第19話 like(ライク) は 嫌いなオカン
長いテーブル。
皆順番に座って行く。
別にどこへ座っても良いのだが考えるのが面倒くさいので、バスの一番後ろの席に座っていたことだし、テーブルも二人で一番下座に座ることにした。
向かいには、優しいアンソニー・ホプキンス似の、オカンと同年代の男性とその奥様。
その隣には、アイムストーカマダム。
オカンの右隣は、レストランに入る前にコドオに写真撮ってあげる。
と、親切にしてくれた夫妻だった。
このテーブルについている皆、今日初めて会う人達の集まりなのに、何処かのホームパーティーにおよばれしている、仲の良いご近所さん達かのように、
楽しい雰囲気の中、さあ食べるぞとフォークとナイフを握ったが、なんとオカンのお皿のベビーリーフのサラダの葉っぱの上で蚊が死んでいた。
ああ!!
と思ったが、オーストラリアへ出発する前にコドオから
「これから行くとこは海外やから、日本の衛生観念を持って行ったらアカンねんで。
虫おる。
とか、お皿汚いとか騒ぐんやったら、連れていかへんで」
と、きつく念を押されていたので、そおっと蚊の棺化した葉っぱを指先でつまみ、お皿の外へアウェイした。
よほど不審な動きだったのか、コドオがすかさず
「どうしたん?」
と聞いてくる。
「蚊」
「えっ。あ、ほんまや」
という二人の会話を察知して
向かいに座っていた優しいアンソニーさんが
「どうしたん?」
と聞いてくれる
「
と答えると
「フレッシュ」
とにこやかに答えてくれた。
ホンマにユーモアセンスばっちり。
皆で笑えた。
やっぱりええ人や。
その後、どうもテーブルの左側の草むらにてんとう虫がいたらしく、その説明を優しいアンソニーさんが、コドオにしている。
コドオがそれを説明してくれたので
「レディバグやね」
というと、みんなそうそうと言ってくれた。
大好きなブラッド・ピットさんの『ブレット・トレイン』を観といてよかったと思ったオカンである。
ワインを全種類配り終わったクリスさんが、次の飲み物は、ベイリーズです。
と仰ると、テーブルのマダムたち全員が色めき立った。
おお、何事や。
と驚いていると。
テーブル中央ぐらいのオカンと会話するには、ちょっと遠いはずの上品マダムが
「とおっても美味しいのよ。飲んでみて」
と教えてくれる。
それをきっかけに回り全てのマダム達が、凄く美味しいから、これは飲みなさい。
と勧めてくれる。
クリスさんに入れてもらって、ベイリーズを飲む。
まったりした美味しいコーヒー牛乳味のお酒に感じた。
「うん。美味しい」
マダム達が満足気に
「ね。美味しいでしょう?」
と尋ねてくれる。
「イエス。ベリーデリシャス。」
大きくうなずくオカンである。
すると、今度は、
「たっぷり氷を入れたところにかけると最高のデザートになるのよ」
と口々に教えてくれた。
コドオに
「日本に売ってるかな?」
と聞くと、
「あるで、前にわたしが美味しいよ。
っていったら、オカン甘いお
と、むすっとされた。
「悪かったわ」
ごめんとは、言わないオカンである。
ご機嫌さんでベイリーズを飲んでいると甘い香りにつられたのか、やたら虫がオカンにまとわりつく。
払っても払ってもしつこく寄ってくる
向かいの優しいアンソニー奥様が心配してくれるので
私は、虫に好かれているようです。
と英語で言ったつもりだった。
しかし
明らかにアンソニー奥方の表情がおかしい。
「ん?」
ああ!!やらかした!!
虫が私を好きではなく
「
私なんて虫ごときです。と言ってしまったようだ。
そうだ、コドオにこの誤解を解いてもらおう。
と思ったらコドオは、優しいアンソニーさんとなんかの話しで盛り上がっていて、オカンの失態に気付いてくれてない。
肝心の時に役にたたない。
とオカンの心の中で八つ当たりされているコドオである。
オカンの
困惑していると
ご夫婦で優しいアンソニー奥方が
「ふふふ。レディバグね」
と、なんとかこの場面を治めようとしてくれた。
「ははは」
と乾いた笑いでアンソニー奥方の優しさに乗っかったオカンであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます