第6話 敵がいるから

「クバリのアニキ、ちょっと良いでごわすか?」


「ああ、良いよ。どうしたんだ、ハイテー?」


「クバリのアニキは、これから配信するでごわすよね?」


「ああ、その予定だよ」


「素顔を出すでごわすか?」


「えっ? 素顔か…… どうしようかな?」


「敵がいるのなら、出さない方が良いと思うでごわすよ。アバターにするでごわす」


「確かにそうだな。神様は、どう思いますか?」


「出さない方が安全ざます。声もキャラも変えた方が良いざますよ」


「キャラもですか…… そんなことできるかなぁ……」


「地球を救うために、やるしかないざます!!」


「分かりましたよ……」



「では、どんな姿にするでごわすか?」


「うーん、そうだなぁ。やはりいまの俺とは、まったく違うものにしないと意味ないよな」


「なら、女性にするでごわすか?」


「女性か…… 俺が女性に成り切れるとは思えないなぁ……」


「はぁ、クバリは未熟ざますね」


「はいはい、悪かったですね! 精進しますよ!!」



「なら、人間以外にするでごわすか?」


「動物とかか?」


「いっそのこと、完全に架空の生物にした方が良いかもしれないでごわすよ」


「架空のか…… うーん……」


「まあ、とにかく、考えておくでごわす。では、自分さんは作業に戻るでごわす。何か思い付いたら、言うでごわす」


「ああ、分かったよ」



「考えることが増えてしまった…… どうしよう?」


「クバリ、私ちゃんの助言を思い出すざます!」


「えっ? ええと…… なんでしたっけ?」


「面白ければ、それで良いと言ったざましょ!!」


「えっ!? ……言いましたっけ?」


「言ったような気がしないざます!!」


「言ってないんじゃないですか!?」


「似たようなことを言った覚えはあるざます!!」


「そうでしたっけ?」


「細かいことは気にするなざます!! とにかく、面白いものを用意するざます!!」


「はいはい、分かりましたよ!」



 面白いものか……


 面白いもの…… 面白いもの…… 面白いもの……


 面白いものなぁ……


 うーん……


 そもそも面白いって、なんだっけ?


 ちょっと調べてみようか。



 興味をそそられる。

 つい笑いたくなる。

 珍しい。


 こういったものか。


 ん?

 面白い人は、いつも笑顔で表情豊かで、リアクションが大きいのか……


 なるほど。


 なら、表情豊かな人にするか?


 いや、それだと珍しくはないのではないか?


 もっとインパクトもいるのかもしれないな。


 うーん、どんなのが良いかなぁ……



 あっ!?

 なんかひらめいてしまったぞ!!


 よし、ハイテーに作ってもらおう!!



 思い付いたものをハイテーに伝えた。


 ハイテーはアバターの作成作業に入った。


 では、次は配信のネタを考えようか。


「おっと、もうこんな時間ざますね! 私ちゃんは用事があるから、これで失礼するでごわすざます!!」


「なんでハイテーの真似をしているんですか!? しかも、中途半端ですよ!? なんですか、ごわすざますって!?」


「ふむ、なかなか良いツッコミざますね!」


「ああ、はいはい、いつものボケですか」


「その通りざます! では、さらばざます!!」


 パソコンの画面が元に戻った。


 と思ったら、また白い球体が表示された。


「どうしたんですか、神様?」


「クバリに言うことがあったざます!」


「えっ? なんですか?」


「歯はキチンと磨くざますよ!」


「はぁっ!? 何言ってんですか!? お母さんですか!?」


「いまのもなかなか良かったざますよ! では、さらばざます!!」


 ええっ!?

 いまのもボケかよ!?



 三日後。


 ああ、全然まったく配信のネタが思い付かないな!


「クバリのアニキ、アバターができたでごわす! ちょっと見て欲しいでごわす!!」


「おおっ、できたか!」


 マッスルコンピューターのモニターを見てみた。


 そこには、

 上部に茶色い猫耳とピンクのウサギ耳、側面に濃い感じの眉毛、目、鼻、口のある透明ガラスの尿瓶、

 茶色い三段の鏡餅、

 セミロング金髪碧眼へきがんで、おっとりとした感じの超美女の頭部が表示されていた。


 美少女の頭頂部には、鏡餅が載せられている。

 鏡餅の最上段には、尿瓶が載せられている。


「クバリのアニキ、どうでごわすか?」


「ああ、注文通りだな。表情の方はどうだ?」


「いま表示されている無表情、喜怒哀楽といった人間にできる表情から、顔のパーツがバラバラになる、吹っ飛ぶ、目が飛び出す、美形になる、下の鏡餅にくっ付くといった人間にはできない表情まで、いろいろできるようになっているでごわす」


「おおっ、そいつはすごいな!」


「他には、耳を飛ばしたり、すべてを爆発させたり、女性の表情を変えたりすることもできるでごわす」


「素晴らしい!」


 予想以上の出来栄えだな!



「それから、声も用意したでごわす」


 マッスルコンピューターから声が聞こえてきた。


 ガラスのように透き通った声だな。


 おっさんのダミ声とは全然違う、素晴らしい声だ。



「ハイテー、これを見てどう思う?」


「インパクトだけはあると思うでごわすよ。ただ、ちょっと情報量が多いというか、ゴチャゴチャしている気もするでごわす」


「そうか…… まあ、とりあえず、これでやってみるか」


「そうでごわすね。評判が悪かったら、変えれば良いでごわす」


「そうだな」



「あとは、こいつの名前を決める必要があるでごわすよ」


「名前か……」


「性格などの設定も決める必要があるでごわす」


「確かにそうだな……」


 まだまだ決めることがたくさんあるなぁ……


 うーん、何にしようかな?



「それじゃあ、自分さんはゲーム作りに戻るでごわす」


「そっちの方はどうなんだ?」


「もう少し時間がかかるでごわす」


「そうか。では、引き続きよろしくな」


「了解でごわす」


 さて、俺も早く決めないとな。

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