第7話「大人気ギャルは連絡先を交換したい」
「…………」
プリンを食べた後、ベッドに横になっていた風見さんは、ウトウトとし始めた。
ずっと横になっているし、眠たくなったのだろう。
「親ってまだ帰ってこないの?」
「んっ……いつも、遅いから……。だいたい、私たちが寝てから帰ってくる……」
よほど忙しい職業なようだ。
だから彼女が、家事をしているというわけか。
さすがに俺は、そんなに遅くまで残るわけにはいかない。
というかそんなことしたら、俺が母さんたちに怒られるだろう。
「連絡先、交換しておく?」
「――っ!? 急にどうしたの!?」
念のため尋ねると、彼女はガバッと体を起こし、俺に詰め寄ってきた。
眠たそうにしていたのは、なんだったんだ?
「やっぱやめようかな……」
「ま、待ってよ! それはおかしい!」
いやだって、なんだかがっついてくる風見さんが怖いし……。
今まで何度か連絡先を聞かれたことはあったけれど、教えたことはない。
その理由は言わずもがな、からかってばかりくる彼女に教えても、ろくなことにならないと思っていたからだ。
しかし、体調が悪くて親も仕事があるのなら、万が一を考えて教えておいたほうがいい――と思ったのだけど、このがっつきようは怖い。
「よく考えたら、もう既に結構元気になってるみたいだから、不要かもしれないね」
「期待させるだけ期待させて、それは酷いと思う……!」
と言われてもなぁ……。
毎日彼女から沢山メッセージが来るようになったら困るし。
それでブロックなんかしたら、学校でうるさそうだもんな。
「それじゃあ、電話番号だけ交換しよう。何かあったら、電話してくれたらいいから」
「……ふふ、いいよ?」
ん?
もっと文句を言ってくると思ったのに、意外とあっさり退いたな?
もしかして、ここを拒否して電話番号すら交換されないことを恐れた、とか?
……まぁ、納得したのならいいか。
俺はそのまま、電話番号だけを彼女に伝える。
そして、お互い電話番号を交換すると――。
「あれ!? 友達追加されない!?」
風見さんが、何やら驚いていた。
あぁ、なるほど。
そういうことか。
「俺、チャットアプリの設定で、電話番号による自動登録はしないようにしてるよ?」
「なんで!? ずるい!」
いや、ずるくはないでしょ。
「むしろ、電話番号からチャットアプリに友達登録しようとしてた、風見さんのほうがずるいんじゃないかな?」
「自動で登録されるってことは、不可抗力だから、ずるくない……!」
残念ながら、俺みたいに対策はできるため、不可抗力ではないだろう。
ましてや、彼女はそれを狙っていたわけですし。
「とりあえず、そういうわけだから」
「うぅ……!」
風見さんは悔しそうに涙目になる。
まぁ、気持ちはわからなくないが……う~ん……。
「わかったよ、チャットアプリで友達登録しよう」
なんだか可哀想になってきたので、俺は自分からそう提案してしまった。
「いいの!?」
「もしかしたら、風邪が悪化して声を出せないってことも考えられるから、チャットできるようにしておくほうがいいのは、間違いないからね」
「ふふ、そっかそっか」
聞いているのか、聞いていないのか。
ニコニコの笑顔で風見さんはスマホを操作している。
そんなに連絡先を交換したかったのか。
「まぁ、元気になったようでよかったよ。それじゃあ、俺はそろそろ帰るから」
「うん、ありがと。誠司が来てくれて助かったよ」
「大したことはできてないけどな」
結局うどんも、風見さんが自分で作るみたいだし。
むしろ美海ちゃんに癒されたので、役得だった。
そうして、俺は家に帰ったのだけど――案の定、風見さんから鬼のようにメッセージが来るのだった。
まぁ、ベッドに寝てるだけだから、暇だったのだろう。
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【あとがき】
読んで頂き、ありがとうございます(*´▽`*)
話が面白い、キャラがかわいいと思って頂けましたら、
作品フォローや評価☆☆☆を★★★にして頂けると嬉しいです(≧◇≦)
これからも是非、楽しんで頂けますと幸いです♪
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