第10話 来るの初めてです

 昼休み真凛ちゃんに今日も迎えに行くことを伝えると、日常系アニメキャラのスタンプで了解です!と返ってきた。


 真凛ちゃんは普段から漫画とかラノベとか読んでいるから、そっちに詳しい。


 俺は少しラノベを読むくらいであまり詳しくない、この前リビングに置いてあるクッションを顎に乗せ、俺のiPadでアニメを見る真凛ちゃんを見かけた事があったから相当好きなのだろう。


 今度おすすめでも聞いてみようかな。


 一緒に楽しめたらいいよな。


 そんなことを考えながら、昇降口から出ようとした時またしてもあるカップルを見かけてしまう。


 腕を組み校門へと楽しそうに歩いている二人組。


「堂々といちゃついて…」


 俺と六花は学校では周りの目が気になり大ぴらにいちゃついたりはした事が無かった。俺が六花と釣り合っていないのは自覚していたから、みんなには言わないで欲しいと頼んでいたのだ。


 でも、本当に仲のいいあの3人なら良いかなと教えてしまったのだけど。


 まぁ学校で一緒に居なくても、実家に住んでいる時はお互いの家に良く行っていたからというのもあるが、それが嫌だったのかもしれない。


「何考えてるんだろ…」


 こんな考えしていたら、六花に未練たらたらみたいじゃないか。いや、まだ4日しか経っていないのだ、そう簡単に切り替えれる程人間うまく出来ていない。


 そう自分に言い聞かせ、上履きを靴箱に仕舞う。


 ふと六花の方を見ると今日も駅の方ではなく反対側へ行くようだ。彼氏の方は部活に行かなくていいのか?と一瞬思ったが、テスト前だから無いのか。


 俺は帰宅部だからすぐに気づけなかった。まぁ、俺には関係ないからどうでもいい。そんな事よりも、六花の方が気になる。


 3日も家に帰って来ていない妹が居るのに呑気に遊んでいて大丈夫なのかと。真凛ちゃんからは友達の家に泊まると伝えているらしいが、このままゴールデンウィーク一度も帰ってこないと流石に怪しむよな。


 いつか対策を考えないといけないかもしれない。


 深いため息が出る。六花と直接話さないといけない時が来ると思うと胃がキリキリしてくるな…そんな事よりも、今は真凛ちゃんを迎えに行かなくちゃ。


 そう思い、俺は真凛ちゃんの中学校へと向かう。


「あ、蓮兄さん!」

「お待たせ真凛ちゃん、待たせちゃった?」


 中学校に着くと真凛ちゃんは俺の事をすぐに見つけてくれて、掛け寄って来た。


「いえ、さっき終わったばかりなので大丈夫ですよ」

「そっか良かった。それじゃあ行こうか」


「今日はどこ行くんですか?聞いてなかったですけど」


 そう言えばお昼休みの時は迎えに行くとしか送っていなかった。次からはきちんと内容も送った方が良いかもしれない。


「ベッド作りの材料調達にホームセンターに行くんだよ」

「分かりました!ここの近くにあるんですか?」


「いや、ここからじゃなくて家からちょっとした所にね」


 ホームセンターの場所を知らない真凛ちゃんを連れて、駅の方へと歩き出す。



*****



「おぉ、私ホームセンターに来るの初めてです」

「そうなの?以外かも、日用品とか色んな物売ってるから何度か来てると思ってた」


「え、日用品売ってるんですか?てっきり、大工さんが買うような専門的な工具ばかりある所かと思ってました」

「まぁ、置きだしたのも最近になるのかな。俺が小さい頃、お父さんに連れた時はあまり置いてなかったからね」


 もう10年以上前の事になるから、そこまではっきり覚えているわけではないけど。その頃は俺も真凛ちゃんと同じ事を思っていたのかもしれない。


 そんな事よりも早く見ないと、すぐ暗くなってしまう。今俺と真凛ちゃんはホームセンターの端にあるDIY専用コーナーに来ている。


 ここは俺が住んでいるマンションから徒歩15分の所にあるホームセンターの一角にある場所。


 今朝早く目が覚めたのは真凛ちゃんの料理の音で起きたというのもあるが、本来早く起きる目的があったのだ。それは、ベッドの設計図を見つける為。


 過去に自分で作った物は大体写真を撮ってクラウドにあげていたのだけど、ベッドの設計図だけ見つからなかったので、朝探していた。


 結局見つからず、授業の合間を縫って新しく書く事になったのだけど。自分で書いた設計図を写真で取っているから、お買い物はスマホ一台で出来る。


 さて使えそうなものは…


「蓮兄さん今回どんなの作ってくれるんですか?」

「んー、今回はね真凛ちゃんの要望通りの洋服の収納機付き且つ枕もとにキューブボックス欲しいって言ってたけど、あれだと奥行きが広すぎるから本がぴったり入るくらいのスライド収納付きヘッドボードでも作ろうかなって」


「…へ、ヘッドボード?」


 名前を言っても真凛ちゃんは分からないよね、普段目にしている物でも家具の一部の名称とか一々調べたりしないだろうし。


 俺もDIYを本格的に始めるまで気にした事なかったから、今の真凛ちゃんが昔の自分を見ているみたいで可愛く思えてくる。


「えっと、ヘッドボードって言うのはベッドの頭側についている板の事を言うんだけど。小物を置けるスペースを付けたり、コンセント用に穴をあけたりとか色々デザイン出来たりする奴かな」


「ほへぇ、私ベッドで過ごすことが多いのでそれはあると助かるかもです」

「ソファべッドって言ってたからそうかなって思ってたんだ。じゃあ、設計図通りに作ればなんとかなりそうかな」


 俺は真凛ちゃんにどういう設計になるかの説明をしつつ、購入していく板や他の物を選んでいく。


 出来れば丈夫な板を安く買い、ここで加工出来れば完璧。そもそも今回作るのは真凛ちゃんでも組み立てできるような簡単な物にしようと考えているからシンプルな素材に厳選してある。だから、選ぶのには時間は掛からないのだけど…


 今の時刻は18時か、今から加工していたら余裕で20時超えてしまう。


「真凛ちゃん一通り買う物揃ったから加工は明日に回して、晩御飯食べる為に帰ろうか」

「わかりました。あ、その前に気になったんですけど、加工って自分でするんですか?」


「うーん自分でする人もいるけど、俺は切るの下手だから頼んじゃうかな。でも今の時間だとセルフしかないから頼めないんだよね」


 ここのホームセンターは20時閉めだから職員さんが加工のお手伝いをしてくれるのは18時までなのだ。


 一応知り合いが担当しているので頼めば大丈夫だけど、明日からでも十分時間があるから無理にして貰うのは申し訳ないよな。


「じゃあ今は帰って明日早く来た方が良いって事ですね」

「そうなるね、購入した板とかは店員さんに言えば保管して貰えるから少し行ってくるよ」


 真凛ちゃんにそう言い俺は、明日からここで作業をすることを受付の方に言うと快く承諾してくれた。


 受付をしてくれている人は、俺がたまに来ている時に知り合った中年の優しいお兄さんというような見た目の男性。


 話しやすい事から、DIY初心者の頃は良くお世話になった。もともとお父さんの友達らしいからそのおかげで良くして貰ったというのもあるとは思うが。


「それじゃあ真凛ちゃん帰ろうか」

「はい!家に帰ったら晩御飯ですね!」


「ありがとね、因みに献立聞いてもいいかな」

「はい、今晩は生姜焼きです。楽しみにしててください!」


 そう真凛ちゃんは元気よく言って自宅マンションまでの帰路を軽やかに駆けていく。


「真凛ちゃん走ると危ないよ?」

「えへへ、明日が楽しみで…」


 俺の言葉に足を止めくるんと振り返る。振り返る真凛ちゃんの髪が夕陽に照らされとても綺麗に瞳に映る。


 ちらっと見えた彼女の表情は釣られて口許が緩む物だった。


「ずっとこんな日が続けばな…」

「蓮兄さん、何か言いましたか?」


「ううん、何も」


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ここまで読んでいただきありがとうございます!


次回:第11話 してみたいです。お部屋作り


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『ブラコン妹の親友が、妹に隠れて部屋にいる話』こちらも現在連載中なので気になればどうぞ!


https://kakuyomu.jp/works/16817330660041626971

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