第8話 タワーとの決戦! お金の力で解決!

 ペラペラの紙が私達の前に、立ち塞がった。

 これが連合7人衆の1人……?


「貴方もしかして、真の姿があったり?」

「いや。これが真の姿だけど」


 7人衆って確か、連合の貴族ではなかったかしら?

 目の前の相手が上級貴族……?


「ふざけないで! 何で人様の上に紙が立っているのよ!」

「ククク。何も分かっていないようだな。連合では強い奴が、人の上に立てるのだ!」

「今までの敵の中で、1番弱そうな癖に……」


 紙は長方形に手足が付いただけの、ペラペラだ。

 こんなペラペラに負けるなど、あり得ないわ。


「馬鹿め! 俺は紙は紙でも、折り紙だ! チェンジ!」


 紙は空中に浮かびながら、眩い光を放った。

 私達は光に対して、目をつぶる。

 光が消えて視界を戻すと、そこには折り紙で出来たカニがいた。


「カニカニ! ペラペラ! 行くぞ!」

「所詮は紙! 燃やせばお終いよ!」


 私は火炎放射器を精製した。

 引き金を引き、炎で紙を燃やしていく。


「無駄だ! 俺は耐熱コーティングがしてあるのだ! でも熱い!」


 熱さは感じる様で、紙は天上から水を降らせた。

 炎が消化されて、ハサミを振りながら息を吹いている。


「ちなみに防水加工も出来ているぞ!」


 水に濡れても、直ぐに乾く紙。

 これは厄介ね。焼いても駄目。濡らしても駄目。


「どうやら貴方は切り刻む必要がありそうね」

「それは無理だね。貴様らには、俺に触れる事すら出来まい」

「やってみなきゃ分かんなわ! そうでしょ? ケイ!」


 私はケイを前に突き飛ばした。


「ほう、お前が俺の相手を?」

「どうせ技見せの為に、かませだよ……」


 ケイはやる気無さそうに、ダラダラと歩いた。

 紙はケイに向けて、ハサミをチョキチョキと動かす。


「面白い! 受けてみろ! ボンドで固めたハサミハンマー!」


 紙はカチカチになったハサミで、ケイを叩きつける。

 ケイは鈍い音共に、地面に突き刺さった。


「まだまだ! ギロチン挟み! 更に叩きつけ! からの踏みつけ攻撃!」


 紙は次々と攻撃を繰り出して、ケイを追い詰めていく。

 ケイは床に突き刺さって、身動きが取れない。

 紙の攻撃を回避できず、全ての技に直撃した。


「ケイさん! 大丈夫ですか!?」


 メイが心配そうに、ケイに駆け寄った。

 ケイは頭に出来たたんこぶを撫でながら、立ち上がる。


「痛っぇなぁ……」

「あれだけ凄そうな技を喰らって、その一言ぉ!?」


 ケイがやられるとは、相当の強敵だ……。

 私は拳を握りながら、紙を睨みつけた。


「よくもケイを……。食らいなさい! ぶん投げアタック!」


 私はグローブを装着して、ケイを持ち上げた。

 紙に向かって投げつけて、衝突させる。

 紙は衝撃でしわくちゃになった。


「おのれ……。折り紙は折られず、シワを付けられるのが、屈辱なのだぞ!」


 紙は元の姿に戻り、自分を伸ばし始めた。


「こうなったら。折り紙チェンジ!」


 再び眩い光を放つ紙。目を空けたら、そこには折り鶴が存在していた。

 小さく切り刻まれて、千羽ほど存在している。


「必殺! 千羽鶴アタック!」


 千羽の折り鶴は一斉に飛び始めた。

 口ばしでつつきながら、攻撃するつもりだ。


「そっちが千羽鶴ならこっちは……」


 私は物体精製を使った。背後にミサイルを作り出して、紙にロックオンする。

 ミサイルは噴射しながら、千羽鶴に向かっていく。

 

「チェンジ! 紙飛行機!」


 紙は千羽鶴から紙飛行機へ姿を変えた。

 飛行機はミサイルに特攻しながら、爆発していく。


「いくら倒しても無駄だぞ! 一羽でも残れば、俺は再生出来る!」


 私は次々とミサイルを発射するが、キリがない。

 このままでは先に私の体力が尽きるだろう。

 別に物体精製に体力は使わないだが。


「ならば物体精製!」

「何を使っても俺を倒す事は出来まい!」

「掃除機」

「!?」


 表情は見えなくても、動揺したのが分かった。

 私は巨大な掃除機を作り、持ち上げた。

 スイッチをオンにして、飛んでいる紙飛行機に向かっていく。


「悪霊退散!」

「ぎゃあ! 吸い込まれるぅ!」

「あ、紙だから風に弱いんですね……」


 紙は次々と掃除機に吸われていく。

 内部にはシュレッターが装備されており、体を粉砕していく。


「これを。ホイッと」


 私は掃除機を窓から投げ捨てて、爆発させた。

 耐熱コーティングをしていても、今のは効いたはずだ。

 煙が消えた先には、何も残っていなかった。


「……。1階上がるごとに、確実に弱くなっているような……」


 紙は木っ端みじんに吹き飛んだようだ。

 ベニレオとやらは倒した。後は人質を解放すれば、この町は救われる。


「ククク。これで勝ったつもりか?」

「なっ! ベニレオの声よ!」

「貴様らが倒したのは、俺の紙武者に過ぎない!」


 床が突如抜けた。私達は全員、落下していく。

 1階より下に落下して、地下室に落とされたようだ。

 体勢を立て直しながら、地下を観察する。

 するとそこには剣を持ったフードの人物が、立っていた。


「俺こそが、真のベニレオ。オブジェマスターだ!」


 フードを取ると、何の面白みもない男性が姿を現した。

 

「俺は無機物に命を吹き込み、操る事が出来る。こんな風にな!」


 ベニレオは岩を持ち、手を紫色に光らせた。

 光は岩の中へ入る。すると独りでに動き始めた。


「今までの敵が無機物だったのは、そう言う事ですか……」

「ここまで来た事は、褒めてやろう。だがこれを見ろ!」


 レバーを引き、壁を上昇させるベニレオ。

 そこには牢獄に入れられた、大勢の人が居た。

 どうやら彼らが、囚われた人質のようだ。


「一歩でも動いてみろ。牢獄に仕掛けた爆弾を、爆破するぞ!」

「くっ……。卑怯な!」


 私はショットガンを精製して、ベニレオに向けた。


「動くなっつっただろ!? なんで普通に構えてんだよ!」

「そりゃ動くわよ。これは駆け引きなのだから」


 私はショットガンを発射して、ベニレオを撃った。

 ベニレオは倒れた拍子に、爆弾のスイッチらしきものを落とす。

 すぐさまケイが拾い上げて、握り潰した。


「ならば直接傷つけてやる!」


 剣を構えて、牢獄から1人連れ出すベニレオ。

 首筋に歯を向けて、ニヤリと笑った。


「さあどうする? 動けばコイツの命はないぞ!」

「ならば後ろから発射!」


 私は背後に銃を作り、ベニレオの背中に発砲した。

 肩に当たったらしく、ベニレオは人質を手放した。


「さあ、ケイ! 早く皆を安全な所へ!」

「通り抜けワープ!」


 ケイは渦を発生させて、人質を中に放り込んだ。

 渦の外はきっと、村の中に繋がっているのだろう。

 これで人質は解放した。後はベニレオを倒すだけだ。


「こうなったら切り札だ!」


 ベニレオはタワーの壁に、手を振れた。

 赤いエネルギーを送り込み、命を吹き込もうとしている。


「このタワーを操って、貴様らを倒してやる!」


 タワー全体が揺れ始めた。


「総員退避! 退避よ!」


 私達はケイの作った、渦に飛びこんだ。

 渦の中に巻き込まれて、その奥へ入り込んでいく。

 渦の向こう側に着くと、なぜか地面が無かった。

 私達は水の中に落下した。


「何故こんな所に出口を!?」

「悪い。村まで続かなかった」


 ケイの超能力にも範囲があるようだ。

 仕方なく安全な水の上に、繋げたようだった。


「見てください! タワーが!」


 フォルが指さした方向を見ると、タワーに手足が付いていた。

 タワーは巨体を生かして、徐々に村へ進軍する。


「ハハハ! このまま全て踏みつぶしてやる!」

「そうはさせないわ! 防衛軍出動!」


 私は戦車を精製して、村の前に配置した。

 戦車は砲台をタワーに向けて、砲撃を開始する。


「ちょっと待て! 誰が操っているんだ!?」

「誰って……。1階に居たアンタの部下だけど?」


 タワー1階には、大量のレオ連合が存在した。

 彼らが戦車を操縦して、タワーに攻撃している。


「何故貴様らに従っている!?」

「買収したのよ! お金の力で!」


 もっといい給料を出すからと言ったら、みんな快く引き受けた。

 私の家は裕福なので、いくらでも給料を出せる。

 この村を貰えば更に税金を使って、家の発展にも繋がるわ。


「全軍、一斉攻撃開始!」

「ヘイ! 親ビン!」


 私の指示に従って、戦車は一斉に同時攻撃をした。


「ぎゃあ! 俺の従っていた時より、活き活きしている!」

「今だ! 物体精製! ロケットのエンジン!」


 私はロケットのエンジンだけを、精製した。

 ケイが即座にタワーの、下部に装着する。

 

「エンジン点火!」


 エンジンが噴射して、タワーをロケットの様に飛ばしていく。

 はるか上空に向けて、飛び立つタワー。

 でも重すぎて、エンジンの出力が足りなかった。

 逆方向へ振り返り、そのまま山に向かって落下する。


 タワーは山に突き刺さり、手足をばたばたさせた。

 身動きを封じた所で、私達は一斉に砲台を向ける。


「今よ! 下部に向けて、一斉放射!」


 戦車を使ってタワーの下部を、攻撃する。

 反対向きになっていたタワーは、バランスを大きく崩した。

 そのまま倒れながら、爆発を発生させる。


「ぎゃあああ!」


 ベニレオはタワーと命運を共にしたのだろう。

 最後に悲鳴を上げながら、爆発に飲み込まれていく。


「やっと終わったわ……」


 長かったタワーの戦いも、ようやく終わりを告げた。

 これでこの町はレオ連合から救われただろう。

 早く町長と交渉して、土地の権利書を貰わなければ。


「レオ連合。私が居る限り、絶対に好き勝手させないわ!」

「私達が1番好き勝手、していますって……」

「私が先に、世界征服を成し遂げてやるわ!」


 もっと領土を広げて、私が世界の主になってやる!

 レオ連合などに渡してたまるものか。

 絶対に先を越されないようにしなければ!

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