第6話 話しは前後して
実は、スーツケースを購入前にパスポートを取りに行っていた。
ちょうどパスポートを取りに行こうと思っていた日にちあたりで
親友のTちゃんにランチに誘われたので、旅券事務所の近くでのランチ&ウィンドショッピングに付き合ってもらうことにしていた。
待ち合わせ時間に遅れた私にもTちゃんは、優しい。
高校時代に比べたら随分ましになった。と笑ってくれる。
45年かけてまだ何やってんだ私。とへこむ。
へこみながらも、Tちゃんにランチの店を物色してもらってダッシュでパスポートを受け取りに行く。予定では、早めに家を出てパスポートを受け取って私が待っていたはずなのだが・・・
幸いにして、以前パスポートを取得した時に比べて、手続きが早かった気がする。コロナ禍からまだ抜け切れてなくて海外旅行への需要が減ったままなのか、所得は上がらないのに物価ばかりが上がっているからなのか、多分両方なのかな?
私も格安チケットの言葉がなかったら、今回の旅行には飛びつかなかっただろう。
どちらにしろ、5分くらいで受け取れたことに安堵しながらTちゃんが待ってくれているお店へ急いだ。
近況報告をしながらランチを食べて、オーストラリア旅行に行くこともTちゃんに説明していた。
「私は、もう国内でいいわ。まだまだ行ってないとこもあるしね」
ご夫婦仲が良くて、コロナ禍前は、毎年のようにハワイへ行っていたTちゃんだが、コロナ禍が収まってからは、もっぱら国内旅行派になってしまった。
ご主人が鉄道好きで、とても素敵な旅先をチョイスなさるのも影響しているかもしれないが。
「実はさ。
この旅行に行こうかってコドオと話しした時さ、お義母さんも誘ったんだよね。」
パスタを巻きながら
「うん。それで」
「お義母さんもTちゃんと同じようなことをいってはった。
あと1回くらいは、海外行きたい。って去年くらいまでは、いってはってんけどね」
「お義母さんいくつやったっけ」
「84歳。でも全然若くてどうみても70代やで」
「うーん。でもやっぱり、準備とか長時間の飛行機とか負担なんちゃう」
「うん。そうかもね。それでさ
『あんたも、もうすぐ年金暮らしやねんから、若いコドオが行くからってなんでもついていってたら、老後破綻するよ』って諭された」
「でも、乃梨香働いてるやん」
「うん。でもたかだかアルバイトやから収入しれてるし。あと受け取れる年金額とか考えて心配してくれる。お義父さんの時代みたいに企業年金とかもないやん」
「せやね。世知辛い世の中やね」
「うん。それでおこずかいくれた」
「えぇっ!良かったやん」
「うん。せやから、オーストラリアでお義母さんのお土産にブラックオパールのなんか小さいのでいいから買いたいんよ。
けど、お土産買って帰ってきて日本の方が安いとかショックやん。パスタ食べおわったら一緒に見に行ってくれへん。あ、あとスーツケースも」
「ええよ。ひかりもんは、乃梨香待ってるあいだにさんざん見たけど、好きやからもう一回行ってあげる」
「ごめんねー。二重にごめんね」
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