第24話「誤魔化しに隠されたもの」

「めっちゃ恥ずかしかった……!」


 スーパーから帰る中、風見さんは両手で顔を押さえながら歩いていた。

 まぁあれだけ周りから弄られたら、それも当然だろう。


「自業自得でしょ……」

「うぅ、そんな目を向けてこなくてもいいじゃん……!」

「いや、一緒に弄られた身にもなってほしいんだけど?」


 そう、風見さんが腕に抱き着いてきているので逃げられなかった俺も、おばさんたちの標的にされたのだ。

 ジロジロと見られるし、彼氏扱いされるしで、本当に恥ずかしかった。


「いいでしょ、私の彼氏扱いなんだから……! 鼻が高いでしょ……!」


 恥ずかしさでヤケになっているのか、風見さんは顔を真っ赤にしながら得意げな表情を向けてきた。

 確かに、学校で大人気な風見さんの彼氏に見られるのは、光栄なことだろう。

 だけど――。


「本当の彼氏じゃないんだから、むなしいだけだよ」


 どれだけ周りから言われようと、本当に付き合っているわけじゃないのだ。

 それで誇らしくなることなんてない。


 しかし、俺の発言がまずかったのか、風見さんが俯いてしまった。


「風見さん?」


 心配になって声をかけてみると、風見さんの視線が俺に向く。

 その瞳はなぜか潤っており、顔は赤く染まったままだった。

 彼女は、ゆっくりと口を開く。


「……じゃあ、本当の彼氏になる……?」


「えっ……?」


 いったい何を言われたのか。

 衝撃的な一言に、俺の脳はフリーズしてしまった。


 今、本当の彼氏になるかって聞かれたのか……?


「――な、な~んてね! 冗談だよ、冗談……!」


 固まっていると、風見さんは俺から腕を放し、顔の前で両手を振り始めた。

 言葉にしている通り、冗談だったらしい。


「な、なんだ、またからかったのか……」

「えへへ、ごめんね」


 風見さんはかわいらしく笑いながら、舌をペロッと出す。

 この子のからかい好きにはほんと困らされる。

 突然あんなこと言われたら、本気にするじゃないか。


「あんまりそういうこと言うのはどうかと思うよ? 相手が本気にしたらどうするの?」

「……ごめん」


 注意をすると、風見さんは再び俯いてしまった。

 横から見える顔は、ショックを受けたように暗くなっている。


「…………」


 その表情に思うところがあった俺は、風見さんのことを見つめながら、先程のやりとりを思い返してみた。


 彼女のあれは、本当に冗談だったのだろうか?

 初めて絡んできた頃にからかわれて、それ以降いきなり抱き着くばかりしてくるから、俺をからかっていると思っていた。

 だけど、風見さんが言っている通り、本当にからかっていないのだとしたら、あれは好意の表れになるはずだ。


 正直、ほとんど絡みのなかった彼女に好意を向けられる理由がわからなかったから、からかって俺の反応を楽しんでいるだけだと思っていたけど――。


「ごめん、私先に帰るね……」


 風見さんはそう言うと、俺の手から美海ちゃんをとろうと、手を伸ばしてきた。

 これはつまり、俺に家へ来るなと暗に言っているんだろう。


「待って」


 このまま別れるのはよくない――そう判断した俺は、風見さんの手をかわして彼女の目をまっすぐと見つめた。



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【あとがき】


読んで頂き、ありがとうございます(*´▽`*)


話が面白い、キャラがかわいい、

お前らさっさとくっつけと思って頂けましたら、

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