第15話 熱い死闘! 赤い悪魔は突然に!

 クロレオはなんとか岩の下から出てきた。

 股間を押さえながら、ジャンプして何かを戻そうとしている。

 ダメージこそ入ったが、まだ倒すには至っていない。

 流石聖竜騎士を名乗るだけはある。随分とタフね。


「流石4人を倒しただけはある……。私も甘すぎたようだ」


 額から汗を流しながらも、態度を崩さないクロレオ。

 大したプロ意識ね。こんな時でも礼儀を忘れないとは。

 育ちの良さが垣間見える一瞬だった。


「行くぞ、相棒よ! 我らが力を見せてやろう!」


 飛竜は再び羽を広げて、飛び始めた。

 ダメージを負ってはいるが、こちらも余裕がありそうだ。

 クロレオは改めて、岩を持ち上げて飛竜の側に置いた。


「食らうが良い! 我らの秘儀を!」


 飛竜は岩に向かって、炎を吐いた。

 岩は隕石の様に、炎を纏い始める。


「これぞ聖竜騎士奥義! 疑似メテオ!」


 クロレオが手を振り下ろすと、同時に岩がこちらに向かってくる。

 

「わわ! あんなの食らったら、一たまりもないですよ!」

「慌てないでメイ。私に策があるわ」


 私は拳を握りしめて、メテオを顔を向けた。


「トルネードサンダーマグナム!」


 私はケイに電気を纏わせて、思いっきり殴り飛ばした。

 ケイは真っすぐ、岩に飛んでいく。


「トルネード!」


 ケイは回転しながら、岩を貫通した。

 岩は空中で爆発して、私達は事なきを得る。


「よし! そのままクロレオを、攻撃よ!」


 その直後ケイは、動きを止めた。


「ごめ~ん。勢いが足りなかったよ」


 ケイはそのまま溶岩に向かって、落下した。

 超能力もあるし大丈夫だろう。私は特に心配していない。


「第2、3の攻撃が来るわよ! 構えなさい!」


 浮遊している岩は、まだ2つ残っている。

 飛竜は同じ様に、炎を吐く。

 岩が隕石の様に、猛スピードで私達に落下する。


「私に任せてください。魔法剣秘奥義!」


 フォルは呪文を唱えて、魔法剣を発動した。

 剣が水を纏い始める。


「スプラッシュソード!」


 フォルが剣を一振りすると、水の斬撃波が飛んでいく。

 斬撃波は岩を砕き、クロレオへ。


「ふん。下らん技だ!」


 槍を横に振って、斬撃波を粉砕するクロレオ。

 その時斬撃波の元となった、水が彼にかかった。


「熱ちち! 鎧に熱が伝わる! 何だこれ!?」

「熱湯」


 どうやら水ではなく、お湯だったようだ。

 鎧が熱をしみこませたせいで、クロレオは苦しみ始める。

 なんとか鎧を脱いで、半裸になる事でダメージを収めた。


「くっ……! だが空中に居る限り、貴様らの攻撃はもう当たらんぞ!」

「熱ちっぃ」


 格好つけているクロレオへ、ケイが飛んで来た。

 お尻に炎が点火されいてると、どうやら溶岩に落ちた熱さで飛び上がったようだ。

 飛竜に頭突きをして、その腹部を攻撃する。


「相棒! しっかりするのだ!」

 

 飛竜は炎を吐きながら、落下を始めた。

 目を瞑り、クロレオの言葉に反応しない。

 どうやら今の一撃で、気絶したようだった。


「ケイ! これを使いなさい!」


 私は物体精製で、ゴムの付いた木の棒をケイの前に作る。

 ケイはゴムを引っ張って、棒との間にクロレオ達を入れる。


「人間パチンコじゃぁ!」


 ゴムを掴む手後からを緩め、勢いよく飛び出すケイ。

 クロレオを蹴り飛ばしながら、壁へと飛んでいく。

 

「まだまだ! ロケットランチャー! 30連発!」


 私は」リボルバー式ロケットランチャを、精製した。

 込められらロケットが、クロレオに向かって飛んでいく。

 空中で大きな爆発をあげて、クロレオとケイは一緒に吹き飛ぶ。


「更にトルネードサンダーマグナム! 第二弾!」


 私は虹色に光る拳で、フォルを殴りつけた。

 フォルは回転しながら、クロレオへ飛んでいく。

 クロレオの鎧を、徐々に削っていく。


「鎧が……。鎧がぁ!」


 3人は同時に落下した。その場に土煙が発生する。

 私は扇風機で煙をどかして、状況を見た。

 そこには鎧が完全に壊れた、クロレオの姿がある。

 イチゴパンツを吐き、髭を生やしたオジサンだった。


「ここまで追い詰められたのは、初めてだぞ……」

「お、お前……。その鎧、それにパンツ……。まさか……!」


 ケイはクロレオの顔から下を見つめながら、絶句していた。


「伝説のアーサーだったのか……」

「違う! 全然違う! クロレオだっつっただろ!」


 クロレオは隠し持っていた短剣を、ケイに投げつけた。

 ケイは超能力で、軽く受け止める。


「そっちがその気なら、こっちもその気で行くわ!」


 私は第4の異能力、魔人召喚を使った。

 赤く羽を生やした魔人が、空中の魔方陣から現れる。


「赤い悪魔見参!」


 通称レッドファイーマー。小柄だが、強力な魔人だ。

 何せ幾人ものアーサーを、骨にして来たのだから。

 赤い悪魔は空中で滑空しながら、クロレオと向かい合っている。


「我が使い魔よ。その者を骨にしなさい!」


 赤い悪魔はクロレオに向けて、体当たりをした。

 不規則な動きで彼を翻弄していく。

 クロレオは動きに対応出来ず、攻撃が直撃する。


「何だコイツ? 滅茶苦茶強いぞ!」


 吹き飛ばされた拍子に、槍を落としたクロレオ。

 赤い悪魔はすぐさま槍を奪った。


「レッドアロー!」

「お前喋れるんかい!」


 突然声を上げた赤い悪魔に、メイがツッコミを入れる。

 赤い悪魔はクロレオの胸に、槍を突き刺した。


「グフゥ!」


 槍が突き刺さったクロレオは、地面に倒れ込む。

 すぐさま首元に近づく、赤い悪魔。

 クロレオが息しているのを、確認した。

 その後地面に降り立ち、彼を引きずり始める。


「レッドフォール!」


 そのまま虫の息なクロレオを、溶岩に投げ落とした。

 クロレオは白目をむいたまま、溶岩へと落下する。


「あらら。本当に骨になっちまった」


 溶岩に落ちて行くクロレオを見ながら、ケイが呟いた。

 確かに溶岩に堕ちれば、体が溶けて骨だけになるだろう。


「熱い!」

「そうだった! ここの溶岩そこまで熱がないから、飛び上がるだけだった!」


 お尻に火を付けながら、クロレオは目を覚ます。

 そのまま飛び上がり、地面に知りをこすりつけて火を消す。


「おのれ……。この上全裸にでもなったら、どうするつもりだ?」

「それは責任とって、逮捕するしかないな」

「逮捕され側だろうが!」


 これだけやっても、中々倒れない。

 相当タフな奴だ。クロレオ。中々侮れない敵ね……。


「仕方ない。ここは初心に帰りましょう!」


 私はこの世界に来たばかりの事を、思い出した。

 拳銃を精製して、ケイと共に構える。

 そう。これこそが本来の私達の戦い方だ。


「大人しく降伏をしろ。そうすれば命までは奪わないわ」

「誰が降伏などするか。騎士の誇りに賭けて、最後まで戦うぞ」

「最終警告のつもりだったのだけど、仕方ないわ」


 私は拳銃を発砲して、クロレオの手を撃ち抜いた。

 既に武器すら持っていない彼。

 尚も立ち上がろうとする姿には、私も思う所がある。


「無駄な事を……。見るが良い!」


 撃ち抜かれて穴が出来た、手の甲を見せるクロレオ。

 次の瞬間穴が塞がる。


「オートヒーリング。我が真なる秘奥義だ!」

「槍で貫かれても、死なないカラクリが分かったわ」


 タフなのは、体が自動で回復するからだったのね。

 先程までの攻撃も、全然堪えてないのだろう。


「貴方を倒すには、一撃で倒すしかないようね」

「ふっ……。そんな事が出来るとでも?」

「トラックでひき殺す」


 私はトラックを精製させて、ケイを運転席に座らせた。

 

「なにぃ!? 何だそのデカい、鉄の塊は!」

「過去何人もの転生者を葬って来た、最強兵器よ! 食らいなさい!」


 ケイはアクセルを踏み込んで、トラックを動かした。

 クロレオをひき殺そうと、全力で発進んする。


「なんの!」


 流石の根性のクロレオ。トラックにしがみついて、耐えた。

 ケイは気にせず、トラックを走らせる。


「お嬢様。脱出しますよ」

「うん。お願い」


 ケイが指を鳴らすと同時に、私達は外へテレポート。

 トラックは1人でに、動き始める。


「え? ちょっ……。どう言う事?」

「永遠の炎に沈みなさい」


 私はトラックの荷物を、撃ち抜いた。

 そこには大量のガソリンと、火薬が積まれている。

 一瞬でトラックを炎で包み込んだ。


「うおお! マズい! マズいぞ! この先には!」


 クロレオは地面に足を突いて、トラックを止めようとした。

 当然止まるはずもなく、無残にも足を引きずられる。

 彼が必死になるのも理解出来る。何故ならトラックの向かう先は……。


「燃料貯蔵庫事、爆破しなさい!」

「止めろ! 色んな意味で止めろ!」


 炎を纏ったトラックは、そのまま貯蔵庫へ。

 溜め込んでいたエネルギーを放出し、一気に爆発をあげる。

 大きな爆発と共に、トラックは跡形もなく消し飛んだ

 クロレオの姿もどこにもない。今度こそ倒したのだろう。


「きっと彼も異世界へ向かうのね」


 多くの転生者がそうであった様に。

 トラックに引き殺された者は、異世界に行く。

 それがこの世の理であり、真実だ。


「そんなわけがない」


 ケイがボソッと、呟いた。

 

「さあ、さっさと侵入するわよ。丁度良い穴も空いた事だし」


 爆破によって、城の一部が壊れた。

 これで門を破らなくても、城に入れそうだ。


「待っていなさい、レオ連合。決着をつけてやるわ!」

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