第4話 怒り気味の律輝
私は生徒会に入ることになった。
だから、いつも一緒に帰っていた律輝とは、帰れなくなってしまうのだ。
だから、〝帰るときのこと〟のことと〝生徒会役員になったこと〟を今日の朝に話そうと思う。
ピンポーン
(律輝だっ!)
私はカバンを持って外に出る。
「おはよう」
「お、おはよう」
律輝は行こっか、とまた手を差し出してくる。
(えっ、また!?)
よく分からないけど初めて手を繋いで学校に行った日からずっとこんな感じなのだ。
今日も恐る恐る手を重ねる。
すると、律輝は満足そうにして歩き出した。
「あ、あのさ律輝」
「ん?何?」
「私ね…生徒会に入ることにしたの」
律輝の顔が見れなくて下を見る。
(………)
しばらく沈黙が続く。
ちらっと律輝の顔を見るとその顔はひどく青ざめていて泣きそうに私を見つめていた。
「りっ律輝!?」
繋いでいる手がぎゅっと強く握られた。
「な、なんで…生徒会に…」
律輝は、ようやく喋ったが顔はまだ泣きそうだった。
「先生に紹介されてね…ちょっとやってみようかなって…」
「先生め…!」
「先生は悪くないよ...!そ、それに私は律輝が嫌ならやめるから…」
そう言うと律輝は、少しだけ嬉しそうにしたけどすぐにさっきの顔に戻った。
(と、言ってももうやめられないけど…!)
「いや、それは駄目。友梨がやりたいなら応援するけど…」
「あ、ありがとう」
「けど…生徒会に入っちゃうなら俺との時間も増やして」
(生徒会に入っちゃうならってもう入ってるんだけどね…って俺との時間って…?)
「お弁当も瑠海とじゃなくて俺と一緒に食べよう。昼休みも…」
「う、うん。わかった」
(それは瑠海と私と三人で食べたいってことかな)
「そ、それとね、これからは一緒に帰れなくなるんだけど…」
「え…っ!?」
律輝の顔はまたもや青ざめた。
「ごめんね、代わりに生徒会役員の如月兄弟に送ってもらうことになってて…」
「兄弟…か」
律輝はさらに嫌そうな顔をした。
「ほ、ほら、お弁当もいっしょに食べるし昼休みも一緒に遊ぶでしょ?」
(お姉ちゃんが取られるみたいで嫌なのかな?)
「けど…」
律輝はまだ納得行かないって顔だ。
「じゃ、じゃあ、今週の土曜日に遊ぼう!二人で!ね?」
そう言うとまだ律輝は悲しそうな顔をしていたけど少し喜んでいるようにも見えた。
(律輝はあれかな。暇だから遊び相手がほしいのかな)
「行こっか…!」
そう言って、私は無理やり律輝の手を引っ張って学校に向かった。
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「瑠海、おはよう」
今日は、律輝を説得していて遅刻ギリギリだった。
だから、いつも遅刻ギリギリの瑠海が先に教室にいた。
「おっはよ~、今日遅かったねー!」
「うん、ちょっと色々あってね…」
チラッと律輝を見る。
「…律輝が関係してるの?」
私が律輝と見たのに気がついたのか、そんな事を言ってきた。
「え、うん…」
「何?何があったの?」
「そ、それは言えないけど…。あ、そういえばさ、お弁当律輝と三人で食べることになったから」
「えええぇー!!」
(そこまで驚くことではないと思うけど)
「やったぁー!」
瑠海は心底嬉しそうに笑った。
(律輝といるのがそんなに嬉しいんだ。意外…)
もし、瑠海が……律輝を好きになったのなら、私は素直に応援したい。
そう思っているはずなのに応援したくないって言っている自分もいた。
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