第3話 いざ冒険へ! 幽霊船での戦い!

「冒険に出たいわ!」


 私は遂に好奇心が抑えきれなくなり、冒険に出たくなった。

 この世界は未知に溢れている。それらを解き明かしたいと思った。

 その為にはこんな小さな領土で、領主をしていてもしかたがない。

 もっと広い世界を見てみたい。


「領主様が、領土を見捨てて何を言っているのですか?」


 メイが呆れた目線で私を見つめる。


「良いじゃない! どうせ書類にサインしているだけなんだから!」

「まあそうですが……」

「最終決定権はそうね。さっき雇った村長代理に渡すわ!」


 私は村人を揃える、お金を使って人を雇い始めた。

 元々村長だったが、村を焼き払われた人が居た。

 丁度リーダーが欲しかったので、お金を対価に村長代理になった貰う事にした。


「そんな無茶苦茶な……。大体、何をするつもりですか?」

「領土を拡大するのよ! 同盟を結んだり、悪徳貴族を退治したり……」


 その名目があれば、御父上も冒険を許して下さるだろう。

 私はもう好奇心が抑えきれない。


「夢はでっかく、世界征服よ!」

「大きさにも限度があります! お嬢様じゃなくて、魔王様になっています!」


 私はメイを無視して、早速旅の準備を始めた。

 この世界にはどんな事が待ち受けているのだろうか?

 ワクワクが止まらず、スーツに袖を通す。

 ドレスなど来ていたら、お嬢様飛ばれてしまう。


「さあ! メイ、ケイとフォルを従えて冒険に出かけるわよ!」

「もう好きにしてください……」


 メイはようやく覚悟が決まったようだ。

 私は車を用意して、後部座席に座る。

 運転は執事のケイが務める事となった。


「私、生まれたばかりだから、あまり世界の事情に詳しくないのだけど」

「そう言えば、ありましたね。0歳設定」


 ケイがアクセルを踏みながら、反応する。

 そう。私はまだこの世界に生まれて1年も経過していないのだ。

 その為この世界の事を、ほとんど何も知らない。


「えっと……。私もオリジン家にずっと仕えていたから、外の事はあまり」

「私も山に篭って修業していたから、事情はあまり」

「全員世間知らず!? なんと無謀な冒険か……」


 私はどうすれば良いのか迷った。

 流石にここまで世間知らずが揃うとは、思ってもいなかった。

 風の行くまま気の行くまま進めば良いと思うが。

 まずは目的地くらい設定しておきたいものだ。


「カーナビ付いてますから、取り合えず近くの町にでも寄りますか」


 ケイがカーナビを弄り、付近のマップを表示した。

 この近くに水の都と呼ばれる場所がある様だ。

 そこへ行けば、少しは情報収集が出来るだろう。


「さあ。水の都とやらにレッツゴー!」

「もう勝手にして下さい……」

──────────────────────────────

「水って、こっちの水だったのね……」


 目の前には海原が広がっている。

 どうやらビーチ沿いにある、街の事だったようだ。

 てっきり川が流れる奇麗な都会を想像していたのだ。

 私は水着に着替えてはしゃいだ。


「わぁい! 海だ海だ! 初めて来た!」


 私は生まれてから1度もプールにすら言った事がない。

 ここは泳いでいい場所らしいので、思いっきりはしゃいだ。

 日差しが良い感じに強く、海の冷たさが引き立つ。


「お嬢さん方、あまりはしゃがない方が良い」


 私が遊んでいると、1人の老人が近づいてきた。

 そう言えば近くに誰もいない。


「最近この辺りまでモンスターが下りてきてな。人の娘など直ぐに攫われてしまうぞ」

「衛兵は何をしているのでしょうか?」

「ここの衛兵は悪名高き、レオ連合じゃ。暇つぶしにワシらが苦しむ姿を見ておるよ」


 レオ連合とやらは知らないが、怠惰な連中のようだ。

 モンスターは調子に乗って、街まで下りて来たのだろう。

 この美しい海を守るためにも、私としては放っておけない。


「わしも孫娘が攫われてのう。町から離れられぬのじゃ」

「ならばご安心下さい! 私達がモンスターを退治してみせますわ!」


 私は胸を張って答えた。名声を上げれば、それだけこちらにも有利に働く。

 人助けも出来て、一石二鳥だ。

 

「モンスターは何処を根城にしているのですか?」

「分らん。奴らは霧と共に、怪しい船に乗ってやってくる」


 ご老人の話によれば、青い炎を灯した不気味な船が海で見かけるようになった。

 彼らは幽霊船と呼び、怖がって近づかない様にしていたようだ。

 そこから現れたゴースト型のモンスターが、人さらいをしているようだ。


「神出鬼没の船……。厄介ね……。よし!」


 私はボートとヘリを物体精製で作り出した。


「空から探しましょう!」


 ケイにボートとヘリを融合してもらい、私達は空から幽霊船を捜索開始。

 幽霊性が見えたら、ボートで近づくつもりだ。

 ショットガンを吹きながら、幽霊船が見えるのを待つ私。


「ニーナ様。ゴースト系のモンスターに、物理攻撃は効きません」


 戦闘慣れしているフォルが、解説をしてくれた。

 モンスターにも種族があり、有効な攻撃が違うようだ。

 ゴーストは物理属性の攻撃を無効化する。


「大丈夫よ。私には第3の異能があるから」

「第3の異能……?」

「あらゆるエネルギーを自在に操る能力よ」


 エネルギー波はなら、物理が利かない敵にも通用するだろう。

 除霊の力を込めた弾を、私はショットガンにセットした。


「お嬢様。怪しい霧が発生。中に船影」


 ケイが双眼鏡を覗きながら、状況を報告。

 どうやら敵さんのお出ましのようだ。

 私はショットガンを構えて、ヘリのドアを開けた。


「突入するわよ!」


 私はヘリを自動操縦に移行。メイとフォルを持ち上げた。


「え? え?」

「突入!」


 私はそのままヘリからダイブした。


「いや、ボートの意味はぁ!?」


 私は華麗に着地しながら、ボロボロの船内を見渡した。

 ケイは瞬間移動で辿り着き、銃を構えている。


「出て来なさい! さもなくば、この船を燃やすわよ!」


 私は松明を用意して、船に着火させた。

 木製の船は、徐々にだが燃え始めている。


「もう燃やしてます!」

「私を待たせる方が悪い」


 船に炎が広がり、船内から半透明のモンスターが現れた。

 どうやらこれがゴースト系モンスターのようだ。

 囚われた娘たちは船内に居るのだろうか?


「貴様ら何者だ!?」

「あら? モンスターって喋れるの?」


 モンスターにも知性の差があるようだ。

 以前戦ったコボルトは、人語を話せなかったはずだ。


「舐めたマネを……。お前ら全員いてもうたる!」


 船内から更にゾンビやら、骸骨やらが出てきた。

 私はショットガンを発砲し、一斉にゴーストを吹き飛ばした。


「ニーナ様。ここは私めにお任せください」


 フォルが前に出て、剣を赤く光らせた。


「受けるが良い。魔法剣。炎の剣!」


 フォルは剣を素振りした。するとその三日月状の斬撃波が飛んでいく。

 ゴースト軍団を一瞬で吹き飛ばしていく。


「ギギギ……。こいつ等強いぞ……」

「テメェら! こんなガキ共に苦戦しているんじゃねえぞ!」


 チンピラのボスみたいな話し方で、巨大なゴーストが出てきた。

 青白い体をクネクネさせて、どこな不気味なモンスターだ。


「あれはイレイザー……! ゴースト系最上級モンスターです!」


 フォル曰くゴースト系の中でも、特に危険なモンスターらしい。

 赤い瞳をギロリとしながら、部下達を締めていくイレイザー。


「くっ……。あんな最上級モンスターが居るとは……。だが!」


 剣を一振りして、炎の斬撃波を飛ばすフォル。


「師匠から受け継いだ剣技で、お前を倒す!」


 斬撃波は真っ直ぐに、イレイザーへ飛んでいく。

 イレイザーは赤い目を、発光させた。

 すると斬撃波はガラスの様に、砕け散る。


「で?」


 涼しい顔をしながら、再び目を光らせるイレイザー。

 フォルの体が浮かび上がり、空中で制止する。


「ガキ騎士が。粋がってんじゃねえぞ」


 フォルは霊力によって吹き飛ばされ、ケイの方向へ。

 ケイは両手を広げながら、飛んでくるフォルに構えた。


「はぁ! 超能力!」


 ケイは超能力でフォルを受け止め、そのままイレイザーに投げ返した。


「受け止めるんちゃうかい!」


 赤い目を光らせて、イレイザーはフォルを地面にたたきつける。

 その後周囲の瓦礫と共に、フォルを転がしてケイに向けた。

 ケイは瓦礫を地面に落として、フォルを返す。


「なんて戦いなの……。超能力VS霊力……」

「いいえ。私にはフォルさんがコロコロしているだけに見えます……」


 超能力でケイは攻撃を回避していく。

 次第に苛立って来たのか、イレイザーの攻撃が荒くなってきた。


「ォエ~……。くるくる回って吐きそう……」

「なんだと!? くっ! こっちで吐くな!」


 ケイは転がって来たフォルを、蹴り飛ばした。

 フォルはイレイザーにしがみつき、頬を膨らませる。


「待てぇ! ゴーストでも臭いは駄目だ! あっちで吐け!」


 イレイザーは船の端に、フォルを投げつけた。


「隙を見せたな! 僕の必殺を喰らうが良い!」


 いつの間にかケイは、腕に青い光を集めていた。

 手から光弾を発射して、イレイザーに近づける。

 光弾はイレイザーをすり抜けて、背後に渦を作り出した。

 イレイザーは渦に吸い込まれて、そのまま消えていく。


「ディメンションウェーブ。説明しよう。相手を別空間に閉じ込めて、なんやかんやでダメージを与える技だ」

「なんやかんやって何ですか!?」

「なんやかんやは、なんやかんややないか!」


 渦の中からすごい音が聞こえてきた。

 その後イレイザーが渦から飛び出して来る。

 その体は既にボロボロとなっていた。


「貴様ら……。これで勝ったと思うなよ……」


 イレイザーは消滅しかかりながら、負け惜しみを口にする。

 

「ボス! ボス!」

「なに!? 最上級モンスターより、上位の存在が居るのか!?」


 いつの間にか戻ってきたフォルが、目を見開く。

 イレイザーよりも強力なモンスターが船に乗っている……。

 これはかつてない戦いになりそうだ。


「最上級と言え度、所詮上の低。その程度の奴らにやられるとは」


 周囲が赤い光に照らされた。船の床が開き、そこからステージが飛び出て来る。

 スモークが張られて、向こう側にシルエットが見える。

 一体どんなモンスターなのだろうか?


「うおおお! マッ・チョ・ス!」

「キレてますよ! ボス!」


 煙が消えて現れたのは、物凄いマッチョな体をした猫だった。

 パンイチので、股間に尻尾が付いている。

 ボディービルダーが良くやるポーズをしながら登場する。


「なんでゴースト軍団のボスが、猫ぉ!」

「違うぞ、メイ。アレは化け猫だ」

「見た目からして物理なんですけど! ゴースト要素0なんですけど!」


 ケイは額に汗を浮かべながら、拳銃を構えた。

 私にもわかる。こいつは強い……。今までの敵とは格が違う。


「貴様ら舐めたマネをしてくれなた」


 マッチョスは片手を前に突き出した。

 近くの小島が浮かびだして、赤い光を纏う。

 マッチョスが拳をギュッと握ると、小島は圧殺される様に潰れた。


「今のは挨拶だ。俺の力はこんなものじゃないぞ!」

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