第7話 ETAでオカンやらかしかける
仕事から帰宅したコドオに、無事パスポートを取得したことを報告した。
「スムーズに取れて良かったね。
明日ちょうど休みやから一緒にイータスを申し込もうか」
という。
「イータスってビザやったっけ?」
「そうそう、ビザを申請するシステム。
携帯でできんねん。手数料は、2,000円くらいかな?」
「どうやって払うん?」
「クレジットカード。明日パスポートと携帯とクレカ用意してな」
「えっ。自分でやんの?日本語?」
「オーストラリアのイータスやから英語やで。わたしがやってあげるから」
「コドさま!ありがとう!なんかおごったろか?」
「晩御飯作ってくれてんねやろ」
「晩御飯にビールつけたろか?」
「今日は、ええわ。とにかく早くご飯食べさせて。お腹すいたわ」
最後は、ちょっといらついていた模様のコドオだが、無事夕飯を和やかに食べ終わり、明日を楽しみにした。
翌日、遅い朝ごはんを済ませると二人でテーブルの上を片付ける。
コドオは、パスポートなどを机上にならべ、ノートパソコンを開いた。
「あれ、パソコンでするの?」
「いや、携帯やで」
ここで、きちんとパソコンを開く意味をコドオが言っていれば。
いや、言ったかもしれないが、私はたぶん自分の部屋へパスポートとクレジットカードを取りに行っていた。
「はい。全部そろったよ」
声をかけると、コドオは携帯の画面を凝視しながら
「ごめん。読み取りとか、思ってたより時間かかるわ。
自分のが終わったらすぐにオカンのやるから」
「わかった。大人しく待ってるわ」
と言った言葉は、3分も持たなかった。
「コドさんにすぐに登録してもらえるようにアプリだけ入れとこうか?」
「せやな。そうしてもらっといた方が早いな。
『ETA オーストラリア』って検索したらすぐでてくるから」
検索した。すぐに出てきた。『アプリを入れてください』はいよ。
コドオが言うようにちょっとだけ時間がかかる。
「暗証番号6桁」
「忘れそうやったら紙に書きや」
「銀行の暗証番号ちゃうから簡単なんしとくわ」
「せやね」
「あなたは、旅行業者ですか?ノーと」
「旅行業者ってしたらあかんでややこしいから」
「せえへんわ。ノーっていったやろ。
コドさんは、『旅行業者です』ってすんの?」
「せえへんよ。今回プライベートで行くもん」
「あそうか」
携帯画面へ意識をもどす
「わー!わからん英語がずらずら出てきた。
アグリーはイエスやな。押していいか?」
登録中のコドオの顔色を伺いながら話しかける。
「いいよ。パスポート読み込めって言ってきたやろ」
私や夫は、自分が集中している時話しかけられるとイラつき、『待ってて』と云うが、コドオは怒らない。我が子ながらこういう時は、えらいなぁと思う。
「うん」
パスポートをスキャンする。イラストがあるので分かりやすい。一発OK!
気持ち良い。
先日、住んでる場所的に不可能だったが、間違えてマイナンバーカードでパスポート申請しようとした時、顔写真、住所、生年月日っていう感じに(記憶なので項目は、もしかしたら間違っているかもしれないが)一つの項目に一回ずつ毎回マイナンバーカードを読み取らせなければならないのは、驚いた。結局できへんかったし。
余談は、さておき携帯画面。自分のデーターがするする出てくる。
「データでてきたやろ。ちゃんと確認しいや」
「うん。リスキャンの反対でええな」
「ケンファームってでてきたやろ。確認って意味やで」
「OK」
今度は、顔写真を求めてくる。パスポート写真との整合性チェックのようだ。
あれ?今度は、反応しない。
「写真撮る時は、白い壁の前でしいや」
「りょ」
すぐに反応してくれる。
「ほんでジャパン選びや」
「知ってる」
教えてもらってながら生意気なオカンである。
「あとネクストで進みや」
「OK」
簡単簡単と思ってると『違う名前を持っているか?』と聞いてくる
「コドさん。クリスチャンちゃうのに違う名前を持ってるか?って聞いてくるわ。
セカンドネームいれるんか」
「いやいやそういう意味やないって。ノーでいいって。結婚したりして苗字変わってるか?って聞いてんねんて」
「あ、ネクストしたらそういってるわ。
そういえば母も新婚旅行の時は、まだ籍入れんと旧姓で行ったわ」
「え、そうなん?」
「うん。だって今よりずっとパスポートとかビザとか取るのに時間かかった時代やから。そんで新婚旅行中に(今は)亡くなったお義父ちゃんが婚姻届けだしてくれてはってん」
「そうやったんや」
おじいちゃん大好きっこだったコドオの声が優しい。
「せやねん。」
「それ入れたらここの住所いれや」
「OK」
という感じで順調に入力していると
ピンポーンとインターフォンが鳴った。
「え、誰やろ?」
コドオがインターフォンの画面を見て
「宅配便やさんや行ってくるわ」
と部屋を出ていった。
コドオが帰ってくるのを待つべきかなとも思ったが、ここまで順調だったので、と先に進む
終盤近くなって『あなたは、クリミナルなんちゃらですか?』と聞いてくる。
「はいっと」
するとドメスティックバイオレンスがどうのこうの・・・
あれ、もしかしてここやばいとこ?
ちょうどコドオが帰ってきた。
「コドさん。クリミナルなんちゃらですか?って聞いてきたから『Yes』って答えたら、ドメスティックバイオレンス出てきた」
コドオが血相を変える
「あかんあかん。オカン犯罪者になってんで」
「えー!あ、そういえば『クリミナルマインド』って犯罪者捕まえるドラマあったな」
「なにやってんねん。ちょっと目を離したら」
幸いページは、戻ることができ『No』を選択しなおせた。
「あー怖かった」
「『あー怖かった』やないわ。びっくりさせんといてや」
「それにしても、コドさんは、えらいなぁ。ちゃんと英語理解してるね」
「いや、まぁ。それにわたし、日本語の説明読みながらやってたし」
「え、日本語画面あったん?なんで教えてくれへんかったん」
「ちゃうよ。ほらこのパソコン画面で日本語の説明見ながらやってたやん。
丁寧で分かりやすいのがあんねん」
「ええっ!だから時間かかってたんや!」
「当たり前やろ。こんな公的な申請する時に間違えたらどうすんの」
なんかいつもの言葉足らずで親子でけんかになるコドオの特性としっかりしてきたのかな?と思いたい複雑な心境で無事ETAを入力し終えクレカでAU$20も払った。
「あ、もう登録できたってメールきたで。オカンは?」
「あ、きたきた凄いな」
ネット社会って本当に凄いと思った。
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