第6話 勝ち目のない恋 瑠海side
私には好きな人がいる。
小学生からの想い人。
私には大好きな親友がいる。
小学生からの付き合い。
私の親友と好きな人は幼馴染だった。
「だ、だって律輝が私と食べたいって言ったんじゃん!瑠海と二人がいいなんて知らないよっ!」
友梨が理由の分からないことを叫んだ。
「何を言ってるの、友梨」
(何を言ってるの、かぁ…やっぱり否定されるんだね…)
「何って…何が?」
友梨は首をコテンと横に傾けた。
二人は顔を見合わせたまま固まった。
(私って、小説で言うライバルキャラになるのかなぁ?主人公の友梨は律輝が好き。けど、友達Aも律輝が好き。私はそんな話の友達A役なのかなぁ)
「…二人共っ!とにかくお昼ごはん食べよっ!」
私はなるべく明るい声で言った。
泣きそうな顔を隠すように無理やり笑った。
(…嫌だなぁ…)
私はどうしてもこれからのお弁当の時間を〝楽しみ〟とは思えなかった。
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「あのさ、さっきの事だけど…」
律輝が〝さっきのこと〟を話し始めようとする。
「はいは~い、その話は違うときにしてね〜」
私は律輝より大きい声で言った。
(さっきの話の続きは二人でやって欲しい…私は見たくない…)
「もっと楽しいことを話そ?私にとって今は貴重な時間だから」
〝私にとっては〟その言葉は私の胸にぐさりと刺さった。
「そうだねっ!何話す?」
一応笑ってたつもりではあったが友梨には私の泣きそうな声に気づいたみたい。
大きな声で笑って話しかけてくれる。
「恋バナとかする?」
友梨がなわけないよねーと笑う。
「え……?」
が、律輝には衝撃的な言葉だったみたいだ。
疑問の声を出して硬直してしまった。
「……恋バナって皆答えるの?」
律輝がぼそっとつぶやく。
「どうなの…!?」
多分律輝は友梨の好きな人が知りたいんだと思う。
それがまた悲しかった。
「え、えーっと…ま、まぁそういうことで!」
友梨は思わず返事をしてしまったと言うかのようにはっと口元を抑えた。
「じゃあやろう!」
私は張り切って言った。
「じゃあ、言い出しっぺの友梨からね!」
「ええっ、私!?」
友梨は驚いているが、まぁ、普通はそうなるよね。
「友梨、絶対言ってね」
律輝が念押しをする。
(…そんなに知りたいんだ)
「…期待しないでよ?」
「「うん!」」
私達は元気良く答える。
「私……好きな人…」
(もし、「律輝」なんて言われたら私はもう……律輝を好きでいちゃ、いけないのかな…)
私は友梨の好きな人は気になるけど、知りたくない気持ちもあった。
「…いないんだよね」
「い、ないの…?」
「え…!ほ、ほんと!?」
私は嬉しくて思わず喜んでしまう。
(友梨って好きな人、いなかったんだ…!てっきり、律輝が好きなのかと思ってた)
「瑠海…、なんで嬉しそうなの?」
すると、律輝が私の気持ちに気づいたようにそう聞いてくる。
(な、なんて言おう…思い切って告白しちゃう…!?いや、無理…っ!)
「えっ…えと…ゆ、友梨のことが大好きだから、まだ好きな人がいないなら誰にも取られないかなー…って…」
私はとっさに出てきた言い訳を早口で言った。
すると、友梨はうるうる目に涙をためて、私に抱きついてきた。
「瑠海!私は取られないから大丈夫!安心して…!」
(……複雑…)
「………」
律輝は嫌そうな顔で、私達を見ていた。
「はいっ、気持ちを切り替えて、次は律輝ね」
「俺っ!?」
「そう、俺!」
友梨が律輝を指さして言う。
(律輝の好きな人っ…!気になるけど……怖い…)
「っていうか、律輝って好きな人いるの?」
「お、俺って……好きな人がいるのかな…?」
「「…は?」」
友梨と私の声が重なる。
私達はまたまた同時に何いってんの…?と言う。
「いや、俺もよくわかんないんだって…!」
律輝はまたまた不思議な事を言う。
「ん〜っとそれは律輝に好きな人がいないってことでいいんだよね…?」
友梨はそうだよね?と律輝に確認をする。
「……多分」
(えっ…!?二人共いないの…!?この流れだと私、言いにくい…!!)
「うーんそっかぁ……。じゃあ、最後は瑠海だね」
「…えっと…う〜ん…」
(な、なんて言おうか。思い切って告白しちゃうか、いないことにするか。どうしよう…!)
私は額に冷や汗を浮かべる。
(でも…嘘つくのは嫌だから───)
「いる…にはいる」
「えっ!?えっ!?ええっ!?」
「おおっ!?」
友梨と律輝は興奮したように私に迫ってくる。
「誰っ!?誰なの!?」
友梨がすごいキラキラした目を私に向けてくる。
「うっ、それは…」
「誰なんだっ?」
律輝もずいっと迫ってくる。
(律輝にそれを聞かれるのは…!けど、もう……言っちゃおうかな…)
「わっ、私の好きな人は……っ」
「…りっ…!」
キーンコーンカーンコーン─────
お昼休みになるチャイムが鳴った。
丁度その時放送が始まった。
『生徒会役員は生徒会室に集まってください。もう一度繰り返します。生徒会役員は……』
「あっ、ごめん。行かなきゃ…!」
そう言い残して友梨はいなくなってしまった。
(はぁ…。よかった。言わずにすんだ。けど言えたらスッキリしたかもなぁ…)
「友梨いなくなっちゃったね…」
「ああ……」
律輝は悲しそうに言う。
(なんであんな時にチャイムが鳴ってしまったんだろうか?偶然?
それとも───)
私は思った。
(私の気持ちを伝えないようにしてるの?)
私はなるべく笑顔で律輝に言った。
「じゃあ、もう戻ろっか」
「え?なんで?」
「…友梨がいないから」
「友梨がいないからって瑠海と昼休み遊ぶのは変わらないだろ?」
律輝はそうだろ?と笑いかけてくる。
「はぁ……。そういうところだよ」
「えっ!?なに?なんのこと!?」
(そういう、人を差別しないところが好きになったんだよ)
「そのうち分かるよ」
「…?」
律輝の考える姿が面白くて私は思わず笑ってしまった。
そのまま適当に話をして、昼休みは終わった。
私はその時間が楽しくてたまらなかった。
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