第四頁

 身体に関する検査がある程度終わったところで、外出をする許可がおりました。

 まだ誰か付き添いは必要と言われましたが、流石に部屋の景色に飽き始めていたのと、当の看護師さんに強く勧められたので、私は病院内を少し散歩してみることにしました。


 主に面倒を見てくれている看護師さんは、気さくな方でした。

 病院内を回りながら、それぞれの施設について説明を受けました。


 また、看護師さんは植物が好きなようで、中庭に立ち寄った際は、そこに咲いていた花の一つ一つを間近で指差しながら、これは何の花で、と説明をしてくれました。

 その過程で、私の名前、カンナ、というのも、花の名前だと教えてもらいました。夏に咲く、綺麗な花だそうです。

 時期ではなかったので画像を見せてもらいましたが、そこには鮮やかな赤や黄色をした、大きな花が映っていました。

 いつか本物が見られるといいね、と言われましたが、夏が訪れるのはまだまだ先のようでした。


 帰り道、自動販売機の横を通り過ぎたときにふと、「私」の好物だったという飲み物が置いてあることに気付きました。

 そのことを看護師さんに話すと、看護師さんは自分のポケットから小銭を取り出して、私にその飲み物を買ってくれました。――本当に、親身になってくれる人です。


 ですので、その飲み物の口当たりに驚いて、つい零してしまったのは、申し訳なかったな、と思います。

 それでも看護師さんは怒ることもなく、「覚えなおすのも大変ね」と言ってくれたのでしたが。




 そういえば。


 かつての「私」が残したノート。これまでは少しずつ読むようにしていたのですが、最近になって急に、読み進めることが出来なくなってしまいました。


 何故でしょう?

 書いてあるのはこれまで通りの、とりとめもない話ばかりなはずなのですが。

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