第3話 魔法の効果は?

「ハイテーは何ができるんだ?」


「見ての通りでごわす!」


 ハイテーがそう言って、ボディービルダーみたいなポーズを取った。


 あれはサイドチェストという名前だったかな?


 筋肉すごいな。


「戦闘が得意なのか。そいつは頼もしいな」


「違うでごわす! 戦闘は苦手でごわす!」


「なら、それはなんなんだよ!?」


「自分さんは配信に使う機材に詳しいでごわす! 動画編集、プログラミング、絵を描くこともできるでごわす!!」


「なんでそのポーズで、それなんだよ!?」


「この筋肉とポーズは、そういうものを表しているでごわす!!」


 なんじゃそりゃぁっ!?


「それは筋肉を美しく見せるポーズじゃないのかよ!?」


「違うでごわす! この腕の筋肉は機材に詳しいこと、足の筋肉は動画編集ができること、肩の筋肉はプログラミングができること、胸の筋肉は絵が描けることを表しているでごわす!!」


「まったく分からん!?」


 何を言っているんだ、こいつは!?


「クバリ、考えるな、感じろざます!」


「よく分かりませんよ!!」


 まあ、もうどうでもいいか!!


 とにかくハイテーは、それらが得意なんだ!!



「他に何かできることはあるのか?」


「家事全般が得意でごわす! やって欲しいことがあるなら、自分さんに言うでごわす!」


「そうなのか。そいつはありがたいな」


「買い物に行くなら、荷物持ちをやるでごわすよ! ひとりでおつかいに行くこともできるでごわす!!」


「えっ? もしかして、外に出る気なのか?」


「当然でごわす!」


「ハイテー、服は?」


「このマスクとふんどしのみでごわす!」


「ダメだろ!? そんな格好では警察に捕まるぞ!?」


「問題ないでごわす! 自分さんにはアレがあるでごわす!!」


「アレ? なんだそれは?」


「これでごわす!」


 ハイテーが両腕を上げ、肘を曲げ、力こぶを作るようなポーズを取った。


 すると突然、ハイテーの全身にモザイクがかかった。


「な、なんだよ、そのモザイクは!?」


「これなら問題なく外出できるでごわす!」


「いやいやいや、何を言っているんだよ!? 問題しかないだろ!? どう見ても、不審者じゃないか!? 警察が飛んで来るぞ!?」


「そんなことはないでごわす! クバリのアニキ、自分さんをカメラで撮影してみるでごわす!」


「えっ? なんでだ?」


「やれば分かるでごわす! さあ、やってみるでごわす!!」


「あ、ああ、分かったよ……」


 俺はハイテーを撮影した。



「さあ、それを見てみるでごわす!」


 俺は撮影したものを見てみた。


「な、なんだこれは!?」


 そこには、スーツを着た真面目そうな日本人男性っぽい人が映っていた。


 モザイクの塊は、どこにも映っていない。


「これはどういうことなんだ!?」


「このモザイクは、クバリのアニキ以外には、そのように見えるでごわす! 見ての通り、カメラに映っても問題ないでごわす!!」


「な、なんじゃそりゃぁっ!? これも魔法なのか!?」


「その通りでごわす!!」


「そ、そうなのか……」


 魔法って、すごいねっ!!



「ちなみに、私ちゃんにもモザイクに見えるざますよ。看破できる者もいるから油断は禁物ざますよ」


「そうだったでごわすか! 忠告ありがとうでごわす!」


 看破できる者か……


 どんなヤツなんだろうな?



「ハイテー、まだ何かあるか?」


「もうないでごわすよ」


「そうか。ということは、この魔法は配信を手伝ってくれる人を出すものなのか」


「その通りざますよ! ありがたいざましょ?」


「はい、助かります! ありがとうございます!」



「さあ、クバリ、さっそく配信するざます!」


「えっ!?」


「えっ、じゃないざます!! さっさと配信するざます!!」


「いや、その…… 何を配信するのか決めてないんですけど……」


「な、なんだってぇざます!! なんでそこを決めてないのに、アカウントを作成したざますか!?」


「えっ、いや、それは、その、ノリと勢いですかねぇ?」


「何をやっているざますか!? いい加減すぎるざますよ!!」


「ええ~、神様もやっていたじゃないですか!」


「私ちゃんはやっても良いざます! クバリはダメざます!!」


「なんですか、それ!? ひどいですよ!? 別に良いじゃないですか!?」


「ダメに決まっているざます!!」


「そんなぁ……」


 ひどい差別だな!



「まったくあきれるざますね! これでは宇宙人にやられてしまうざますよ!」


「そう言われましてもねぇ……」


「さっさとネタを考えるざます!」


「分かりましたよ。とはいえ、何を配信すれば良いのでしょうね?」


「それを考えるのが配信者ざます! 視聴者である私ちゃんに聞くなざます!!」


「はいはい、分かりましたよ」


 何を配信しようかなぁ?



「そういえば、他の配信者は何を配信しているのでしょうか?」


「クバリ、他人の真似をするつもりざますか!?」


「人聞きの悪いこと言わないでください! あくまでも参考にするだけですよ!」


「はぁ、いきなりこれでは先が思いやられるざます」


「そんなこと言わないでくださいよ!」


 元々こんな大事になるなんて思ってなかったのだから、仕方ないだろ!



「それで『G-ScMoniジースクモニ』には、どんな動画があるのですか?」


「あそこには、まだ何もないざますよ。出来立てほやほややほやほざますから」


「そうだったんですか!?」


「クバリ、ツッコミはどうしたざますか!?」


「ええっ!? そんなことよりも話を進めましょうよ!?」


「ダメざます! ボケたら、ツッコむ、これは常識ざますよ!!」


「はいはい、分かりましたよ! ええと、どこでボケたんですか?」


「はぁ、ボケを聞き逃すなんて、配信者失格ざますね!!」


「配信者って、そういうものでしたっけ?」


「エンターテイナーなのだから、そういうものざます! 仕方ない、もう一回言ってやるざます! 『G-ScMoniジースクモニは、出来立てほやほややほやほざます』」


「やほやほは余計でしょ!?」


「単純なツッコミざます! イマイチざますね!! もっと語彙力を高めるざます!!」


「分かりましたよ! 精進します!!」



「では、話を続けましょう。いま配信しても人が来ないのではありませんか?」


「その可能性は非常に高いざます!!」


「意味なさすぎでしょ!? なんとかしてくださいよ!?」


「客を呼ぶためには商品が必要ざます!! クバリ、さっさと何かやるざます!!」


「分かりましたよ!! ええと、何をしましょうか?」


「それを考えるのが配信者だと言ったざましょ!?」


「そうでしたね!!」


 さて、何を配信しようか?

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