第21話「幼女は従妹に会いたい」

「――誠司、晩御飯はどうするの?」


 膝の上で甘えてくる美海ちゃんの相手をしていると、風見さんが上目遣いで聞いてきた。

 俺の顔色を窺っているんだろう。


「えっ、普通に家で食べるけど?」

「そう……」


 なんだか残念そうにされたけど、さすがにご馳走になるわけにはいかない。


「えっと……これから買いものに行くんだけど、誠司もついてくる……?」


 風見さんは、両手の人差し指をくっつけてモジモジとしながら、上目遣いで尋ねてくる。

 やっぱり、いつもの彼女じゃない。


 このおとなしくていじらしい子、いったい誰だ?


「せいちゃん、いくよねぇ!? みうも、いく!」


 買いものが好きだと言っていた美海ちゃんは、俺にもついてきてほしいらしい。

 本当は邪魔になりそうだから、行くのはどうかと思うが――よく考えれば、俺が美海ちゃんの相手をしていると、風見さんもゆっくり食材が選べるのかもしれない。


「それじゃあ、行こうかな」

「んっ……!」


 笑顔で返すと、美海ちゃんも満面の笑みを返してくれた。

 本当にかわいい子だ。


「…………」


 しかし、風見さんはジト目を向けてくる。

 大方、俺のことをまた『ロリコン』とでも思っているのだろう。


「一々疑わないでくれるかな?」

「私との対応が違いすぎるもん……」


 やけにそのことを根に持つな。

 幼女と同級生に対して態度が違うなんて、当然のことだろう。


「ねぇね、かいもの……!」


 美海ちゃんは早く行きたいようで、机をバシバシと叩きながら風見さんにアピールする。

 それを見た風見さんの表情が、ムッとしたものに変わった。

 そして、口を開いたのだけど――。


「美海ちゃん、机は叩いたら駄目だよ?」


 美海ちゃんの行動が良くないと思った俺が、先に美海ちゃんの手を掴んで止めた。

 それによって、美海ちゃんが悲しそうに俺の顔を見上げてくる。


「叩いちゃったら、机が痛い痛いって泣いちゃうよ?」

「あっ……んっ……」


 幼い子に対して注意するならこんな感じかな、と思って言うと、美海ちゃんにちゃんと伝わったようだ。

 悲しそうに目をせてしまったので、よしよしと頭を撫でてあげる。


「これから気をつけたらいいからね?」

「んっ……!」


 単純な子なので、頭を撫でただけで元気が出たようだ。

 こういうところは有難い。


「やっぱり、扱いが上手……」

「これくらいは誰にでもできるでしょ」


 ジッと見つめてくる風見さんに俺は困ったように笑いながら、美海ちゃんを抱えたまま腰をあげる。

 それによって、風見さんも立ち上がり、隣に並んできた。


「本当に妹や弟とかいないの?」

「いないよ?」

従兄弟いとことかは?」


 やけに気にしてくるな?

 そんなにおかしいんだろうか?


「三つ下に従妹いとこがいるよ。女の子だけどね」

「結構遊んだりする?」

「正月とか、夏休みとかで会うくらいかな」

「そうなんだ……」


 風見さんは口元に手を当てて、何かを考えているようだ。

 いったい何を考えているのやら。

 とりあえず、俺はロリコンじゃないということだけは、わかってほしい。


「おにいちゃんのいとこ、みうもあいたい……!」

「えっ? う~ん……」


 幼い美海ちゃんも、従妹という言葉は知っているようだ。

 妹に近いから、会ってみたいんだろう。


 まぁ呼べば、あの子なら来てくれそうな気はするけど――多分、風見さんと相性が悪いんだよな。

 ギャル嫌いというか……絶対一悶着ひともんちゃく起きる。

 だから、会わせたくはなかった。


「機会があったらね」

「むぅ……」


 誤魔化したのがバレたのだろう。

 美海ちゃんは不満そうに頬を膨らませてしまった。


 しかし、こうなった時は――頭を撫でれば、全て解決する。


「んっ、えへへ……」


 優しく頭を撫でると、美海ちゃんが嬉しそうに笑ったので、俺は安心するのだった。


 ――なんだか、隣から白い目を向けられているけど。




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【あとがき】


読んで頂き、ありがとうございます(*´▽`*)


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これからも是非、楽しんで頂けますと幸いです♪

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