第8話さらば沢蟹

ある夏の日、お父ちゃんと近所のお大師山に登った。

この山は 、兵庫区の清水町にある通称オダイシと言うが、園山の手前の山には、首吊り山と恐ろしげな呼ばれ方をしている山がある。

山肌には松の木が生い茂り昆虫の姿さえ皆無」だった。

 首吊り山に一人で登った時、四つんばいに為らないと登れないほどの急斜面に疲れてふと、頭を上げると、もう成人している年端のお兄さんが、腕を組んで立ちはだかり通せんぼをしていた。

 大人が通せんぼをするから通ってはいけないと思い方向転換をして登り始めた。

が、又もや通せんぼをして来る! 諦めて降りたが、今思うとお兄さんの容姿はお笑いコンビロッジの片岡さんお様だった。家族に言うと「それはね、おまえが登ったら危ないから止めさせたんだよ?でも何で首吊り山に登ったん?」と、聞かれ僕が独りで山に行っていると打ち明けたから「子供が独りで山登りしたらイカン! お大師山に登ってどんな処に行っているのか親として、知る必要がある。」と、お大師山の道案内をする事になり僕は得意気に案内をした。

 お大師山の麓には頂上から水が湧いているので、小さな小川が出来ていた。

そこには沢蟹が居て、大きいのを採ってやろうと、小川を覗いていたら「そんなん採らんぞ! 早うしなさい行くぞ。」と、先を急がされ泣く泣く沢蟹に別れを告げ、立ち上がった。

大人

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る