俺は主役じゃないのか…
メロンパン
プロローグ
自分で言うのもアレだが、俺はなかなか特殊な人生を歩んできたと思う
子供の頃から、運動もダメ勉強もダメ、おまけに根性もなく何の取り柄もない人間だった
学校で毎年、担任になった先生に将来を心配されるのが俺という人間だ
そんな俺は、名前を書いて試験を受ければ、誰でも入れると噂の高校に入り、金さえ払えば誰でも合格できると言う大学に入って適当に卒業した
そして、大学卒業と同時に子供の頃からの夢だったラノベ作家になった
だが、最初の頃は思うように売れず、友達に、今のお前ほぼ無職じゃん(笑)て言われるレベルだった
無職じゃねぇよ!ラノベ作家は立派な職業なんだからな!俺は社会にしっかりと貢献してるだからな!多分!
労働バンザイ!!
だが、人生どうなるのか分からない物で、俺の書いたラノベは爆発的に売れ、ラノベ作家になるまで人生の負け組だった俺も、今や生活に困らないくらいには稼いでいる。
その上、今夜は…
「生放送をご覧の皆様、会場に直接足を運んでくださった皆様、こんにちは〜!本日はよろしくお願いします!主人公のアーサー役、声優の◇◇です」
「ヒロインのレーナ役の、声優〇〇です!」
今夜は俺の書いたラノベ(異世界いせかいの神殺者ジャッチメントたち)のアニメ第2期制作決定記念生放送の日だ
結構大きいライブ会場で結構な人数が会場に足を運んでくれていて、YouTubeでは結構な人数が配信を見てくれている
「本日は特別ゲストとして原作者、小林先生に来ていただいております!」
ステージにいる2人の声優は、他のサブキャラを演じている声優を5人ほど呼んだ後に俺を呼んだ
俺が主人公の声優の人に呼ばれたと同時に、軽快な音楽が鳴り出した。
他の声優達がステージに出る時はこんな音楽鳴ってなかったので、地味な見た目の俺が登場するのに、少しでも華を持たせようとした演出だろう
「どうも〜原作者の小林です〜」
俺は笑顔で手を振りながらステージに登場した
俺が入ったのと同時に鼓膜が破れるんじゃないかと言うほどの歓喜の悲鳴…を期待したのだが、会場の人達は声一つ上げなかった
おい!声優の登場にはキャーキャー言ってたくせに!!お前ら俺の作品のファンなんじゃないのかよ?!、少しは喜んでも良くない?!
俺の笑顔の裏にはこんな感情が隠れていた
「本日はよろしくお願いします〜」
俺はステージ上にある自分の席まで歩くと、その場でお辞儀をし、客席をぐるっと見渡した
こう見ると意外と女性のファンもいるんだな〜
まぁ、俺の登場に冷めた目を向ける人をファンと言っても良いのかは分からないが…
この作品はいわゆる異世界ハーレム系なので女性のファンの少なさには自信があったのだが、意外と入場客の半分くらいは女性だった
女性が大人数いると、自然と俺の口角も上がってニヤけた顔になってしまう
女性がたくさん嬉しいな♪
おっと、いかんいかん俺には子供はいないが妻はいるんだった。アイアム既婚者
俺はにやけた顔を真顔に戻した
「それでは、まず原作者である小林さんにいくつか我々声優陣から質問させていただいても良いですか?」
「いいですよ」
ヒロイン役の声優さんが俺に尋ねてきた
かなりの美人だったので俺はニッコニコ笑顔でOKの返事をした
美人は神!ゴット!絶対的存在!それが俺の座右の銘だ
「その前に、一応ストーリーのあらすじを説明しないとダメでしょ(笑)一応これ、公式の生放送なんですから(笑)」
「そうでした〜すいませ〜ん」
主人公の声優が(笑)の感じで注意をし、ヒロインの声優が(笑)な感じで誤った
「ではせっかくなんで原作者さんに、あらすじ読んでもらいましょう!」
主人公の声優がテンション高めで言った
めんどくさ、なんで普通のおっさんが大人数の前で、こんな長い文読まなアカンねん!それぐらいお前が読めや!あんた声優やろ!声優ならイケボなんやろ?!
「この作品、(異世界いせかいの神殺者ジャッチメントたち)は、ふぅ〜」
あらすじの分はバカみたいに長かったので、一旦言葉を区切り、深呼吸をして話し始めた
「まず主人公が死に、異世界転生するところから始まります。そして主人公が4歳になる時、神が世界に舞い降り、人間達に超能力を与え、12年後に世界最強の人間12人と戦い、勝てば人類に永遠の平和を、負ければ人類を滅ぼすと言って去っていきました。11年後、神を倒す12人を育成するためにために建てられたゴットキル学園に入学し、そこで可愛い女の子達や頼もしい仲間達と一緒に成長していく異世界ハーレムファンタジーです…へ?」
俺が、長い長い、落語家もビックリな長い文を読み終わると同時に急に周りの世界が真っ暗になっていき俺は俺自身しか認識できなくなってしまった
そして、俺の全身を言語化できない嫌な感覚が襲った
暗い世界で、嫌な感覚を感じながら俺は何故か、みるみると若返っていき、数秒後には赤ん坊になっていて、嫌な感覚は収まった
意識は30代のおっさんなのに、体が赤ちゃんだとなんだか気持ち悪いな
薬を飲まされ、体が縮んでしまったサッカー大好き探偵少年はこんな感覚だったのだろうか?
まぁ、でも彼は高校生から小学一年生になったわけだし、30歳前半から一気に赤ん坊になった俺ほどではないか
俺がそんなくだらない事を考えていると、世界がだんだんと鮮明になっていった
「オギャ〜オギャ〜」
俺は気がつくとベットの上で寝かされていて、謎の2人の男と女がこちらを愛おしそうに見ている
ラノベ作家の俺は一瞬で気がついた
これは異世界転生というやつなのだ。と
そして俺は赤ん坊のボヤけてよく見えない視界を凝らし、俺の親と思われる2人を見た
「オギャ?!」
その2人は俺の書いた(異世界いせかいの神殺者ジャッチメントたち)の主人公の父親と母親で間違いなかった
俺はどうやら自分の書いたラノベの世界に主人公として転生してしまったようだ
俺は主役じゃないのか… メロンパン @panti
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