【完結】俺をからかってくる大人気ギャルの妹に懐かれました
ネコクロ【書籍7シリーズ発売中!!】
第1話「なぜかギャルが抱き着いてくるんだが」
「――だ~れだ?」
教室に入ると、突然視界を塞がれてしまった。
瞼から体温を感じるので、手で押さえられているようだけど――。
「
「あはは、当てられちゃった」
視界が開かれたので振り返ると、『てへっ』という感じで舌を出すギャルが立っていた。
彼女の名前は
髪は金色に染めており、肌の色は白くて瞳も青いので、まるで海外の人かと思ってしまう。
鼻も高く、正直一般的なアイドルよりもかわいいだろう。
そんな彼女だが、なぜか俺――
しかも、からかってくるのでタチが悪い。
「こんなことするのは君しかいないし、そもそも声でわかるじゃないか」
「むぅ……そういう決めつけは、良くないんだぞぉ?」
「わかりやすく頬を膨らませてるね……」
拗ねてるアピールなのだろう。
表情豊かで、本当にわかりやすい。
「誠司はちょっと冷たいと思います」
「いや、君がからかってくるのが悪いんでしょ?」
なぜか知らないけど、二年生で同じクラスになってからやけにからかわれている。
それが嬉しいって男子はいるのかもしれないが、今まで女子とほとんど絡みがなく、免疫もない俺としては苦手だった。
正直、天敵とさえ思っている。
「言うほどからかってるかな?」
「…………」
一瞬、自分の胸に手を当てて考えてみろって言いたくなったけれど、セクハラになりそうなので言葉を飲みこんだ。
「今みたいに目を塞いできたり、突然抱き着いてきたり、耳に息をかけてくるのが、からかってないとでも?」
二年生になってから、今まで彼女にされたことを並べてぶつけてみた。
こんなこと、仲がいい男女でもそうそうしないだろう。
それこそしているのは、付き合っている人たちレベルだ。
「それはからかいではないと思う」
「どこがだよ……」
どう考えても、からかわれているようにしか思えないんだが?
「誠司はあれだね、相手の好意を無下にする人だ」
「何不機嫌になってるの……?」
風見さんがプイッとソッポを向いて不貞腐れたので、俺は戸惑いながら彼女に尋ねる。
「いいよ、いじわるで鈍感な誠司にはわからないから」
「はぁ……?」
いったい何が彼女を不機嫌にしたのか。
言葉にしてもらわないと、俺にはわからない。
超能力者じゃないんだからな。
「まぁ、怒らせたなら謝るよ。ごめん」
「そうやって謝られると、それはそれで困る……」
俺が謝ると、風見さんは居心地が悪そうにしだした。
どうしろというのだ。
「……えいっ!」
「――っ!? なんでこの流れで抱き着いてきた!?」
急に抱き着かれてしまい、俺は顔が熱くなるのを感じながら、慌てて引きはがそうとする。
「だって、謝ったらお互い謝ることになりそうだから、空気を変えようかと……!」
「だからって抱き着かないでよ、心臓に悪いから……!」
「むぅ、そんな人をばい菌みたいに言わないでよ……!」
「全然言ってないでしょ……!?」
驚くから心臓に悪いのであって、別に汚いなどは言っていない。
こういう嚙み合わないところが、彼女を相手にしていて困るのだ。
あと、女慣れしてない男子に、そんな柔らかくて大きなものを押し付けるのがどれだけの拷問か、よく考えてほしい。
「――あの二人、またやってるね?」
「ほんと、仲がいいよね~」
「美空ちゃんが須藤君を好きすぎるんでしょ?」
「見てて微笑ましいよね~」
風見さんとワチャワチャやっているせいか、女子たちが口元に手を当てて笑みを浮かべていた。
もしかしたら、俺のことを馬鹿にしているのかもしれない。
「――なんで、あいつばっか……!」
「ほんとふざけんなよ、須藤……!」
そして男子は男子で、凄い嫉妬の目を向けてきていた。
そりゃあ、人気者で美少女の風見さんに抱き着かれるなんて、周りからすれば羨ましいだろう。
俺だって、第三者なら嫉妬していたかもしれない。
だけど――当事者になると、恥ずかしいだけだ!
「風見さん、いい加減離れてよ……! クラスの笑いものになるから……!」
「そんな言い方されたら、意地でも離れない……!」
「なんでムキになってるの!?」
ギュッと抱き着いてくる風見さん。
当たってる!
当たってるから!
形がムニュッて変形してるから!
ということを叫びたいけれど、周りから白い目を向けられるので叫べない。
本当に心臓に悪いんだが。
「私に抱き着かれて嫌がるのって、誠司くらいだよ……!」
「恥ずかしいんだって! というか、他の男子にしてるところ見たことないけど!?」
「だって、したことないもん!」
「したことないの!?」
じゃあ、どうして俺にはしてるんだよ!
そんなに俺をからかって面白いか!?
この後は、しがみついてくる風見さんを頑張って引き剥がそうとしたが、結局先生が来るまで離れてくれないのだった。
――いや、ほんと……なんで朝から、こんなに疲れないといけないんだ……。
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