第14話 『ベルトラ』アサートン高原日帰りグルメツアー
相方さんに教えてもらった『ベルトラ』の『アサートン高原日帰りグルメツアー』は二人以上参加限定で、帰国後体験記を書けば一旦入金したツアー代金が、一人分キャッシュバックされるというキャンペーン中の二重に美味しいものだった。
旅程は、
・バリン湖国立公園とヘリテージ・ハウスにて朝食
・熱帯雨林の中でモーニングティー
・オーストラリアン・カモノハシパークにてランチ
・マンガリ・クリーク・デイリーにてアフタヌーンティー
・トロピカルフルーツ&ナッツ試食会
・マウント・アンクル蒸留所にてリキュール&スピリッツの試飲
・エメラルドクリークアイスクリーム店にてカップに数種類のアイスクリーム試食
に各ホテルへの送迎つき。というものだった。
私たちのホテルへ寄ってくれたあともバスは、一人、あるいは、カップルをピックアップしていく。
ガイド兼ドライバーのクリスさんが運転しながら
「次のホテルで乗り込む方は、なんとこのツアーに6回目の参加です。
皆さんで彼女の雄姿を称えましょう」
みたいなことを嬉しそうに言った。
大体あっていたが、聞き違えたオカン
「コドさん聞いたか?16回やてすごいな」
「オカン聞き間違ってる。6回や」
「ああそうか」
何故か安心するオカン
「それでも、凄いな。せやし、そんだけ ええツアーってことやな」
「せやな」
頷きあう二人であった。
バスがスロープを上り、彼女のホテルのエントランス前に止まる。
クリスさんがバスを降り、にこやかに彼女を迎えドアを開ける。
ステップに足をかけたのは、鮮やかなハイビスカスのプリントされたTシャツにパステルカラーのぴったりとしたパンツを着て、ピンクのひざ掛けを手にしたマダム。
「ハーイ」
といいながら満面の笑みで乗り込んでくる
ドアを閉めると素早く運転席に戻ってきたクリスさんが、さっきと同じようにマダムの紹介をする。バス内の全員が、拍手喝采で彼女を迎える。
マダムは、両手を上げ
「アイム ストーカー」
と叫び、その場にいた全員が、手を叩きながら笑う。最高の旅の始まりになった。
バスは、しばらく市街地らしきところを通り、なだらかな丘陵の草原から山道へと続く。
クリスさんが酔っ払いの男の人の笑い話を乗客が退屈しないように語ったり、ケアンズの農業事業で他の人がしないことに目をつけて成功した人の話しをしてくれていたと思う。残念ながら、ネイティブ同士の会話のスピードを聞き取れる程の英語力はないし、後でコドオをに答え合わせを頼んだが、
「え、そんな話ししてはったっけ?
ああ、牛おるわ。牛密度低いなとか、無事オーストラリアついてんやなぁ。とか、もうすぐ朝ごはんやなぁ。
って思ってて話し聞いてなかったわ」
「コドさん。クリスさんの、皆さんを笑わせる話を何かに生かそうとか思わんの?」
「オカン。わたしは、国内担当やし。今は、バカンス中や」
これが噂のゆとり世代か。とバブル世代のオカンは、変な納得の仕方をしたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます