第13話「単純でかわいい妹」
「――よし、行こっかな」
学校が終わって家に帰った俺は、私服に着替えると、ショルダーバッグを携えて家を出る。
道中のスーパーでお菓子と飲み物を買い、そのまま風見さんの家に向かった。
――ピンッポーン♪
俺は風見さんの家に着くと、インターフォンを鳴らした。
少しして、ドタドタという音が聞こえてくる。
『みうがでるの……!』
そして、小さくではあるが、幼い子特有の高くてかわいらしい声が聞こえてきた。
姿は見えないのに、なんだか微笑ましい。
「せいちゃん、きたぁ!」
ゆっくりとドアが開くと、小さな天使が飛び出してきた。
もちろん、美海ちゃんのことだ。
「こんにちは、美海ちゃん」
「こんにちはぁ!」
美海ちゃんは笑顔で挨拶を返してくれて、ギュッと俺の足にしがみついてくる。
相変わらずかわいい子だ。
「いらっしゃい、誠司。どうぞ入って」
入ってと言われても、現在美海ちゃんが足にしがみついているので、歩けない。
だから俺は美海ちゃんに手を伸ばしたのだけど、美海ちゃんの表情がパァッと輝いた。
抱っこするとわかったようだ。
「それじゃあ、お邪魔します」
「おじゃましま~す!」
美海ちゃんを抱っこしながら家にあがると、オウム返しのように俺の言葉を真似した。
「いや、美海はお邪魔しますじゃないから……」
風見さんは困ったように笑う。
妹が間違った言葉を覚えると困る、とでも考えているのかもしれない。
もちろん、美海ちゃんがただ俺の真似をしているだけだ、というのはわかっているだろうが。
なんだか、風見さんは美海ちゃんがいると、お姉さんの顔になっている気がする。
少なくとも、学校でのギャルっぽさがほとんどない。
「風見さん、これどうぞ」
俺はスーパーの買い物袋を渡す。
「えっ、わざわざ買ってきてくれたの? こっちが呼んでるんだし、気を遣わなくていいのに……」
「そういうわけにもいかないよ。それにお菓子ばかり買ってるから、美海ちゃんと後で食べて」
「おやつ!?」
お菓子という言葉に反応したのだろう。
美海ちゃんの目がキラキラと輝きだした。
視線は風見さんが持つ買い物袋に行き、袋の口を開こうと手を伸ばす。
それを見て、さすがにちょっと離れていて危ないと思った俺は、風見さんに近付いた。
「こら美海、行儀が悪いよ?」
しかし、逆に風見さんは、美海ちゃんから買い物袋を遠ざけてしまった。
持ってきた人の前で、何を持ってきたか確認するのは駄目だ、と言いたいのだろう。
「むぅ……! ねぇね、いじわる……!」
それが理解できない美海ちゃんは、風見さんが自分に意地悪していると判断したようだ。
まぁ、そう思っても仕方がないのかもしれないが……。
どうしようか……?
持ってきた俺が美海ちゃんに言うのも、違う気がするし……。
でも、このままだと美海ちゃんが意味を理解せず、ただ風見さんに不満を持つだけで終わるかもしれない。
だったら、俺が間に入ったほうがいいような気も……。
そう悩んでいると、チラッと風見さんが視線を向けてきた。
そして、すぐに美海ちゃんに視線を戻す。
「こういうのはね、持ってきた人の前で確認したら駄目なんだよ? 失礼になっちゃうからね」
「…………」
美海ちゃんは不満そうな顔をするものの、言い返すことはしない。
一応納得はしたのだろうか?
とりあえず、俺の出番はなかったようだ。
「誠司、ありがとうね。ほら、美海もお礼を言うの」
「んっ、せいちゃん、ありがと……」
多分、いつも風見さんが礼儀などを教えているんだろうな。
不満そうにしながらも、ちゃんと美海ちゃんはお礼を言ってきた。
「後で風見さんと一緒に食べてね?」
俺はなでなでと美海ちゃんの頭を撫でる。
それがよかったようで、美海ちゃんの表情は不満だったものから、かわいらしい笑顔に変わった。
「えへへ」
うん、ご機嫌になったようでよかった。
「私の妹ながら、単純すぎる……」
「まぁまぁ、素直なところが子供のかわいいところだし」
思うところがあるような表情をした風見さんに対し、俺は少し苦笑い気味に笑顔を返す。
彼女が言いたいこともわかるのだけど、やっぱり単純すぎるくらい素直なほうが、かわいいだろう。
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【あとがき】
読んで頂き、ありがとうございます(´▽`*)
週間ラブコメランキング5位にあがってました…!
一昨日には日間ラブコメランキング3位になってましたし、
この調子で1位になれると嬉しいです(≧◇≦)
話が面白い、キャラがかわいいと思って頂けましたら、
作品フォローや評価☆☆☆を★★★にして頂けると嬉しいです(≧▽≦)
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