視えるもの
爆裂五郎
視えるもの
交番で見張りをしていると、小さな女の子がダンボール箱を抱えてやってきた。
「うちじゃ、飼っちゃダメって。むかし、ネコを飼ってて大変な思いをしたって」
どうやら、拾った猫を飼おうと思って、親に反対されたらしい。で、うちで面倒見てやってほしいと。
そうしてやりたいのはやまやまだけど、僕の一存じゃあなあ。でも保健所送りというのは可哀想だし。
そうこうしていると、先輩が巡回から帰ってきた。
「おいおい、どうしたんだダンボールなんか置いて」
かくかくしかじか。
「うーん、そうか。でもな、お嬢ちゃん。本当は、お巡りさんにこういうこと頼んじ ゃいけないんだ。みんながみんな同じことしたら、交番は猫カフェになっちまうよ。
だからな、もしこれから生き物に手を出すなら、最後まで責任を持たなきゃいけないよ。
誰かに頼っちゃダメだ。その人が本当に、大事にその子の面倒を見てくれるとは限らないからな」
何やら先輩が年端も行かない少女に説教している。班長にいつもいびられてるからって、みっともないなあ。
「でもまあ、今回は特別だ。うちに置いといてやるよ。皆にはナイショだからな?ゆびきりげんまんだ」
女の子はダンボール箱に顔を向けニッコリ笑い、僕たちにペコリとお辞儀をして帰って行った。
こんな勝手なことしちゃっていいのかなあ?また班長に大目玉を食らうぞきっと。
「まっ、大丈夫だろう多分。裏に雨風凌げるようこのダンボールで家作ってやって、
俺らで交代で見てやれば何とかなるだろう。あのおじんも、ああ見えて動物好きだからな。
いつもみたいに笑ってごまかしゃ協力してくれるよ。そういやお前さっき、しゃけ握り買ってたろ?あれやろうぜ」
なんか勝手に協力させられてるし。しょうがない、また先輩に付き合ってやるか。
でもなんかあのネコ、変なんだよなあ。
まだ小さいとはいえ、毛がほとんどないし。
おぎゃー、ってなくかなあ?ネコって。
視えるもの 爆裂五郎 @bi-rd
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