第2話「幼女がしがみついてきたんだが」
「――えっ、風見さんにプリントを?」
突然担任に呼び止められたと思ったら、なぜかプリントを渡されてしまった。
風見さんは今日、風邪で休んでいるらしいのだけど、なぜ俺なんだろ?
「他の女子に任せたほうがいいのでは?」
「こういう時、彼氏が持っていくほうがいいだろ?」
「……はい?」
今、なんと?
「須藤は風見の彼氏だろ? どうせお見舞いに行くだろうし、ついでに頼むよ」
「いやいや、付き合ってませんけど!?」
「はは、そう照れるなって。あんだけくっつきまくってるんだから、付き合ってるに決まってるじゃないか」
どうやら知らない間に、担任の中で俺と風見さんは付き合っていることになっていたらしい。
いや、確かに言わんとすることはわかるけど。
「本当に付き合っていませんからね?」
「須藤、照れくさいのはわかるが、こういう時は堂々としているほうがかっこいいし、彼女も安心するもんだぞ?」
うん、全然話を聞いてもらえない。
完全に、照れ隠しで誤魔化していると思われているようだ。
「堂々とするもなにも、本当に付き合っていないんですが……」
「はいはい、わかったわかった。とりあえず、プリントは頼んだぞ」
担任は投げやりになった感じで、プリントを押し付けてきた。
……めんどくさがられたな。
「まじかよ、これどうするんだ……?」
どうするも何も、こうなってしまえば持っていくしかないのだけど……。
ちょっとめんどくさいことになってしまった。
一応、風見さんは電車の定期券で行けるところに住んでいる。
というのも、俺の最寄り駅と学校の最寄り駅の間に、彼女の最寄り駅はあるのだ。
だから、帰りは一緒に帰ったりもするのだけど――。
「仕方ないか……届けないって選択肢はないんだし……」
こうして、俺は風見さんの家に行くことになった。
一応、行ったことはないけど、住所は知っている。
去年、彼女から年賀状が届いたためだ。
……一年生の時は別のクラスだったので、大して親しくなかったはずなのに、どうして年賀状が送られてきたのかは、今でも謎だった。
それはそうと、住所を知るには一度家に帰らないといけないので、結局遠回りにはなってしまう。
ついでに、私服に着替えておくか。
◆
――ピンッポーン。
風見さんの家に着いた俺は、インターフォンを鳴らして家の人が出てくるのを待つ。
熱があると聞いているので、親御さんにでもプリントは渡したらいいだろう。
そうして待っていると――。
「――おにいちゃん、だぁれ?」
なんだか、とても小さくてかわいい女の子が家から出てきた。
舌足らずの声はかわいいが、クリクリとした大きな瞳でジィーッと見つめられているので、少々居心地が悪い。
「えっと……須藤誠司っていうんだけど――」
「あっ、せいちゃんだぁ!」
せいちゃん?
もしかしなくても、俺のあだ名かな?
あれ、この子と会ったことあったっけ……?
「せいちゃん、なにしにきたのぉ? あそびにきたぁ?」
よくわからないけど、俺が誰だか認識すると、幼女が急に親しげになった。
まぁ、警戒されるよりはいいのだけど。
「プリントを届けに来たんだけど……お母さんか、お父さんって今いるかな?」
この子にプリントを渡して、風見さんにちゃんと届く保証がないので、一応親御さんがいないか聞いてみる。
「いない……!」
しかし、家にはいないようだ。
共働きの家なのかもしれない。
「じゃあ、このプリントを――」
「――
仕方がないので幼女にプリントを預けようとすると、顔を真っ赤にした風見さんが、気だるげな様子でパジャマ姿のまま顔を出した。
「だいぶしんどそうだね?」
「えっ、誠司!? なんでいるの!?」
セールスマンか何かと思って出てきたのだろう。
俺がいて、凄く驚いているようだ。
「ねぇね、せいちゃんがあそびにきたぁ!」
「いや、プリントを届けに来ただけなんだけど……」
美海ちゃんが勘違いしてしまっているので、俺は訂正をしながらプリントを風見さんに渡す。
「わざわざ届けに来てくれたんだ……? ありがと……」
風見さんは、いつもの元気が全然ない。
よほどしんどいんだろう。
「先生に頼まれただけだから、気にしなくていいよ。それよりも、冷却シートくらいは貼ったほうがいいんじゃない?」
顔を真っ赤にするくらい熱が上がっているようなので、俺は冷却シートを勧める。
しかし――。
「ちょうど切らしてたんだよね……。買いに行く余裕ないし……」
家のなかにはないようだ。
……仕方ないか。
「じゃあ、買ってくるよ」
「えっ!? い、いや、いいよ……! 悪いし……!」
「困った時はお互い様だよ。他に何か、ほしいものはある?」
あの風見さんがおとなしくなるくらいだし、放ってはおけない。
他にも、栄養ドリンクやスポーツドリンクを買っておいたほうがいいかな?
「ありがと……。他にはいいよ」
「そっか、それじゃあ買ってくるよ」
こういう時、頼みづらいだろうからなぁ。
風邪にいいものや、デザートを買っておこう。
そう思いながら、踵を返すと――。
「みうも、いく……!」
美海ちゃんが足にしがみついてきた。
……まじか。
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【あとがき】
読んで頂き、ありがとうございます(#^^#)
話が面白い、キャラがかわいいと思って頂けましたら、
作品フォローや評価☆☆☆を★★★にして頂けると嬉しいです(≧◇≦)
これからも是非、楽しんで頂けますと幸いです♪
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