第18話 三度目の配信

「よし、これで準備完了だな」


「今回は何人来ているでごわすか?」


「今回も四人だな。なかなか増えないなぁ」


「そこは地道にがんばるしかないでごわすよ」


「そうだな。では、始めるか」



 アバターが画面中央に表示された。


「当チャンネルにお越しいただきありがとうございます。水入利みずいりシヴィです。よろしくお願いします」


 挨拶をした直後に爆発させた。


 コメント

 g_g:いつもの

 g_to:いつもの爆発挨拶

 g_eye:いつも通り

 g_e_h:爆発挨拶w


 反応が悪くなったな。

 次からは、他の挨拶を考えた方が良さそうだ。



 アバターを元に戻した。


「今回もシヴィたちの作ったゲームを配信していこうと思います。これもどこにも売られていないゲームですよ。お楽しみに」


 コメント

 g_eye:たくさん作ってるんだな

 g_e_h:スタッフ優秀すぎだろ


「え~、今回のゲームは釣りのゲームですね」


 コメント

 g_g:釣りか

 g_to:本当に釣りなのだろうか?


「そこはどうなんでしょうね? では、始めます」


 アバターを画面の右下に寄せ、ゲームを起動させた。



「タイトルは『つりつりつりつりつりつりつりつりツリー釣り』ですか」


 コメント

 g_g:釣りありすぎw

 g_to:タイトルwww

 g_eye:スタッフのセンスが光りまくってるwww

 g_e_h:ネーミングセンスwww



 画面に『キャラクターを作成してください』と表示された。


「これもキャラメイクができるみたいですね」


 コメント

 g_g:また流用品w

 g_to:エコwww

 g_eye:スタッフ優秀www

 g_e_h:素晴らしいwww



 飾りのないクリスマスツリーみたいな木の着ぐるみを着ている、筋骨隆々のサングラスをかけたおっさんを作った。


「今回のキャラクターは、これにしましょう。名前は『釣利弐つりに木田人きたひと』にします」


 コメント

 g_e_h:釣りに来た人www

 g_g:こ、これは『釣り』と『ツリー』をかけた高度なダジャレ!?

 g_to:親父ギャグwww

 g_eye:草



 画面に、いつものチューリップ柄の鶏とアルマジロのような何かが映し出された。


 いつも通り、アルマジロの上に鶏が乗っている。


 その後ろには、日本の住宅街のようなものが映し出されている。


 コメント

 g_g:また流用www

 g_to:草

 g_eye:スタッフwww

 g_e_h:できるスタッフwww



「『なんとか』の世界へようこそ」


 鶏のようなキャラクターが、そう言った。

 ウィンドウにも、そう表示された。


 コメント

 g_eye:いつも通り、タイトルを覚えてないw

 g_e_h:『つ』と『り』しかないのにw

 g_g:つなんとかくらい言えよw

 g_to:いや、タイトルくらいしっかり言えよw



「これが操作法だ! しっかり覚えるように!!」


 操作法が表示された。


 コメント

 g_g:普通の釣りっぽいことが書いてあるな

 g_to:まさか普通の釣りなのか?

 g_eye:バカな!? ここのスタッフだぞ!?

 g_e_h:普通の釣りなわけないだろ!?


 もうそういう印象になっているのか。



「では、始めましょうか」


 作成したキャラクターと大きな川と川原が表示された。


「この川で釣りをするようですね。では、やってみましょう」


 コメント

 g_g:普通だな

 g_to:普通に釣りだな

 g_eye:そ、そんなバカな!?

 g_e_h:本当に普通の釣りなのか!?



「あっ、何かがかかったようですね。糸を巻いてみましょう」


 コメント

 g_g:すごく普通です

 g_to:普通の釣りだ

 g_eye:これは普通の釣りゲーなのか?

 g_e_h:これは天変地異の前触れなのか!?



「釣れたようですね! えっ!? これは!?」


 盆栽サイズの松の木みたいなものが釣れた。

 ウィンドウにも『松の木が釣れた』と表示された。


 コメント

 g_e_h:木が釣れた!?

 g_g:こ、これは『釣り』で『ツリー』が釣れたという高度なダジャレ!?

 g_to:親父ギャグwww

 g_eye:なんで木が釣れたんだ?


「これはゴミが釣れたということですかね?」


 コメント

 g_g:まあ、そうだろうな

 g_to:だろうな

 g_eye:普通の釣りならそうだな

 g_e_h:もう一回やってみろ


「そうですね。もう一回やってみましょう」



 また盆栽サイズの木が釣れた。

 ウィンドウには『杉の木が釣れた』と表示された。


「今度は杉ですか」


 コメント

 g_g:また『釣り』で『ツリー』が釣れただと!?

 g_to:くだらない親父ギャグやめろwww

 g_eye:どういうことなんだ?

 g_e_h:これは偶然なのか?


「もう一回やってみますね」



 またまた盆栽サイズの木が釣れた。

 ウィンドウには『ひのきの木が釣れた』と表示された。


「ナニコレ!? なんで木ばかり釣れるの!?」


 コメント

 g_g:こ、これはまさか木を釣るゲームなのか!?

 g_to:そんなバカな!?

 g_eye:だが、三回連続は偶然ではないだろ!?

 g_e_h:本当に木を釣るゲームだというのか!?


「これはちょっとスタッフに聞いてみましょう! スタッフ~、どういうこと?」


 『マッスルコンピューター・タブレット』に、ハイテーからのメッセージが届いた。


「あっ、来ましたよ。ええと『タイトル通りだよ』だそうです」


 コメント

 g_eye:タイトル? あっ!?

 g_e_h:そういうことなのか!?

 g_g:まさかあれはそういう意味なのか!?

 g_to:確かに書いてあったなwww


「確かに、タイトルに『ツリー釣り』って、書いてありますね!!」


 コメント

 g_g:本当に高度なダジャレだったwww

 g_to:スタッフすごいwww

 g_eye:センスすごいwww

 g_e_h:スタッフ優秀www



 その後も、釣りを続けてみた。


 本当に木しか釣れなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る