第12話 花の咲いた理由
「ついついボクの話ばっかりしちゃった! 今日は是非ともルルとお話ししたいねーって言ってたんだ~」
「私とですか?」
「うん! この間もボクがいっぱい喋っちゃったからさー。ルルはどんなお話が好み?」
これは、王子に話を聞ける、絶好の機会ではないでしょうか……!
昼間、フルドさんから王子がどんな人なのかは聞けたけれど、結局のところ彼が私のことをどう思っているのか聞けず仕舞いだった。
意気込む私に二人は不思議そうに顔を見合わせていた。
「ッ是非とも! 恋バナを!」
「うおっ、圧がつよぉ〜い! ルルってば、実はおもしろ系の子?」
「おもしろ系?」
「ごめんごめん、話の腰折っちゃった! でで? 恋バナ? 誰の? ルルの?」
そこまで言われて王子の方を振り向く。
まさか見られると思っていなかった王子は意外そうな顔でこちらを見ていた。
「えっ、僕?」
「はい。実は、シリウス様が月の王女様に求婚された話を小耳に挟みまして……」
私の言葉にウェンディさんが首を縦に強く振る。
強すぎて取れちゃわないか心配になるぐらい激しい。
「やっぱ気になるよねぇ、わかるわかる!」
「ウェンディもテンション高いね」
「だって、急だったから! めっちゃ気になるよ〜!」
「そういうものなの?」
「そういうもの! なの!」
今回はウェンディさんが加勢してくれているから、いい感じで話が進んでいる!
私も彼女に倣ってうんうん頷いていると、「そんなにかぁ」と王子が呟いた。
「何故、彼女だったのでしょうか?」
「何故……そうだね。彼女の心が一番綺麗だったから、かな」
「心……?」
飛び出してきた単語に目を丸くする。
王子も人の心を読む術を持っているのだろうか。
昨日もそうだったけれど私を置いていかないでほしい。
「では、王女様のことがお嫌いというわけではないのですか?」
「そんなことない!」
王子は今までとは打って変わって声を荒げる。
ウェンディさんもこの反応は予測していなかったのか、肩を揺らしていた。
「……大きな声を出してごめん。でも、それだけは、本当にありえないから」
「私の方こそごめんなさい。お会いにならないから……てっきり……その」
「会わないのは僕の勝手な都合だから……彼女に悪いところなんて、何もないんだ」
そう言うと彼は申し訳なさそうに俯いた。
◇
王子との一件から少し経ったある日。
フルドさんと二人、庭園で唖然としていた。
「咲いてる……」
「咲いてますね……」
昨日まで私の膝ほどまでしかなかった薔薇の木たちが、胸元まで成長し花をつけたのだ。
しかも一輪だけと言うわけではなく、蕾が次々とついている。
あと二、三日もすれば満開になるだろう。
「星の国の花って、成長が早いとかあるのでしょうか?」
「いえ、植物の生育に関しては他国と差はないと思いますが……いや、まさか」
「何か心当たりが……?」
「……いえ。魔法を行使すれば、花の成長を早めることはできると思います」
「フルドさんがしてくださった……訳ではないんですね」
すごい勢いで拒否られてしまった。
言葉はなかったけれど、首と手の動きが完全に『いいえ』を表すそれだった。
誰がやってくれたのか、私は何となく察しがついていた。
あんな夜更けにシリウス様が連日ベンチにいた理由がきっとこれなのだろう。
心なしか成長している気がしていたのは気のせいではなく、シリウス様が力を貸してくださっていたからだ。
毎日話していたのに全く気が付かなかった。
「見事ですね。きっとアルドラも喜びます」
「……そうだ! フルドさん、お願いがあるのですが」
綺麗に咲く薔薇たちを見せるだけで終わりにするのは勿体無い。
閃いた私の横でフルドさんがきょとんとしていた。
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