第15話「猫のものまね」
「美海ちゃん、何して遊びたいの?」
「んっ、おままごと!」
プリンを食べ終わったので尋ねたのだけど、やっぱり美海ちゃんはおままごとが好きみたいだ。
昨日は風見さんが寝込んでいたので二人でやったが、今日は三人でやることになるだろう。
「今日は何役をしたらいいのかな?」
「みうが、ママ! せいちゃんが、パパ! ねぇねが、ねこちゃん!」
「ちょっと待って!? そこはせめて娘じゃないの!?」
待ったをかけたのは、笑顔で話を聞いていた風見さんだった。
確かに、ママとパパがくれば、普通は子供を連想する。
それなのに、まさかの猫を指定されるとは、風見さんも思わなかったのだろう。
「ねぇね、ねこちゃん……!」
しかし、美海ちゃんは譲りたくない部分らしく、力強く猫を推してくる。
猫が好きなのかもしれない。
まぁ、美海ちゃんは新婚みたいな夫婦のことを、ママとパパって言っているだけみたいだから、娘の存在は重要じゃないのだろう。
「美海、こういう時は、娘がいたほうがいいと思うよ?」
風見さんは猫役が嫌なようで、頑張って美海ちゃんを説得しようとする。
だけど、美海ちゃんはブンブンと首を左右に振った。
「ねこちゃん……!」
頬をパンパンに膨らませながら、拗ねた表情で姉を見つめている。
うん、この子は絶対譲らないな。
となると、風見さんが折れるしかないわけだが……。
「風見さん、猫役をしてあげたら?」
「同級生の前で、猫にならないといけない気持ちわかる……!?」
彼女は顔を赤くしてムキになりながら、俺の顔を見てきた。
やっぱり恥ずかしいのだろう。
俺も猫役は躊躇するので、気持ちはわからなくない。
……まぁ俺の場合、美海ちゃんに悲しそうな目を向けられたら、引き受けるだろうけど。
「ねこちゃん……」
先程まで拗ねた表情を見せていた美海ちゃんは、今度は泣きそうな目で風見さんを見つめ始めた。
それによって、風見さんが『うっ……』と後ずさってしまう。
やっぱり、この目はずるい。
「わ、わかった、やるから! やるから、そんな目で見つめないで!」
結局、美海ちゃんの悲しそうな目に負けた風見さんが、猫役をすることになった。
幼い子にあんな悲しそうな顔をされたら、それも当然だ。
風見さんが引き受けたことで、美海ちゃんはパァッと嬉しそうな表情を浮かべた後、なにやらゴソゴソと大きなおもちゃ箱を漁りだした。
おままごとセットがあの中に入っていたから、それを取り出しているのかと思ったけれど――。
「はい、ねぇね……!」
なぜか猫耳がついたカチューシャが出てきて、風見さんに渡していた。
大きさ的にも、美海ちゃんの頭に合うものではなく、風見さんの頭に合うもののようだ。
なんであんなものがあるんだろ……?
「えぇ……これもつけないとだめなの……?」
「ねこちゃん……!」
「わかったよ……」
風見さんは渋々、猫耳カチューシャを頭につけた。
しかし、まだ美海ちゃんは納得していないようで、ジッと姉のことを見つめている。
それによって、何を求められているか理解したのか、風見さんは恥ずかしそうに顔の近くに右手を持っていき、猫の手のように丸めた。
そして――。
「にゃ、にゃんにゃん」
顔を真っ赤にしながら、とても恥ずかしそうに猫の物真似をしたのだった。
――いや、それは反則だよ……。
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【あとがき】
読んで頂き、ありがとうございます!!
日間、週間ラブコメランキングともに3位にあがってました…!
本当に1位まであともう少しです…!(≧◇≦)
この勢いで1位になれると嬉しいです(*´▽`*)
話が面白い、キャラがかわいいと思って頂けましたら、
作品フォローや評価☆☆☆を★★★にして頂けると嬉しいです(≧▽≦)
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