第7話 決戦! ダブルブレイター! 工作は自由研究で!

 私達はタワーの4階へと向かった。

 ここを超えれば、いよいよ最上階。

 最後の幹部がここで待ち受けているはずだ。


「ダブルブレイダー。噂には聞いた事があります」


 戦士に詳しいフォル。これから戦う相手を知っているようだ。

 

「2本の刃を持ち、全て者を切り裂く戦士だそうです」

「2本の刃……。きっと二刀流の剣士ですよ」


 メイの言う通りだ。2本の刃を自在に操る戦士。

 かなりの強敵に違いない。階段を上り切り、4階に辿り着く。

 やはり今回も敵は姿を見せない。

 私達は円形となっている足場に身を乗り出した。


「バトルロワイアルフィールド、展開」


 上から声が聞こえてきた。

 するとすると床が、正方形へ変形する

 一部面積は穴となり、引き返す事が出来なくなった。


「良くここまで登って来たようだ。だがこの僕には勝てないよ」

「何処よ!? 姿を見せなさい!」


 私が叫ぶと天上から落下する存在があった。

 それは2本の刃をクロスさせながら、地面に降り立つ。


「その首を切り裂いてやるよ。このハサミがね!」


 それは人と同じサイズくらいの、大きなハサミだった。

 チョキチョキ言わせながら、空中を飛んでいる。


「ダブルブレイダーってそう言う事!? 確かに2本の刃があるけど!」


 くっ……。ここに来て、2連続で無機物が相手ですって……。

 これは相当手強い相手に、違いないわ。

 

「ここでは僕のルールで、戦ってもらうよ」

「どんなルールかしら?」

「駒落とし。互いに駒を1つずつ弾いて、落とし合う」


 ハサミは刃を天上に向けた。刃は光を放つ。

 すると天上から消しゴムと鉛筆、のりが落ちてきた。

 陣形を組みながら、ハサミを守るように立ち塞がる。


「落ちた駒は脱落。全部の駒を失った方が負けだ」

「小学生が昼休みに遊んでいたあれですか!?」


 どうやら消しゴム落としで、対決するようだ。

 消しゴムたちは私達より大きく、このままではハサミに攻撃が届かない。

 あちらのルールに則って、戦うしかないようだ。

 それにしても、敵側の配置……。


「まるで将棋……。いやほぼ将棋だな」


 ケイが私の気持ちを代弁してくれた。

 敵は将棋の初期配置と全く同じ陣形を組んでいる。

 歩兵が邪魔で、強そうなやつに攻撃が届かないわ。


「あちらがハサミなら、こっちは……。物体精製!」


 私は物体精製で、敵と同じ陣形を作った。


「戦車で対抗よ!」

「どう言う理屈ですか!?」

「良いだろう。では細かいルールを説明するぞ」

「良いの!? こんな将棋見た事ないんですけど!」


 ルールはこうだ。私達は戦車に乗り込み、1ターンに1人だけ行動出来る。

 1人で運転できる戦車に、改造しておいた。

 対して敵は消しゴムを弾き、飛んだ位置まで移動出来る。

 互いに落とし合う事で、最後まで生き残った方が勝ち。


「僕から先行だ。食らえ! 消しゴムマグナム!」


 ハサミは消しゴムを操り、戦車に向けて弾いた。

 消しゴムは回転しながら、突進してくる。

 そのまま戦車に接触。音もせずに弾かれて、落下していく。


「バカな……。消しゴムマグナムが破られるなんて……」

「当たり前! 質量の差!」


 今度はこちらのターンだ。ケイが戦車に乗り込んだ。

 こちらは弾かずに、真っ直ぐ操って攻撃する。


「行くぞ! 前進!」


 ケイは戦車を走らせる。

 速度はイマイチだが、重量で消しゴムを落とそうとした。


「ククク。これでも食らうんだね! 消える魔球!」


 突如戦車前方の床が、抜け落ちた。

 ケイはギリギリの所で止まり、落下を防止する。


「残念だったね! 君の行動はもう終わりだ!」

「くっ……。卑怯な! だが俺のバトルフェイズは終了していない!」


 ケイは砲弾を発砲して、消しゴムに向けた。

 砲弾は爆発して、消しゴムの陣形を崩していく。

 そのうち何体が、吹き飛ばされて落下していく。


「あの人よく、敵に向かって卑怯とか言えますね!」


 こちらのターンは終了した。再び敵フェイズへ。

 ハサミは後ろでチョキチョキ言わせながら、消しゴムを光らせた。


「見せてあげるよ。僕の必殺技を!」


 ハサミは更に、鉛筆二つを操り始めた。

 消しゴムの左右に鉛筆を、合体させる。


「こ、これは……。僕ですら1度はやった魔改造!」

「しかもただの鉛筆じゃないぞ! ペンシルロケットだ!」


 鉛筆は背面から噴射しながら、勢いよく飛んだ。

 ケイの乗った戦車に向かって、前進していく!


「アハハ! このまま吹き飛んでしまえ!」

「消える魔球」


 消しゴムの前方に下り坂が出現した。

 勢いよく坂道に落下して、奈落へ。


「くっ! 貴様も魔球使いだったか!」

「何故敵の仕掛けを、扱えるのですか……」


 次は私達のターン。私が戦車に乗り込んむ。

 先程の様に不意打ちの、砲撃はもう通用しないはず。

 普通に動かしては防がれるだろう。


「そう言えば、何で私達アイツのルールに従っているのかしら?」

「今更何を言っているんですか!?」

「止めたわ。私は私のルールで戦う事にした」


 私は物体精製で、電車を出現させた。

 駒を増やしてはいけないなどと、聞いてない。

 そもそも私達はハサミに付き合う道理などないわ。


「あっちが魔改造なら、こっちも魔改造で行きましょう!」


 ケイが即座に物体接着を使用する。

 電車の左右に戦車を付ける。

 私が更に精製したロケットも、装着していく。

 

「魔改造の度合いが違い過ぎる!」

「行くわよ! ロケット点火!」


 私はロケットを発射して、敵陣に突っ込んだ。

 電車の巨体は消える魔球の影響を受けない。

 左右の戦車から砲撃をしながら、私は消しゴムを吹き飛ばしていく。


「ぐぉ! ストライクぅ!」


 消しゴムは全て吹き飛び、ハサミも飛んでいく。

 全ての消しゴムが落下して、ハサミは駒を失った。


「でも残念! 僕は飛べるから落ちなんだよ~ん!」


 ハサミだけは空中で制止して、穴に落下しなかった。

 再びフィールドに戻り、チョキチョキ言わせている。


「この勝負は勝ち戦だったのさ! だって僕は絶対に落ちないもの!」

「くっ……。卑怯者! 正々堂々と戦いなさい!」

「ニーナ様が良く言えますね……」


 ハサミは絶対に落下しない。ならばこれは負け戦だ。

 どうやったって、敵を倒す事は出来ない。


「卑怯者には鉄槌を……。ゴーレム安田さんの破片を食らいなさい!」


 私は先ほど回収した、安田さんの体を投げつけた。

 ハサミはチョキ。石には勝てないはずだ。

 だがハサミは石を見事に、挟み込んだ。


「アハハ! じゃんけんと現実は違うのさ!」

「かかったわね! 安田さんの体には、高純度の酸素を含んでおいたわ!」

「なんだと!? 刃の部分が酸化していくぅ!」


 ハサミは刃を広げて、安田さんの胴体を離そうとした。

 でも残念。安田さんンの胴体には鳥もちが付いている。

 しっかりへばりついて、ハサミを酸化させていく。


「僕の命がぁ! 刃が錆びていく!」

「更に! U字磁石精製!」


 私は磁石をハサミに向かって、投げ飛ばした。

 ハサミは磁力に引っ張られて、身動きを封じられる。


「ああ! 金属部分が引っ張られる!」

「終わりだな。へし折ってやる!」


 ケイが超能力を使用して、ハサミの刃に圧をかけた。

 

「くっ……。強度が下がっている……。このままでは……」


 ハサミの刃は、ボキッと折れた。

 絶叫を上げながら、その場で転がるハサミ。


「終わりだな。さっさと次の階への道を出せ」

「アハハ! これで勝ったつもりとは言い気なものだ!」


 ハサミは上空から、再び文房具を出現させた。

 鉛筆、消しゴム、のり、シャーペンの芯が出現する。


「見せてやる! これが僕の真の姿! 超合体!」


 ハサミは磁石を付けたまま、消しゴムの上に乗っかった。

 左右に鉛筆を付けて、その先端に蓋の開いたのりをくっつける。

 更に消しゴムの前方に、芯を合体させた。


「ならばこちらは、先程の電車で対抗よ!」


 私は電車を動かして、ハサミと向かい合った。

 再びロケットに点火して、ハサミに向けて突撃する。

 向こうもペンシルロケットを点火して、私に突進。


「さあ、砲台を食らいなさい!」


 私は左右の砲台から、砲弾を発射した。


「無駄だ! シャーペンの芯! 発射!」


 消しゴムから芯が分離して、発射される。

 砲台に直撃して、相殺された。


「ならば普通に突進!」


 私は勢いで消しゴムを落とそうとした。

 

「引っかかったな! のりで接着!」


 消しゴムは電車に引っ付いた。

 かなり接着力の高いのりのようだ。

 列車が走っても、全然取れる気配がない。


「アハハ! そのまま勢いに乗って、自滅しちゃえ!」

「普通に飛び降りるけど?」


 私は戦車から飛び降りて、地面に着地した。


「しまった! その手があったか!」

「アイツバカなんですか……」


 列車はハサミを接着したまま、壁に向かって突進した。

 タワーの外壁を突き破りながら、外に飛び出していく。


「さらば!」


 私は自爆スイッチを押して、電車を爆破した。

 

「ぎゃあああ!」


 悲鳴と共に爆発音が聞こえて来る。

 上手く爆発したようで、タワーに振動が伝わった。

 床が元の円形に戻り、次の階への道が出現する。


「さてと、次に進みましょうか」

「なんだかんだで、アイツが一番雑魚でしたね」


 私達は階段を上って、最上階へ向かった。

 相変わらず同じような円形の部屋だ。

 今度は最初から、ローブを着た人物が立っている。


「ここまで辿り着けるものが、存在したとはな……」

「貴方が司令官ね?」

「そうだ。レオ連合7人衆、ベニレオとは俺の事だ」


 ローブで身を隠した、謎の存在。

 凄いオーラの様なもの感じる……。

 こいつは今までの敵とは更に異質な様な気がした。


「俺はカミの手の使い手と呼ばれている」

「カミの手……!」

「ここまで来た褒美だ。見せてやろう! 俺の姿を!」


 ローブを取ったベニレオは、真の姿を見せた。

 私達はその姿を見て、驚愕した。

 ベニレオは体を前後に揺らしながら、風にあおられている。


「ペラ、ペラ。どうだこの姿? 美しいだろう」

「……」

「カミはカミでも、紙だったぁ!」

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