第2話 女性騎士を救え!決戦!地獄の砦!

「どう? 母君の調子はよろしいかしら?」


 私は助けた少女を、村に住ませていた。

 ここのならいくらでも薬草を取れるので、母の看病には最適。


「ニーナ様。おかげ様で、大分調子が良くなりました」


 彼女には薬剤師になってもらうべく、様々な治療法を伝授した。

 私に恩義を感じているのか、彼女は快く引き受けてくれた。

 

 次に私は畑の方を見に行く。現在村人は2人だけ。畑はケイがきり持っている。

 地道に桑で耕して、種まき。魔法を使って水やりをしている。

 更に田んぼまで創り出した。しばらくすれば、お父様からもらった食料が尽きる。

 彼に任せておけば、食料問題は解決するだろう。


「薬剤師、医者。次は衛兵が欲しいわね」

「あの……。ニーナ様……」


 ぼそぼそしながら、メイが何かを言いたそうな口調だった。


「何かしら?」

「何ですかあれは!?」


 メイは村周辺に設置した、大砲を指さした。

 私が物体精製で作ったものであり、防衛の為の兵器だ。


「なんで内部は田舎町なのに、外装だけ要塞化しているんですか!?」

「私は厄介事が嫌いなのでね」

「やり過ぎです! 衛兵が数人いれば良いでしょう!」


 その衛兵が居ないから、困っているのだが。

 私としては大砲でも物足りないくらいだ。

 とはいえ、村人を増やすにはどうすれば良いのか分からない。

 どうやって衛兵をスカウトしたら良いものか……。


「やはり私が直々に……」

「止めましょう! 何かが壊れます!」


 失礼な。私だって敵以外は壊さない様に、ルールづけているのに。

 メイは私をなんでも破壊すると思っている。


「団長! いや、お嬢様! 村の入り口で倒れている人が!」


 医者になってもらった少女が、やってきた。 

 背中には鎧を着た金髪の女性を抱え、酷く重そうだ。

 私は女性を受けとり、病床まで運んだ。


「症状は?」

「酷く疲労していますが、病気ではなさそうです」


 ガハっという声と共に、女性騎士は目を覚ました。

 朦朧としているであろう意識の中で、何かを訴えている。


「フォル……」

「お嬢様、少し任せてくれますか?」


 いつ間にか来たケイが、女性の頭に手を当てた。

 青い光共に、何かを読み取っているようだ。


「ふむ。仲間の女性騎士が、反逆の罪で囚われたそうです」


 ケイの話を纏めると。冤罪をかけられた女性騎士が居た。

 その人物は明日、処刑されるらしい。

 その人物の無実を証明しようと、証拠を探していた女性。

 だが敵に見つかり、ここまで逃げてきたとの事だった。


「場所はバッファルト砦らしいです」

「バッファルト砦!? あそこは難攻不落の砦として有名です!」


 メイが知っていると言う事は、よほど有名なのだろう。

 どこに貴族が管理しているか知らないが、これ以上好き勝手にはさせない。

 冤罪で処刑何て、私には許す事が出来ない。

 私も何もしていないのに、酷い目に遭わされたのだから……。


「ケイ、メイ! 準備しなさい! 難攻不落とやらを、潰すわよ!」


──────────────────────────────


 バッファルト要塞。地下の監獄に1人の騎士が囚われていた。

 檻で背を向けながら、ずっと正座をしている。

 上級貴族の1人が、牢獄に近づき尋問を開始していた。


「有名騎士様よ。そろそろ白状したらどうだ?」

「私は何もしていない。何も白状することなどない」

「随分と強気だな。明日、処刑されると言うのに」


 女性騎士は貴族へ振り返らず、黙って壁を見つめる。


「こうやってお前は、幾つもの罪を揉み消してきたんだな?」

「何のことやら? 分かりませぬな」

「貴様が野盗を操り、人身売買を行なっている事は知っている」


 女性棋士はその証拠を探すために、捜査をしていた。

 腐敗貴族は事実をもみ消すために、女性騎士に無実の罪を引っ掛けた。

 殺人の汚名を着せることで、その信憑性を失わせる算段だった。


「そんな証拠、何処にあるのですか? 言いがかりはよして下さい」

「私が捕まっている事こそ、何よりの証拠だ」

「もしや、お仲間が助けてくださるとでも?」


 女性騎士、フォルは口を閉ざした。

 ここは難攻不落の要塞。僅かな仲間では助けに来られないだろう。

 だが彼らが無事なら、いずれ貴族の罪を暴いてくれると信じていた。


「ククク。バカめ。貴様を処刑した後、貴様の親友も家族も、全て皆殺しにしてくれるわ」

「何処までも腐った奴め。今に見ていろ」

「確か貴方の師匠にも同じことを、言われました。まあ、叶いませんでしたが」


 貴族は勝ち誇った笑みを向けた。

 明日の処刑を楽しみに、その場からさろうとした時。

 突如地響きが発生し、腐敗貴族は足元をとられた。


「な、何事だ!?」


 腐敗貴族が慌てていると、地面からドリルが突き出してきた。

 ドリルの先には装甲車が、接触している。

 

「何だこれは!? 地下から攻めてきたのか!?」


 初めて見る兵器に動揺する、腐敗貴族と部下。

 そこへ装甲車から、ケイがハッチを開けて出てきた。

 パンイチでカメラを構えながら、奇妙な動きで下りる。


「お待たせしました。お待たせし過ぎたかもしれません!」


 謎の侵入者に全員が、呆然としていた。

 ケイは構わず、カメラを向け続ける。


「私、難攻不落の砦を落としにきました!」


 カメラを腐敗貴族に向けて、カニ歩きをするケイ。


「いい表情してますね! ナイスですね!」

「25年ぶりに襲撃を受けたが、こんな襲撃ないだろ!」


 この砦は25年間攻撃されたことすら、なかった。

 久しぶりに攻撃を受けてみれば、相手はパンイチ。

 腐敗貴族は何をどうすればいいか、分からなくなった。


「騎士さん達もいい表情していますね! ナイスですね!」


 護衛の騎士にカメラを向けた、ケイ。

 次の瞬間破裂音と共に、騎士の腕に弾丸が飛んだ。

 カメラには銃が、備え付けられていたのだ。

 騎士は腕をおさえながら、その場で膝をつく。


「ケイ。遊んでないで、早く片付けましょう」

「了解しました。すぐに服を着ます」


 ニーナは、ケイの服を投げ渡した。

 素早くスーツを着ながら、ケイは拳銃を構えた。


「全員動くな! 牢を壊すまで、じっとしてろ!」

「鍵を探すという、選択肢はないのですね……」


 装甲車の中から、メイがツッコミを入れる。

 ケイは発砲して、牢獄の鍵を破壊した。

 女性騎士は何事かと、こちらを振り返る。


「貴方の親友、シモに言われて、助けに来ました」

「彼女は無事なのか!?」

「安全な場所まで、護衛します。着いてきて下さい」


 フォルはケイの誘導に従い、牢獄から出た。

 剣を渡されえて、様になった構えで貴族に突きつける。


「貴様ら……! こんなことをして、タダで済むと思うなよ!」


 衛兵を呼び、ニーナ達を囲む貴族。

 数が多く、普通ならとても太刀打ちできない。


「処刑は前倒しだ。貴様ら全員生きて帰さん」

「物体精製! 新幹線!」


 ニーナは線路を作り、新幹線を砦に向けて走らせた。

 新幹線は砦の壁を貫通して、地下へと降り立つ。

 そのまま地下牢獄のある部屋に辿り着き、数名の兵士を轢いた。


「何だあれは!?」

「お前の横顔だよ」


 ケイは新幹線の屋根に登った。

 そこにはガトリングガンの砲台が設置してある。

 ケイは砲台から弾丸を発射して、兵士を倒していく。


「かかり火を照らせ! 直ぐに援軍を!」


 腐敗貴族は脱出しながら、上の兵に指示を出した。

 盾を持った兵士が前に出て、弾丸を防いでいく。


「逃がすか! 僕の第3の異能を見せてやる!」


 ケイは装甲車を持ち上げて、新幹線の先端にくっつけた。

 そのまま装甲車に乗り込み、新幹線を走らせる。


「物体合体異能力。通称ビルドだ」

「なんかトンデモナイ兵器が誕生したぁ!」


 メイは目玉を飛び出させた。

 どちらも初めて見るが、魔改造と言う事だけは理解出来た。


「ケイ! 新幹線を最大速度で走らせるわ!」


 ニーナは速度を上げて、新幹線を最高時速で走らせた。

 時速300kmで、精製された線路を走る新幹線。

 壁を貫通しながら、腐敗貴族を追いかけまわす。

 更に装甲車から、機関銃が放たれる。


「素直に罪を認めろ!」


 ケイは機関銃を発砲しながら、腐敗貴族に投げかけた。


「ヒィ! すいません! フォルは冤罪で、私の指示でやりました!」

「お嬢様! 今の発言、カメラで撮りました!」

「了解。後は……。証拠隠滅よ!」


 ニーナは構わず新幹線を走らせた。


「ぎゃあ! 話が違うぅ!」

「貴方は罪を犯しましたわ。その償いはしなければなりません」

「お嬢様! 現在進行形で、我々は罪を犯しています!」


 無許可で砦に侵入した挙句、破壊活動をしているニーナ。

 この世界のルールに従っても、普通に罪だ。


「踏み倒せば、問題ありません!」

「さっきと言っている事が違う!」


 息を切らしながら、腐敗貴族は曲道を曲がった。


「しまった! 新幹線は急に止まれない!」


 直角曲道を曲がり切れず、新幹線は壁に激突した。

 そのまま砦の外に投げ出され、隔壁に衝突する。

 先端の装甲車から、茶色い液体が漏れ始めた。


「マズい! ガソリンが漏れているわ!」


 ニーナはフォルとメイを掴み、新幹線から飛び出した。

 その後ケイがひょいっと、装甲車から顔を出す。


「ビルド解除!」


 装甲車を新幹線から切り離し、超能力で持ち上げた。


「はい、あげる」


 装甲車を砦に向かって投げつけたケイ。

 壁が貫通した装甲車に、ニーナはショットガンを向けた。

 スコープを覗きながら、漏れているガソリンに狙いを定める。


「伏せなさい!」


 引き金を引いて、弾を発射するニーナ。

 破裂音と共に、装甲車は爆発をあげた。

 砦内部を粉砕しながら、炎が広がる。


「物体精製! 消防車!」


 消防車を作り出し、ホースをケイに渡すニーナ。

 自身は消防車に乗り込み、操作を開始した。

 ホースから勢いよく、液体が流れ始める。


「うわぁ! 凄い! 消火まで出来る車とやらがあるんですね!」


 初めて見る消防車に、興奮気味のメイ。


「中身ガソリンだけど?」

「え……?」

「伏せなさい!」


 放水と共に炎が引火。砦は更なる爆発をあげる。

 オレンジ色の炎に包まれながら、全てが粉砕された。

 難攻不落の砦が、一瞬で瓦礫の山となった。


「信じられな……。この砦をこうもあっさり……」


 助かった事、砦が壊れた事。様々な事で開いた口が塞がらないフォル。

 頭を掻きながら、ニーナは一言、真顔で呟いた。


「やり過ぎた……」


──────────────────────────────


 瓦礫の山をかき分けながら、腐敗貴族が出てきた。

 どうやら兵士を盾にして、自分だけ助かったようだ。


「クソ! この私をこのような目に遭わせやがって!」


 腐敗貴族は歯をギシギシ言わせながら、拳を握った。

 相当恨みが籠った瞳で、空を見上げる。


「あの小娘め! 絶対に思い知らせてやる!」


 私はやれやれと思いながら、腐敗貴族の肩に手を置いた。


「誰に何を思い知らせるって?」

「え!?」


 引きつった顔で、背後に居る私へ振り向く腐敗貴族。

 私は拳銃を突きつけながら、腐敗貴族の手を握った。


「貴様の為に使う尺がない」


 ケイがまた訳の分からない事を言いながら、腐敗貴族を殴りつけた。

 貴族は歯を3本折りながら、その場で気絶した。


「目が覚めた頃には、貴方は牢の中よ。良い夢が見れると良いわね」


 私達は先ほど取った自白映像を、魔法で映像化した。

 その辺にばら撒き、腐敗貴族の罪を明らかにした。


「悪さをした、貴方が悪い」

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