4 side サラリーマン ②-1

 足取りがひどく重い。

 

 私の家の最寄り駅は、改札から歩道に降りるまでの階段が異様に長い。流石に慣れてきたのだが、今日はいつもより2倍長く感じた。


 昼間の出来事が頭をよぎる。後悔の念ばかりが湧き上がる。


「……来週の月曜日に取引先に商品が届くようにしておくべき所を、誤って、もう一週間後の月曜日に、届くようにしてしまっておりました……」


 説明を受けた瞬間、できうる対処法を可能な限り考えた。


 一部分納、或いは製造部門に何とかしてもらい、商品の生産優先順位を上げてもらう。しかし、そもそもの量が多いから厳しいか。或いは……


「あの、今から取引先に行って、直接謝って」

「少し黙ってくれ!」


_____言う言わないの判断をする前に、反射的に声が出てしまった。


「……はい、申し訳ありません」


 部下は、今までに見せたこともないような、青ざめた表情をしていた。


 彼の長所は、突き抜けた明るさと前向きな姿勢、そして関わる人への誠実さだ。


 私自身も、これほどまでに語気を荒らげたことはなかった。もしかしたら、私のこのひと声で彼のアイデンティティが失われてしまうかもしれない。


(これは、しまったな……)


 皆、無言のまま、しばらく時が過ぎる。


「…対応方法を考えます。皆は一旦、各々の仕事に戻ってくれていい。何かあったら、声をかけさせてもらうから、その時は、よろしく頼む……」


 指示を出す声は、言葉を継げば継ぐほど小さくなっていった。

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