第9話 ようやく配信

「では、私ちゃんは帰るざます。がんばるざますよ、クバリ」


 神様の声が聞こえなくなった。


「クバリのアニキ、お疲れ様でごわす。声は出るようになったでごわすか?」


「ああ、疲れたけど、出るようになった気がするよ」


「それは良かったでごわす」


 そこは神様に感謝しておこうか。



「クバリのアニキ、機材の使い方などは、この『マッスルコンピューター・タブレット』にまとめておいたでごわす」


「なんだそれは!?」


「タブレット型のマッスルコンピューターでごわす」


「そんなのもあるのかよ!?」


「キレのあるツッコミでごわすね、クバリのアニキ!」


「それはどうも!」


 では、さっそく見せてもらおうか。



 俺たちは配信の準備を進めていった。


 そして、二三時五分前に、ようやくすべての準備が整った。


「よし、なんとか二三時から配信できそうだな」


「間に合って良かったでごわす」


「ハイテー、いろいろありがとう」


「どういたしましてでごわす。さあ、クバリのアニキ、本番がんばるでごわすよ!!」


「ああ、よし、配信するか!! と言いたいところだが、誰か見に来てくれるのかな?」


「そういえば、いっさい宣伝をしていないでごわすね」


「ということは、誰も見に来てくれない可能性があるってことだよな?」


「神様くらいは、見に来てくれるのではでごわす」


「ああ、確かにそうかもな」


「気にせずやるでごわす」


「そうだな」



「ん? すでに四人視聴者がいるみたいだな」


「意外でごわすね」


「どうやって、ここを見つけたのだろうか?」


「神様が何かしたのでごわすかね?」


「どうなんだろうな?」



 そろそろ時間だな。


 あ~、年甲斐もなく緊張するなぁ……


 だが、やるしかないか!


 アレ味の聖水は飲みたくないからな!


 よし、始めるとするか!


 画面の真ん中に、特製のアバターが表示された。


 超美女の上に、茶色い三段の鏡餅が置かれている。

 さらにその上に、猫耳とウサギ耳のある透明ガラスの尿瓶が置かれている。


「どうも、初めまして、当チャンネルにお越しいただきありがとうございます。新人の『水入利みずいりシヴィ』と申します。シヴィと呼んでください。よろしくお願いします」


 コメント

 g_g:変なの出た!?

 g_to:悪くはないが、ちょっといろいろありすぎ

 g_eye:ごちゃごちゃしてる

 g_e_h:盛りすぎだろ

 g_g:意気込みだけは評価してやる


 なんとも微妙な反応だなぁ。



 とりあえず、一発芸をかましておこうか。


 アバターを爆発させた。


 コメント

 g_g:爆発しただと!?

 g_to:なんで爆発!?

 g_eye:いきなり爆発オチ!?

 g_e_h:配信終了!?



 アバターを元に戻した。


「このチャンネルでは、シヴィたちの作ったゲームを配信していく予定です。いまのところ、どこにも売っていないゲームなのでお楽しみに」


 コメント

 g_g:何事もなかったかのように進めているだと!?

 g_to:なんで爆発させたんだ!?

 g_eye:何か意味あったのか!?


 なかなかの反響。

 意外と楽しいものだな。



「それでは始めます」


 アバターを画面の右下に寄せた。


 コメント

 g_e_h:何をするんだ?


「今回のゲームは、スタッフからは何の情報ももらっていません。タイトルすらも不明です」


 コメント

 g_g:なんでそんな情報すら渡さないんだ!?

 g_to:何かあるのか!?


「何があるのでしょうかね? それでは起動してみましょうか」


 ゲームを起動させた。


 黒い画面の上部に『洗練されすぎたゲームであった何か』という文字が表示された。


 コメント

 g_to:これタイトルか?

 g_e_h:妙なタイトルだな

 g_eye:嫌な予感しかしないな



 先程の文字の下に、


 『The End』


 と表示された。


 コメント

 g_to:The End!?

 g_g:もう終わっただと!?

 g_e_h:これが洗練なのか!?

 g_eye:洗練って、なんなんだ!?



 さらにその下に、


 『ゲームなんかやってないで勉強しろ』


 と表示された。


 コメント

 g_g:余計なお世話!?

 g_to:うるせぇ!

 g_eye:勉強なんかしたくねぇんだよ!?

 g_e_h:ゲームさせろよ!?



「なんだよ、これは!?」


 コメント

 g_g:まったくだよ!

 g_to:これはゲームなのか!?

 g_eye:いや、ゲームであった何かだろ!?

 g_e_h:ゲームであった何かって、なんだ!?


「本当に終わったのか!?」


 コントローラーのボタンを押してみたが、なんの反応もない。


「これは本当に終わっているようです!」


 コメント

 g_g:な、なんだと!?

 g_to:本当にこれで終わりだと!?

 g_eye:これが洗練!?

 g_e_h:やりすぎだろ!?


「ちょっとスタッフ、これどうなってんの!?」


 『マッスルコンピューター・タブレット』に、ハイテーからのメッセージが届いた。


「あっ、いま、スタッフからメッセージが届きました。え~と『洗練されたゲームを作ろうとしたら、こうなった』そうです」


 コメント

 g_g:なんでそうなる!?

 g_to:なんでだ!?

 g_eye:なぜなんだ!?

 g_e_h:訳が分からないぞ!?


「スタッフ、なんでそうなったって、ツッコミが来てるよ!?」


 またハイテーからメッセージが届いた。


「また届きました。え~『なんかなった』だそうです」


 コメント

 g_g:いや、普通こうはならないだろ!?

 g_to:これは逆に優秀なスタッフなんじゃないか!?

 g_eye:スタッフすごい!

 g_e_h:いや、すごいのか!?


 ゲームの内容はどうあれ、視聴者たちは盛り上がっているようだな。


 良かった。

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