第12話 ヴァージンオーストラリア航空機内

 飛行機に乗り込む。久しぶりの飛行機。やっぱり狭い。

右3列左3列で中央に通路がある。私達は向かって左、通路中ごろの窓側と真ん中の席だった。

通路側には、オーストラリア人らしき、オカンと同年代の女性、大きな鞄を膝の上に抱えている。

席に着くとコドオが、頭上にあるロッカーへ荷物を載せて

「オカンのリュックも載せてあげようか?」

と聞いてくれる。私は、通路側の女性の真似をして鞄を持っておくことにした。

ANAで貰った不織布の袋もあるし

「いいよ。持ってる。ありがとう」

椅子に座りシートベルトをすると、コドオが

「やっぱ安い席やったから、羽の上やなぁ」

という。

「そういうもんなん?別に良いけど」

だが、問題発生は、そこから。

国際線の飛行機なのに前の座席の背もたれの裏。つまり私の正面プラスチックテーブルの上に画面が無い。

「コドさんえらいこっちゃ。画面が無い」

コドオは、何事もなかったかのように、本来画面があるべきところにスマートフォンを置こうとしている。

「せやで、ここにこうやってスマホおいて、充電器をここに挿して」

「充電器持ってきたけど普通のプラグタイプや。これってパソコンとかに挿すやつやろ?コドさん知ってたら教えてくれてたらよかったのに。

このタイプ置いてきたわ」

 これには、私以上にコドオが慌て、自分の鞄の中をかき回したが、iフォン使用者のコドオの鞄の中にCタイプの充電器は、見つからなかった。

「ごめんな、スーツケースの中にマルチタイプ入れてしまったわ」

謝るコドオに

「いやいや仕方ないよ。見れる範囲で映画見てるわ」

 と言って、ヴァージンオーストラリア航空のWi-Fiにつなぎ、ANAでもらったイヤフォンを挿して自分が面白いと思う見たことのある映画を探した。

 海外旅行経験は数回だが、行きの飛行機で英語字幕で鑑賞済み映画を見ると、英語に対する免疫が作れて、お店で挨拶くらいはできるようになると信じている。


 しかし、やはり動画を見ると電池の残量が気になる。

 少し早いが寝てしまおうかとも思ったら、飛行機の中がやたら寒い。

「コドさん寒いからCAさんにブランケット借りて」

「ここ、ブランケットとイヤフォンとアイマスクがセットになってて有料やで」

「ええっ?だから皆さん厚着なんや」

 飛行機に乗り込んだ時から、オーストラリアの人かな?と思える人達は初冬くらいの上着を着ていて驚いた。

「南半球の人達やからと思ってたわ」

「ケアンズは、ぬくいで。ゆうたやろ。わたしの上着かしたろか?」

「いや。それしたら、コドさんが寒いやろ」

「実は、こんなこともあろうかと、ええもん持ってんねん」

 オカンはったりである。

が、実際、持ち込んだ鞄の中には、ロストバゲッジを警戒して手持ちにした、一日分の着替えがある。

 基本海外旅行には、あと1回着たら捨てよう。という服を用意するが、そうでないワンピースをリュックに入れていたので、ブランケット代わりにすることにした。

「な、ええやろ」

「ええか悪いかは、わからんけど。寒い思いをしなくて良かったね」

 大人な対応のコドオであった。


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