第17話 お土産物やさんのバックヤードにびびるコドオ
本当は、熱帯雨林の中でモーニングティーをしながらジャムの試食のはずだったらしいが、多分サイクロンの影響で予定が変更になって、カントリー調のお店が2.3軒ある場所に到着。
そのうちの一軒のお土産ものやさんへ入る。
バスは、お店の前で路上駐車だが、あたりに何にもなくて誰にも迷惑は掛からない。
流石世界第6位の大陸である。
入る前は、こんなこじんまりした店に?と思った店構えだが、中は結構広かった。
余裕でツアーの16人が入る。
全員そろったところで、最初にお店のスタッフさんのお話しを聞かないといけないらしい。
しっかり者の雰囲気のお嬢さんが、このお店の中のマカデミアナッツや工芸品の良さをいろいろ説明してくれる。
ただ悲しいことに、半分くらいしか聞き取れないオカンには、ただのBGMとなっていた。
BGMを聞き飽きたオカンは、そっと
「なかなか良いツアーやから、クリスさんの顔を立てて一つは、買わなあかんな」と言うと、コドオが
「せやな」
と頷く。
「なににする?」
「やっぱ、マカダミアナッツかな?」
と二人でひそひそ話をした。
「サワークリーム&チャイブス味とわさび味のマカダミアナッツがあるで」
「わさびは、ないかな」
値踏みしているうちに、しっかり者のお姉さんの説明が終わる。
この後、バックヤードに私達ツアーの人だけが入れるとのこと。
コドオは、そんな怖いとこ嫌だ。とバックれた。
好奇心旺盛なオカンは、とりあえずなにがあるのか見に行くと、2メートル以上はあるだろうなってカウンターにクラッカー、何種類かのチーズ、ナッツ類があった。
おお!チーズの横には、ハニカム模様の蜂蜜の塊もある。
お姉さんの説明では、6人ずつここに入って、始まりのところにあるマックナゲットの入れ物を武骨でしっかりさせたような蓋つきの紙の容器に、自分の好きなものを入れて良いそうだ。
とりあえず6人とのことなので、外に出てお土産ものを見る。
陳列台の下の方に綺麗な見たことのない鳥の絵の手帳を見つけた。
メモ帖なら、良いお土産になるかな?と手に取る。
しかしそれは、簡単バードウォッチングメモのようで、いろんな種類の鳥の絵の横に小さな四角があって、見つけたらチェックするようだった。
まだ、オーストラリア1軒目のお土産物屋さんだったので、購入しなかったが、その後このバードウォッチング帖を見つけられなかったので、ここで買わなかったことをちょっとだけ後悔した。
店内では、主に女性方が、旅の思い出に飾るのに良さげな工芸品や蜜ろうでつくられたフクロウなどを手にとっておられた。
オカンは、ケチなのでろうそくは、火をつけたら無くなるからやだな。
と思ってしまった。
そうこうしているうちに、誰かが、トントンとオカンのふっくらとしたなで肩を叩く。
振り返ると、同じツアーの男前のご主人で、ご自身が手に持っておられる紙の容器を指さし、
「まだでしょ?」
みたいなことを英語でおっしゃった。
「イエス」
と答えるオカンに、行っておいで。と教えてくれる。
非常にジェントリーだ。
「サンキュ」
を言ってコドオと行こうとすると、今度はクリスさんにつかまった。
オカンは、よほど危なっかしいらしい。
身振り手振りで紙の容器に好きなものを入れるんやで。
とゆっくりと何度も同じことを言ってくれる。
ただただ、頷くオカン。
でも、新しい情報も仕入れた。紙の容器に入れたものは、バスの中で食べるらしい。
ここへやっとコドオ登場。
バックヤードに行こう。
というと嫌がるので、皆さんから教えてもらったことを伝える。
「なんか、ややこしいもん売りつけられんのかと思ったわ」
おま、ホンマに英語理解してるか?
楽しいバカンスをこのあと続けるために、ぐっと言葉を飲み込んだオカンは、えらい。
一通り欲しいものを容器に入れて木のフォークと紙ナプキンも貰う。
ここの紙ナプキンもなんか匂う。
こういう時だけは、日本が恋しい。
バスの中でのおやつをしっかりゲットして、先ほどのコソコソ話しのマカデミアナッツの大袋も購入。
お代も重さも結構ある。
会計をすますとしっかり者のお嬢さんが
「美味しいから、ホテルで今夜全部食べちゃうわよ」
みたいなことを仰る。いやいや日本人は、いっぺんにこんなに食べられないよ。
と二人とも思った。
ツアーの皆は、片手に美味しいものの入った容器を持って、それぞれバスに乗り込む。
オカンは、クラッカー、2種類のマカダミアナッツ、ブリーチーズにブルーチーズに蜂蜜の塊。
ウキウキしながら席に着く。
バスが発車する。
中間地点にいるアンソニーホプキンスさんを優しいお顔にしたような男性がバス中に響く声で
「バスの中飲食禁止!」
と仰った。
車内全員がどっと笑った。
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