第5話 恋バナ
「友梨ー!どこで食べる?」
お昼の時間になって、律輝が私の方に向かってくる。
「あ、ちょっとまってて。瑠海ー!!こっち来て!」
「る、…み…?」
律輝はなんか嫌そうな顔をしていたけどそんなの気にしない気にしない。
「何?友梨…あっ、そっか!!お弁当持ってくる!」
瑠海は律輝を見るとぱっと目を輝かせた。
(瑠海可愛いもんなぁ…これじゃあ男子が放っとかないよ。いつか律輝もそうなるのかな…)
そう思うと何故か嫌な気分になった。
「瑠海…お弁当…」
律輝は考え込むようにして私の言った言葉を繰り返した。
(これは…瑠海とお弁当が食べれることを喜んでいるのかな…?私ってもしかして邪魔になってない…?)
「友梨〜っ!!持ってきたよ〜んっ!」
瑠海の元気な声が後ろから聞こえてくる。
振り返ると瑠海がお弁当を手に持って走ってくる。
「どこで食べる?」
私は律輝の方を見た。
「友梨…話が違うぞ」
(ひ、ひぃっ…!)
律輝がすごい怒った顔をして私の両肩をつかんできたのだ。
「だ、だって律輝が私と食べたいって言ったんじゃん!瑠海と二人がいいなんて知らないよっ!」
私は思ったことをすべて言った。
すると、瑠海はなんとも言えない表情をして「ほんとにそうだったらいいのになぁ…」なんて言っている。
それに比べて律輝はキョトンとして言葉を失っている。
「何を言ってるの、友梨」
「何って…何が?」
(会話が成立してない…)
二人で、キョトンとしていると瑠海が私達の間に入って、
「とにかくお昼ごはん食べよっ!」
と言った。
私達もこの謎の件は一旦置いといてお昼ごはんを食べることにした。
❦*.。.:*♡-❥*.。.:*♡❦:。.:❧
結局食べる場所は屋上になって、食べ始めた時。
「あのさ、さっきのことだけど…」
「はいは~い、その話は違うときにしてね〜」
律輝が〝さっきのこと〟について話そうとしたら瑠海が律輝の声に被せて言った。
〝さっきのこと〟って話が全く噛み合わなかったときのことかな?
「もっと楽しいこと話そ?私にとって今は貴重な時間だから」
瑠海は「二人はいつも一緒だもんね…」と、悲しい声で言う。
「そうだねっ!何話す?」
私はわざと声を張り上げて元気に言う。
「恋バナとかする?」
私が適当に言ったら、
「え……?」
律輝は顔を真っ赤にした。
律輝の言葉を最後に沈黙が続く。
「……恋バナって皆答えるの?」
「どうなの…!?」
二人が私に質問してくる。
「え、えーっと…ま、まぁそういうことで!」
(…ってこれは私も答えなくちゃいけないじゃん!)
「じゃあやろう!」
瑠海が張り切った様子で言う。
「じゃあ、言い出しっぺの友梨からね!」
「ええっ、私!?」
(瑠海…!それはひどいよ!)
「友梨、絶対言ってね」
さらに律輝が念押しをしてくる。
「…期待しないでよ?」
「「うん!」」
(………。絶対期待してるじゃん)
二人はキラキラした目で私のことを見てくる。
(本当につまんない結果だけど…)
「私……好きな人…」
二人の目の輝きがさらに強くなった。
「…いないんだよね」
私がそう言うと、
「い、ないの…?」
「え…!ほ、ほんと!?」
二人はそれぞれ反対の表情をした。
律輝は何故か複雑そうな顔で、こちらを見つめている。
瑠海は逆に嬉しそうな顔で「もしかしたら、…このまま友梨の好きな人がいなかったら……」とか、なんとか言っている。
「瑠海…、なんで嬉しそうなの?」
律輝が悲しそうな声で言う。
「えっ…えと…ゆ、友梨のことが大好きだから、まだ好きな人がいないなら誰にも取られないかなー…って…」
(瑠海…っ!!)
「瑠海!私は取られないから大丈夫!安心して…!」
「………」
律輝はこの感動のシーンを無表情で見ていた。
(あれはどういう気持ちなんだろうか…)
「はいっ、気持ちを切り替えて、次は…律輝ね!」
「俺っ!?」
「そう、俺!」
(律輝の好きな人は聞いたことないから、知りたかったんだよね〜)
「っていうか、律輝って好きな人いるの?」
(そもそも私みたいにいない場合もあるしね)
そう聞くと律輝はう〜ん…と頭を抱えた。
「お、俺って……好きな人がいるのかな…?」
「「…は?」」
まさかの展開に私と瑠海は顔を見合わせる。
「「何いってんの…?」」
また、瑠海と言葉がかぶる。
「いや、俺もよくわかんないんだって…!」
律輝がなんでだろうなーと言う。
(それは、さ……)
「ん~っとそれは律輝に好きな人がいないってことでいいんだよね…?」
私は律輝にそうだよね?と確認をする。
「……多分」
律輝はまだ少し納得いかないって顔をしているけど、わからないものは仕方ない。
「うーんそっかぁ……。じゃあ、最後は瑠海だね」
(瑠海と恋バナとかしないから、気になるなぁ)
「…えっと…う~ん…」
瑠海は冷や汗を浮かべて目をそらす。
(この反応は…もしや…)
「いる…にはいる」
「えっ!?えっ!?ええっ!?」
「おおっ!?」
私は興奮して瑠海に顔を近づける。
(初耳…!!言ってくれれば協力できたのに…!!)
そして、本題。
「誰っ!?誰なの!?」
「うっ、それは…」
瑠海が嫌そうに顔をしかめる。
「誰なんだっ?」
律輝も結構、興奮しているようで瑠海に迫る。
「わっ、私の好きな人は……っ」
(おっ、言ってくれる…!?)
「…りっ…!」
キーンコーンカーンコーン─────
チャイムがなって昼休みになった。
その時に放送が始まった。
内容は…
『生徒会役員は生徒会室に集まってください。もう一度繰り返します。生徒会役員は……』
「あっ、ごめん。行かなきゃ…!」
私は空のお弁当箱を持って生徒会室へと向かった。
(結局瑠海って好きな人、「り」ってだれだろ…?今度また聞いてみよう)
私は走って階段を駆け下りた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます