第6話 新キャラは突然に現れる!

 タワーの2階まで登った私達。

 1階と変わらず円形上の地形が、広がっている。

 2階からはモヒカンより強い奴らが居る。

 気を引き締めて行かないと……。


 敵の姿が見えない。私達は警戒しながら、周囲を捜索した。

 すると部屋の中に、小さな影見える。


「ワン、ワン、ワン、ワンワンワン!」

「あ! ワンちゃん!」


 一匹の犬が、吠えているようだ。

 メイに近寄りながら、『グルル』と威嚇している。


「何処からか迷い込んだのかな? ほらほら、怖くないよ!」


 メイが両手を広げながら、何もっ持っていない事をアピール。

 犬は警戒しながらも、メイに近づく。


「ここは危ないから、外に居なよ」

「クゥン……。引っかかったな馬鹿め!」


 犬はメイの首筋に噛みついた。


「きゃあ! コイツ敵だった!」


 メイは犬を振りほどきながら、首筋を押さえる。

 出血は酷くないが、歯型が出来ている。


「俺は連合タワー、第2の刺客。パプリカだ!」


 パプリカと名乗る犬は、4足歩行のままバックステップ。

 私達から距離を取ながら、尻尾を立てた。


「俺の牙には毒がある! 3分で生命を殺す程の猛毒だ!」

「何ですって!?」

「解毒する方法はただ1つ! 俺を倒す事だ!」


 メイがその場で膝をつきいた。

 過呼吸になりながら、胸を押さえている。


「メイ! しっかりしなさい!」

「ニーナ様……。ごめんなさい……。油断しました!」

「くっ! 物体精製! 何でもこんにゃく!」


 説明しよう!  何でもこんにゃくとはどんな症状も直す魔法の薬だ。

 どう言う成分かは知らないが、なんだかんだで全てを治す。

 私はこんにゃくを千切って、メイに近づけた。


「これで解毒を!」

「うぅ……。お嬢様……。アイツを倒さないと、治らないって……」


 私はこんにゃくを、メイの顔面に叩きつけた。

 メイは頬をへこませながら、軽く吹っ飛ぶ。

 

「ええ!? 食べさせるんじゃないの!?」


 説明しよう。何でもこんにゃくは、肌に触れさせる事で、解毒するのだ。

 食べても良いし、煮ても良い。

 意識がない状態でも、解毒できる優れものなのだ。


「あ、治ってる!」

「なにぃ!? 俺の毒が……。そんな得体の知れないこんにゃくに!?」


 流石こんにゃくだ。奴の毒さえも解毒する。

 私は拳を握りながら、パプリカの方へ振り向いた。


「良くもメイを……! 絶対に許さない!」

「ふん! 俺の武器は毒だけじゃないぜ!」


 雄叫びを上げなら、パプリカは高速で動き始めた。

 私達の肉眼でも捉えられないほど、素早い動きだ。

 何と言う素早さだ……。全く音が聞こえた時は既にその場にいない……。


「フハハ! これで貴様らは、俺を攻撃出来まい!」

「仕方ありませんね……。食事にしましょう」


 私はキッチンを精製して、食材を用意した。

 ケイがコックの恰好をしながら、フライパンに手をかける。


「パプリカさんも食事どうですか?」

「ふん! その手には乗らん! 俺の動きを食事で止める気……」


 ケイがフライパンで何かを痛め始めると、私達の嗅覚を何かが刺激する。

 物凄く臭い。これは間違いない! ニンニクよ!


「うぎゃあ! 臭ぇ!」

「犬の嗅覚は人の何千倍だからな。このガーリックソースは効くだろう!」


 パプリカはその場で寝転び、体を転ばせた。

 よほど苦しいのか、鼻を押さえながら、息を吐いている。

 動きが止まった。今がチャンスだ!


「食らいなさい。私の第4の異能。魔人召喚!」


 私が手を合わせると、背後に黒色の巨人が出現した。

 非常に筋肉質の巨人であり、マッチョポーズをとっている。


「あ……。ああ……! 何か凄いの出てきたぁ!」


 パプリカは魔人に畏怖を抱いたようだ。

 後ずさりをしながら、まだ鼻を押さえている。


「食らえ。魔人の鉄槌! キック!」


 巨人は足を大きく動かして、パプリカを蹴り飛ばした。

 パプリカは大きく吹き飛びながら、壁にめり込んだ。


「ぎゃあ! 結局犬は、蹴り飛ばされる運命なのか……」

「更に魔人アロー!」


 背後の巨人は巨大な槍を、出現させた。

 槍をパプリカに投げ飛ばして、体を貫通させる。

 パプリカは槍が突き刺さって、壁のオブジェクトとなった。


「毒を以て毒を制す」

「何処が!? 1の毒に対して100倍の毒で返しましたよ!」


 ケイがパプリカに近づいて、体を軽く叩いた。

 パプリカは僅かにピクリと、動き出した。


「まだ息がある……」


 ケイは槍を引き抜いて、パプリカを抱えた。

 

「トドメじゃあ! ケイフォール!」


 そのまま窓からパプリカを投げ飛ばした。


「ええ!? 助けるんじゃないんですか!?」

「敵に情けはいらない。やるかやられるかの世界だ」


 その通りだ。私達はそんな世界で、ずっと生き続けてきたのだ。

 表社会では生きられない私達は、犯罪に手を染めた。

 敵に容赦は不要。同情できる人以外は。


「皆さん。3階への階段が出現しましたよ」


 フォルが指さした方向に、階段が出来た。

 どうやら敵の幹部を倒したら、扉が開く仕組みのようだ。

 私達は3階に登り、次の敵に用意した。


「また同じ様な部屋ですね。敵の姿も見えないし」


 ケイは警戒しながら、拳銃を構えた。

 先程油断したばかりのメイも、気を引き締めている。

 今度はどんな敵が居るのやら。


「今度は影も形もありませんね。何処にいるのでしょう?」


 ゴーレム安田さんが、周囲を見渡しながら敵を探した。


「……。誰ぇ!? 何ですかこの石の塊は!?」


 メイは初めてゴーレムを見る様で、驚いていた。

 ゴーレムは石に手足の付いた存在だ。


「ゴーレム安田さんよ。どっからどう見ても、ゴーレム安田さんよ」

「いや、さっきのシーンまで、こんな人?居なかったでしょ!」

「そんな! 酷いわメイちゃん! 私とあなたはその程度の関係だったの!?」


 ゴーレム安田さんは、膝をついて鳴き始めてしまった。


「あ~あ、泣かした」

「泣かしたじゃありません! どう見てもそいつが、この階の敵じゃないですか!」

「酷いわ! 敵だなんて! 10年前に契りをかわした仲じゃない!」

「そんな記憶ないんですけどぉ!」


 ゴーレム安田さんは、目を光らせながら立ち上がった。


「その通り! 実は私は敵だったのだ!」

「何ですって!?」

「なにに驚いているんですか!?」


 信じられない……。あのゴーレム安田さんが、私達を騙していたなんて……。

 安田さんは両手を広げなら、私達の前に立ち塞がった。


「ゴーレムとは言え、所詮は岩! ミサイルを食らいなさい!」


 私はミサイルを発射した。ミサイルは安田さんの体を粉砕していく。

 石で出来た体は、木端微塵に吹き飛んだ。


「フハハ! 甘いぞ!」


 砕け散った岩が、独りでに動き出した。

 空中で融合すると、再び安田さんの姿に戻る。


「俺は不死身だ!」


 何と言う事! 再生されるのでは、いくら攻撃しても意味がない……。

 不死身の敵にどうやって、戦えば良いんだろうか?


「最近一発目、効きませんね」


 ケイが飴玉を舐めながら、座っていた。


「ケイ! 真面目にやりなさい!」


 私はケイを大砲で、発射した。

 

「仕方ありません。僕も第4の異能を見せてやる」


 ケイは安田さんの体に、しがみついた。


「チェンジハンド! ドリル!」


 ケイが叫ぶと彼の腕に、ドリルが装着された。

 完全に腕と融合しており、どうやら装備と胴体を一体化させる技のようだ。


「削る」

「ぎゃああ! 不死身だけど痛い!」

「肉体的に死なないんだろ? なら精神的にやるしかねぇなぁ?」


 ケイはゆっくりと安田さんの体を、砕いていく。

 体は再生するが、痛みが残る。

 安田さんはケイを振りほどこうと、必死で暴れ始めた。


「物体精製! 投石器!」


 私は砕けた安田さんの腕を、投石器に乗せた。

 そのまま窓の外まで、腕を投げ飛ばしていく。


「みんな、何か忘れていないかしら?」

「なんですか?」


 メイがきょとんとしながら、聞き出す。


「1階に置いてきた車」


 ケイは超能力を使って、1階の車を持ち上げた。

 そのまま3階まで貫通させて、持ってくる。

 

「腕代わりにあげる」


 ケイは安田さんに、車を投げつけた。

 車は安田さんの胴体に、突き刺さる。

 私はショットガンで、車を撃ち抜く。

 安田さんはもう片方の腕も、粉々に砕けた。


「おのれ……。こうなったら! 転がる!」


 安田さんは丸まりながら、私達に向かって転がりだした。

 その巨体で私達を踏みつける気だろう。


「そんな攻撃! 受け止めてやる!」


 ケイが超能力を使って、安田さんを受け止めた。

 

「物体精製! うすと餅!」


 ケイは私が出したうすに向かって、安田さんを投げつけた。

 餅が良い感じ日広がり、私は手を添えて形を整える。


「はい! 討って伸ばして! 討って伸ばして!」

「叩きつけて!」


 ケイは最後にうすに向けて、安田さんを叩きつけた。

 安田さんはうすにハマり、もがき始める。


「も、餅が絡まって抜けない」

「餅は餅でも、鳥もちだもの」


 私は特製の手袋で、餅がつかないようにしていた。

 安田さんはうすと一体化しながら、動き始める。

 うすに振動が伝わった瞬間。大きな爆発が発生する。


「だから何で爆破するんですか!?」


 安田さんは再び粉々に砕け散った。

 今度は再生しない様に、トドメを刺す。


「食らいなさい! 超必殺! 接着剤!」


 私は安田さんの破片に、接着剤を塗った。

 安田さんは地面と接着されて、再生が出来なくなる。


「うおお! 動けない!」


 一体だけ妙に動く欠片があった。

 私は直ぐにピンっときた。


「ははあん。さては貴方が本体ね!」

「しまった!」


 私はハンマーを精製して、安田さんに近づいた。


「くっ……。私を倒した所で、いい気にならない事ね。上階にはタワー最強幹部、ダブルブレイダーが居る!」


 私は本体にハンマーを振り下ろした。

 本体が跡形もなく崩れて、安田さんは意識を失う。


「行きましょう。どんな敵が相手でも、私達は立ち止まれないの」


 私は出現した階段を上り始めた。

 途中で背後を振り返る。安田さんとの思い出がよみがえって来る。


「結局誰だったんだろうか?」

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