第4話 究極上級モンスター、マッチョスとの戦い!

 ゴリマッチョの猫、マッチョスと戦い続ける私達。

 マッチョスは圧倒的力で、一瞬にして島を粉砕した。

 私は戦いの初心者だけど、それでも分かる。

 こいつは強い。別格の強さを持っている。


「よう。人間の少女ばかり狙っているのはアンタか? もしかしてロリコン?」


 ケイが恐怖心を隠しながら、マッチョスを挑発する。

 マッチョスはすごい剣幕で彼を睨みながら、拳を握った。


「その通りだ!」

「まさかの的を得ていたぁ!」


 マッチョスは両手を広げた。


「私はロリコンの為の、ロリコン帝国を作る。その為にロリを捕えている!」

「思ったよりしょうもない理由だったぁ!」


 メイが一々煩い反応をするが、全員無視する。

 少女達はどこかに連れていかれ、囚われているようだ。


「欲望の為に人の自由を奪うとは……。許せん!」


 私はショットガンを発砲。拡散した弾がマッチョスに近づく。

 マッチョスは股間の尻尾を使って、弾を全て撃ち落とした。


「なんですって!?」

「無駄だ。私の尻尾は鋼鉄の如き堅さに鍛えている」


 尻尾を伸ばして、鞭のように振るマッチョス。

 私達はしゃがみながら、尻尾攻撃を回避する。


「何か生理的に触りたくないんですけど!」


 尻尾は股間の前方についている。メイの気持ちもよく分かる。

 そこは禁句の聖域。私達ではこの攻撃に太刀打ちできない!


「残念だったな! 僕に生理攻撃は無効だ!」


 ケイは尻尾を受け止めた。ハサミを取り出して、尻尾を挟み込む。

 

「うぎゃあ! 痛い! 止めろ! 弱点、急所、殴っちゃやーよ!」


 尻尾を動かして、ケイを振り解くマッチョス。

 私には理解できないが、相当痛いのだろう。


「ククク……。時間をかけてると貴様らが不利になるぞ」


 尻尾を抑えながら、マッチョスは涙目になっていた。


「この霧は我が霊力で造ったもの。貴様らの生命力を徐々に奪い取る」


 くっ! この霧は作為的に作られたものだったのね!

 しかも厄介な能力。時間をかければ私達の、生命力が失われていく。


「物体精製! でっかい扇風機!」

「ニーナ様……。そんなのもので……」


 私は海の上に、太陽を隠す程の扇風機を作り上げた。

 落下の衝撃で波が発生し、船が僅かに揺れる。


「デカぁ! 規格外にも程がありますよ!」

「スイッチオン!」


 私は扇風機を起動させて、風を吹かせた。

 強風が吹き、一瞬で紫の霧を晴らしていく。


「なんだ!? 何だこの風は!?」


 霧が晴れた事で、私達の生命力は元に戻る。

 例え新しい霧が発生しても、強風で吹き飛ばされる。


「って! ニーナ様! これでは我々も吹き飛ばされてしまいます!」

「大丈夫よ。鋼鉄製の靴に履き替えておいたから」

「いつもの間にぃ! って、私のも変わっている!」


 強風で吹き飛ばされない様に、重たい靴に履き替えていた私達。

 マッチョスだけが強風で飛ばされ、船の端まで追いやられる。


「あ、船に碇を鎮めるのを忘れていた」

「え……?」


 うっかりしていた私は、船も吹き飛ばした。

 ボロボロの船は強風に耐える事が出来ず、飛ばされていく。

 更に私が灯した炎を強くさせながら、何処かの島に直進。


「あれは我が帝国!? うおお! せっかく作った場所を、壊されてたまるかぁ!」


 敵のアジトとなっている、島のようだった。

 マッチョスは船を押さえつけながら、進行を遅らせる。

 そこへ強風に煽られたヘリが、落下してきた。

 ヘリはマッチョスの頭にぶつかり、その場で爆発。


 マッチョスを海に落とした。

 私達は強風に飛ばされて、船ごと島に着陸。

 何やら怪しい建物に突っ込んだ。


「みんな! 無事かしら?」

「1ミリたりとも無事な要素がありません……」


 船はボロボロになりながら、私達は無事島に辿り着いた。

 既に扇風機の影響を受けなくなっている。

 船から降りて建物を見ると、そこには牢獄に繋がっていた。

 囚われたであろう少女達が、死んだ目で私達を見つめる。


 みんな10代くらいの若さだ。それ未満の少女もいる。

 あのロリコンめ……。こんな幼き少女にトラウマを押し付けるとは……。


「助けに来たわ。直ぐにここから脱出しましょう」

「おうちに帰れるの?」

「えぇ。お姉さんたちに任せな……。私0歳でしたわ」


 精神年齢は17歳なので、忘れていた。

 私もロリと呼んで良い年ごろだった事を。

 

 私達は少女を連れて、海辺の方へ向かった。

 海を渡る必要があるが、ヘリは壊れている。

 どうやって脱出したらいいものか……。


「貴様ら! 良くもおかずを!」

「ぎゃあ! 変態さんが追いかけてきた!」


 少女達は悲鳴を上げながら、目を逸らした。

 そう言われてみれば、確かに変態だ。


「逃げられるくらいなら、殺しやる!」


 パンツからスイッチを取り出す化け猫。

 器用に尻尾を使いながら、私達に突きつけた。


「島が吹き飛ぶ程の爆弾がセットしてある! 一歩でも動けば、島を爆破するぞ!」

「スイッチを押してみなさい! この対戦車ライフルで貴様を撃つ!」


 私はライフルを構えて、引き金を引いた。

 鋼鉄をも打ち砕く弾丸が、マッチョスの尻尾を引きちぎった。

 落下するスイッチを、ケイが回収する。


「まだ押してないのに、撃っちゃった!」

「そりゃ撃つわよ。危険だもの」

「己……。俺様の大事な尻尾を……。許さん!」


 マッチョスは付近の島を、霊力で浮かばせた。

 そのまま体を浮かせて、左右に島を置く。


「はいはい。それもう見た」


 私は適当にミサイルを飛ばして、島を破壊した。

 物体精製で8tの鉄球、マッチョスの上に出現させる。

 鉄球はマッチョスの体に直撃しながら、落下した。


「ぐっ……。こんな重りなど、我が霊力で……」


 ケイがマッチョスに近づき、ボルトを空けた。

 そのまま瓶の中の液体を、マッチョスにかける。


「な、何ですかこれ?」

「アルコール度数95%の酒」

「ほぼアルコールじゃねえか!」


 酒をぶっかけた後に、マッチに火をつけるケイ。

 マッチをマッチョスに投げつけて、アルコールに引火させる。


「ぎゃあ! 更に鉄球に熱が伝わって更にぎゃあ!」


 もがき苦しみながらも、鉄球を退けるマッチョス。

 流石に強敵だ。こいつはかなり強い。


「我が霊力の恐ろしさを思い知れ!」


 再び空中に飛び上がり、力を籠めるマッチョス。

 すると島全体が紫色に光、揺れが発生した。

 私達は揺れに足元を取られて、身動きを封じられる。


「こうなれば、この島ごと貴様らを沈めてくれる!」

「いや、沈むのはお前だけだ」


 いつの間にか背後に周っていたケイも、空中に浮かんでいた。


「え? お前飛べるの!?」

「そりゃ飛べるよ。超能力者ですから!」


 ケイは両手を組みながら、マッチョスを地面にたたきつけた。

 揺れが治まり、私達は海に向かって駆け出す。

 マッチョスは更に抵抗するべく、再び起き上がろうとした。


「太陽の光、33万倍を喰らえ!」


 ケイは両手を上げた。その間から、ガラスの様なものが生成される。

 太陽光が集まり、マッチョスを照らしていく。

 マッチョスは煙を上げながら、苦しみ始めた。


「ぎゃあ! ゴーストだから、更にぎゃあ!」

「アイツ一応ゴースト系なんですね……」


 マッチョスが怯んだ。チャンスは今しかない。

 私達は脱出に使えそうなものがないか、周囲を捜索した。


「あ! ボートが無事だった!」

「役にたったぁ! あの意味不ボートが役にたちましたよ!」


 私達はボートに乗り込み、発進させた。

 ケイは瞬間移動が出来るので、放っておいても大丈夫だろう。

 そう思いながらも、私は不安になり背後を振り向いた。

 マッチョスが鬼気迫る表情で、私達を睨んでいる。


「逃がすか! そんなボート……」


 マッチョスが霊力を込めようとした時。

 その背後でカチッと言う音が聞こえてきた。

 マッチョスは額に汗を浮かべながら、背後を振り向く。


「い、今カチッて……」

「ああ。爆弾のスイッチだけど?」


 ケイは先ほど回収した、スイッチを押したようだ。

 島から大きな音が聞こえて来る。


「離れましょう!」


 私は全速力で、ボートを動かした。

 背後を見つめると、島は大きな音と共に爆発。

 跡形もなく消し飛んだようだ。


「随分奇麗に吹き飛びましたね」

「ええ。もうケイさんが当たり前のように、隣にいても驚きません」


 マッチョスは島と共に、吹き飛んだだろう。

 私達は煙を上げている、島の跡地を見つめていた。

 モンスターのアジトは叩いた。

 これで海辺の町が、襲撃をうけることはもうないだろう。


「人助けも済んだ事だし、明日から冒険を再開よ!」

「幸先が良いのか悪いのか、分かりませんね……」


 そう。私達の冒険はまだ始まったばかり。

 今回の様な強敵が、まだ待ち受けているだろう。

 まだ見ぬ敵を想いながら、私は太陽を見つめていた。


──────────────────────────────


 ロウソクで照らされた、魔方陣の描かれた地下室。

 数名のローブの者が、円卓を組んでいた。

 

「ホワイトレオよ。霊珠石の捜索はどうなっている?」


 ボスである杖を突いた人物が、1人に聞き出した。


「はっ! 現在村人を使って、捜索中でありますが……」

「さっさと見つけろ。あの石が7つ集まれば、我らは世界を手に入れたも同然だ」


 威圧するように答えるボス。

 幹部は震えながら、敬礼をした。


「じゅ、住民に急ぐよう伝えるであります!」

「分かればよい。我がレオ連合に、無能はいらん」


 敬礼した幹部は一礼の後、慌てて出撃した。

 残った幹部の1人が、ボスの耳に口を近づけた。


「ボス、前からお聞きしたかったのですが……」

「なんだ?」

「霊珠石の元ネタは、DBですか?」


 ボスはフッと笑って、大声で答えた。


「カオスエメラルドの方だ!」

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