してスマホで時間を確認して驚いたような声をあげる。


 不慣れな作業だとしても自分がこれから使うベッドを一生懸命作っているとなると夢中になるのも分からなくはない。俺も子供の頃に初めて作った物は夢中になって朝から晩までご飯も食べずに作業してたな、懐かしい…


 そんな子供の頃を思い出していると、


 ぐぅぅぅ


 と隣から聞こえて来る。


「ち、違いますかね!?」


 隣を見ると真凛ちゃんは少し屈みお腹を抱え俯いた。恥ずかしいのか何も言っていないのに必死に否定してくる。俯いた事によりチラッと見えた耳はとても赤くなっていて、動きだけでも分かり易いのにもしかしたら顔はもっと分かりやすいのかも、なんて考えてしまった。


「はは、いつもご飯食べてる時間過ぎちゃってるからね。お腹の虫も鳴いてるみたいだし、どこか食べに行こうか」

「だ、だから違いますからー!」


 真凛ちゃんはまだ認めたくないのか頬を少し膨らませながら、俺の左腕をポコポコと叩いて抗議してくる。


「ごめんごめん、正直な所俺もお腹空いてるから。真凛ちゃんは何が食べたいとかある?」

「うぅ…じゃあ、ハンバーガーで…」


 少し意地悪しちゃったかなと思い、軽く謝りつつ本題に話を戻すと恥ずかしそうに服の袖を掴み小さく答えてくれる。こう言うちょっとした仕草を可愛いと思ってしまうのは、六花意外の女の子とあまり接してこなかったからなのか、それとも真凛ちゃんだからなのかはまだ分からない。


「了解、じゃあついでに100均にも寄りたいからゆめタウンにでも行こうか」

「わかりました」


 真凛ちゃんの返事を聞いて、お昼を食べる為にホームセンターを後にするのだった。


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 本作品の舞台は一応、徳島県という設定です


 ここまで読んでいただきありがとうございます!


 次回:第14話 れ、蓮兄さんは私の顔、見たいんですか?


 応援、☆☆☆レビューよろしくお願いします!励みになります。


『ブラコン妹の親友が、妹に隠れて部屋にいる話』こちらも現在連載中なので気になればどうぞ!


 https://kakuyomu.jp/works/16817330660041626971

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