第10話 伊丹から羽田

伊丹空港についた。ここからは、コドオの独壇場である。

天井が高く広いターミナル

「伊丹に来たのって何年ぶりやろ。綺麗になってるね」

入口で感嘆していると

「オカン、そんなどまんなかでぼぉっとしてたらあかん。迷惑やで。

わたしが電子チェックインする間ここで大人しく待っとき」

と隅の方へ誘導される。

「ここ椅子ないなぁ」

さっきまでの誉め言葉は、オカンの頭から消え去る。

まだまだやっぱり人が少ないな。とか、ほんとにぼんやりと周りを見回して時間をつぶしていると、それまでスマホ操作をしていたコドオが

「チェックインできたで。オカン携帯のメール見てみ。」

「あ、メール来てる。チェックイン完了のお知らせってきてるわ」

「バーコードも来てるやろ」

「あ、これやな」

お知らせのメールの後に2次元バーコードのメールが送られてきている。

「オカン、こっちやで」

呼ばれてコドオについて行く。

機械に携帯の2次元バーコードを読み取らせると

ピロンと紙が出てくる。

「そのチケットなくしたらあかんで」

それくらいは、わかる。


 数年前、夫と国内旅行をしたとき、家のプリンターで打ち出したA4の用紙のバーコードがチケットなのだと聞かされた時も驚いたが、本当に文明は日々進化していると思った。


「今度は、こっち。荷物預けるよ。」

えっ?スタッフさん誰もいないのに?

壁際に大きな四角い、これがレンガでできてたら暖炉だと思うスペースが横にいくつも並び、上に扉が開いている。

「こうやってスーツケースをおいて、ほらここにさっきの紙読ませんねん」

説明しながらコドオがやって見せてくれる。

スーツケースを置いたスペースの右側にバーコードを読ませる装置があり、さっき手にしたチケットを読ませると反応してその下から長い紙が出てくる。

非常に面白い。

「日本人は、右利きがおおいから右側なんか?」

「いや知らんけど。ここは、そうやね。

それよりオカンやってみ」

「うん」

スーツケースを置くのを手伝ってくれるコドオ。こんなに優しいのに何故彼女がいないのか?

チケットを当てるとするすると紙がでてくる。

「この部分をはがしてスーツケースの持ち手に、こうつけるんやで。

この部分は、控えやからなくしなや」

負うた子に道を教えられ状態のオカンであった。

「荷物にタグをつけ終わったら、扉しめるよ。

オカン離れて」

コドオが扉を閉める。OKのサインがでる。荷物を預けるのも非常にスムーズだ。空港に人が少ないと思ったのは、このスムーズさも一因かもしれない。


「ほな、ここで両替しとこか」

「え、ここでもできるの?」

てっきり国際線に乗る羽田で両替をすると思っていたので驚いた。

「ここでもできるよ。

羽田は、混むからここでしといた方がええねん」

コドオについて行くと、本当に両替所には、先客が一人だけだった。

コドオが日本円で約1万円、私が約3万円を両替した。

「手数料込みでAU1ドル=104円だったので、今後買い物をするときは、AU1ドル=100円で考えたら楽だね」

というと、コドオも同意した。


 ANAの飛行機に乗り込む前に、柱(壁)の所に大きな紙の箱が張り付けてある。

搭乗後、前の席の下へ押し込むかばんを事前に入れれる不織布の大きな袋だった。

自由にお使いください。とある。

コロナ禍の影響だろうか?今までかばんを床に直に置くことに抵抗があったので、凄く嬉しかった。


 飛行機に乗り込む。

前の座席の背もたれ部分の収納袋に小さなビニールの密閉された袋がある。

「これなに?」

「イヤフォンやで。欲しかったら貰って帰ってええねんで。」

「イヤフォン持ってきてないから、めちゃ嬉しい。」

と、ありがたく貰ったが、このイヤフォンは、後からとても役立った。


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