6 side 猫 ③
今日はご飯をもらえなかった。
いつもと同じくらいの空色の時に、いつもの場所に行ったのだけど、女の人はそこには現れなかった。
昨日は雨で、最近見つけた隠れ家で一日大人しくしていたから、何も食べていない。もう一日くらいなら耐えられるけど、少し残念だった。
前の住処から旅立って、結構な時間が経ったと思う。
最近はヒトの子供たちにも顔を覚えてもらうことができた。ここら辺に住んでいるらしい。だけど、困ったことにボクの事を色んな名前で呼ぶから、たまに返事をするのが遅れてしまう。
____初めにもらった名前は「テンイチ」だ。
少し太った男の子がつけてくれた。
周りの子曰く「お前、どんだけラーメン食いてぇんだよ」らしい。
よくわからないけど、皆笑っていた。
他には、トラキチ、シャーク、カイホウ、だったはずだ。
あ、あと、オニャンコポンもだ。
名前をくれた子達の顔は覚えた。
顔を合せるとおやつを分けてくれるんだ。
この前友達になった野良ネコが教えてくれた通りだった。
「ここら辺の人間は皆優しいから、顔と付けられた名前はしっかり覚えておきな」
何でかまでは教えてくれなかったけど、従って良かったと思う。お陰でボクはこの町で今も元気に生きている。
しばらく歩いていると、よく立ち寄る公園の前に来た。いつも通り、中に入っていく。
この時間は普段は誰もいないのだけど、今日は違った。
「さらりーまん」の男の人がベンチに座っていた。
_____この人は多分、怖い人じゃない。
そんな事を思いながら、いつもの道を歩いていった。
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