第4話 添い寝ですかね…
真凛ちゃんが作ってくれたオムライスに舌鼓を打ったのち洗い物をしている。
真凛ちゃんは『洗い物も私がしますよ』と言ってくれたのだが、こんなにも美味しい料理を作ってくれたのに後片付けもさせるのは気が引けたので丁重にお断りした。
「蓮兄さん終わりました?」
「うん、今ちょうど終わったところだよ。部屋行こうか」
「了解であります!」
ぴしっと可愛らしい敬礼をした真凛ちゃんを見て、少しだけ笑ってしまった。目が見えないのは意思疎通に問題が起こるのではないかと思っていたが、真凛ちゃんは全身で感情を表現する子らしいから分かりやすくて助かる。
敬礼を見送った後は真凛ちゃんを連れて、廊下の突き当たり正面にある部屋へと来ていた。
「うわぁ、物が凄いですね」
「まぁね、なかなか同棲の話とか来なくていつの間にか物置と化してたよね」
この部屋には仕事に使う材料や家具を作った時に余った木の板などが雑多に置かれている。
お世辞にも綺麗とは言えない部屋だけど少し掃除すれば真凛ちゃんが寝るスペースくらいは確保出来るのではないだろうか。
「よし、捨てましょうか」
「え、ちょっと待って!?少し端に寄せれば寝るスペースくらいは出来ると思うけど…」
「えぇ…嫌なんですけど、私にごみの中で生活しろって言うんですか?」
「ゴミじゃないからね!?たまに仕事に使える物とか出て来るから」
「お宝発掘じゃないんですから…」
俺の発言に呆れたような声を上げる真凛ちゃんには申し訳ないが、捨てるという行為はあまりしたくない。
仕事に使うようなものは自室にあるもので足りているが、ふらっとこの部屋に来た時にこれはっ!となるものが眠っていたりする。
その為全てを捨てるという選択を取るとなると、俺の少しの楽しみが無くなってしまう。
だがまぁ、そもそも六花と一緒に住む想定でこの部屋を借りたのだからいつかは掃除しないといけないと思っていた。
それが今という訳で、真凛ちゃんと住むなら覚悟を決めないといけない。
「わかったよ…捨てようか。でも仕事に使えそうな物とかは別けて置いて欲しいかな。あー、あと木の板だけど角を面取りしてないと思うから気を付けるか俺に言って?真凛ちゃんが怪我するの嫌だし」
「…わ、分かりました。危ないものは蓮兄さんに言いますね」
俺は捨てるのを決意をし、最小限の注意事項を述べると真凛ちゃんは俺の顔を見ずに頷いた。若干俯いてるように見えるけど気のせいかな。
まず俺から先に部屋に入り、床を占拠している物を別け始め真凛ちゃんもそれに続く。
「蓮兄さんこの変な形のガラス瓶はどうしましょう?」
「あー、いつか使えそうだね。使えそうなものはこの箱に入れていってもらえる?」
「わかりました!あとここにある透明な液は何ですか?ローションですか?」
「んなもんあるわけ無いでしょ!それはラベルを剝がしてるけど多分レジン液だね。さっきも使ってた奴だし、補充のために自室に持って行っておくよ」
「了解です!それにしても使えそうな物が一杯ありますね」
「おっ真凛ちゃん分かる?ここは宝の山見たいな所だからね」
「そこまでは言ってないです。使えそうなものがあるのは分かりますが、大体ゴミじゃないですか。この、手のひらに乗るような木の板なんて使えるんですか?」
「使いようによっては……すぅ…うん、ゴミだね」
真凛ちゃんにごみ屋敷だと言われているみたいで少しだけ傷ついたが、この部屋を客観視すればゴミ箱同然なので何も言えない。
別に生活力が無いわけでは無いが、こうやってため込み癖があると汚部屋になるのは致し方ないと思う。言い訳じゃないからな?
「ふぅ、これで半分ですね」
「だね、思っていたよりも量があったよ。これで一年と考えたら、来年にはどうなっていた事か」
「ほんとですよ、でも安心してください!今日から私がそうはさせませんから」
「それは助かるな、俺一人だとまたこうなりそうだから」
「来年でも再来年でも蓮兄さんの家のお掃除は私が担当しますね!」
「どれだけ俺の部屋に住み続ける予定なんだよ」
「それは、蓮兄さんが新しい彼女を作るまでです!そしたら私は……私は…」
その続きを言おうとする真凛ちゃんは言い淀む。どこか寂しそうな雰囲気を漂わせる彼女に対してどう接すればいいか分からないが、今言える事はただ一つ。
「俺は当分彼女は作らないよ。だから、真凛ちゃんは気兼ね無く此処に住んでていいから」
「っ!はい、ありがとうございます」
そう言った真凛ちゃんの口元は少し笑みを帯びているように見えて、俺も一安心だ。
あれ?なんで俺安心してるんだろう。別に真凛ちゃんは居候しているだけで、いつか居なくなるのは分かっているのに…多分この感情は今だけの物だよな。
その後は二人で残りの作業を進め、真凛ちゃんに貶された部屋は綺麗になった。
「何もないとこんなに広いんだな」
「ほんとですね。そして、これから私がここに住むんですか…あ、聞くの忘れてたんですけど布団とかって何処にあるんですか?」
「あ…」
「へ?」
ここに来て俺はある事を思い出したのだ。それもとても重要な事を。
「無いな。すまん誰も泊まったことがないんだよ」
「え…私どこで寝ればいいんですか?床ですか?」
「そこだよなぁ、うちはソファないし買いに行くにしても明日くらいだろうからな」
「じゃ、じゃあ今日は蓮兄さんと添い寝ですかね…」
そう言う真凛ちゃんは両手の指を合わせ、もじもじしこちらを見上げて来る。
「いや、それは真凛ちゃんが嫌だろ?」
「わ、私は…別に…」
「え?なんて?」
「なんでもないです!」
小さな声で俯きながら言う真凛ちゃんはなんて言ったのか分からないが、男が無理な真凛ちゃんが俺と一緒に寝るなんて出来る訳がない。嫌な思いをされながら寝られるよりかはいいだろうし。
久しぶりだが、あれをするか。
「真凛ちゃんは俺のベッド使ってよ。俺はリビングで仕事でもするからさ」
「え、それって寝ないって事ですか?」
「うん、明日も学校だけど、まぁ大丈夫だろ」
「ダメですよ!ちゃんと寝てください!」
「いや、でも…」
「ちゃんと寝てください!」
意志は固いようだ。でもそうなると寝る所が無い。こんな田舎にカプセルホテルや満喫は近場にないし、どうしたものかな。
「蓮兄さんは…その、私と寝るの嫌ですか?」
「へ?」
「だ、だから…私と、その…」
「いや、何度も言わなくていいよ」
「聞こえてるなら答えてくださいよ」
「はぁ、別に嫌ではないよ」
「なら!」
「でも、それは真凛ちゃんが休まらないだろ?俺は床でも寝れるから、無理しないでいいよ」
俺がそう言うと納得がいかないと言った感じに頬を膨らませている。そんなに誰かと寝たいなんて、もしかしていつも六花と寝ているのか?
中学3年生にしてそれは…いや、まだまだ甘えたいお年頃なのかな。
綺麗になった部屋で真凛ちゃんと寝る場所を決める話をして、気づいたらなんともう22時になっていた。
普段はこのあたりから仕事の大詰めに入るのだけど、今日は真凛ちゃんが居る。
それに、
「ふぁぁ…」
その真凛ちゃんはお掃除で疲れたのか大きなあくびをしているのだ。
真凛ちゃんが俺のベッドで寝るというのなら、その近くで手元ランプを付けたりすると就寝の妨げになるだろう。
「ごめん、真凛ちゃんはもう眠たいよね。ベッド行こうか」
「は、はい…蓮兄さんは?」
「俺は風呂に入ってからリビングで寝るよクッションあるから」
「そうですか…わかりました」
まだ真凛ちゃんは納得がいっていないのか唇を少し尖らせている。これに関しては理解してほしい。
俺だって男なのだ、真凛ちゃんみたいな女の子と一緒に寝て変な気を起こさないなんて断言できないから。
真凛ちゃんには嫌われたくない。
そう思ってしまうのは、今の俺の支えは少なからず真凛ちゃんだと思うから。
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ここまで読んでいただきありがとうございます!
次回:今日帰り迎えに来てもらえないですか?
応援、☆☆☆レビューよろしくお願いします!励みになります。
ちょっとした報告なのですが、これからは
『傷心中に公園で幼馴染の妹を段ボールから拾ったら、めちゃくちゃ世話してくれるようになった』と
『ブラコン妹の親友が、妹に隠れて部屋にいる話』
https://kakuyomu.jp/works/16817330660041626971
計2作品を1日ずつ交互に投稿しようと考えております!
リアルが忙しくなりそうなので、理解していただけると助かります!
ではこれからもよろしくお願いします!
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