第1話 領主始めました! 破壊神と創造神誕生!

 私、ニーナは一連の流れを、メイに話してあげた。

 私が1人立ちして、屋敷を手に入れるまでの話を。

 屋敷を整備しているはずのメイドが、中々やってこなかった事を。


「いや、前後と全く話が繋がりません!」


 メイは目を開けて、口をあんぐりさせながら叫んだ。


「貴方生まれたばかりですよね!? 何でもう領主とかやっているのですか?」

「采配は父が決めたから、知らない!」

「父親もいい加減すぎるぅ!」


 失礼な事を言うメイに対して、ケイは冷静にコーヒーを運んできた。

 書類を整理しながらコーヒーを飲む。

 まさにお嬢様っぽい仕事の仕方ね。


「しかし辺境の土地と聞いていたけど……」


 私は荒れ果てた村を見ながら、コーヒーをすする。

 台風でも来た後の様に、資材がその辺に置きっぱなし。

 村人は誰もおらず、まるで未開の地の様な有様だ。


「お屋敷もお手入れが大変でしたわ」


 ここに来たばかりの時、随分と蜘蛛の巣だらけで大変だったものだ。

 ケイが頑張って掃除してくれたので、なんとか使用出来るレベルにはなった。


「あのニーナ様。体よく無放置地帯を押し付けられただけなんじゃ?」


 あまりの荒れっぷりに、メイは少しだけ不安になっているようだ。

 なにせメイドと言っても彼女しかいない。

 私のお世話をするのは、ケイと彼女の仕事だった。


「私、3つの『dash』に憧れていたのよ」

「なんですかそれ?」

「ロック、鉄腕、マックスよ! トゥーdash!」


 確かにここは荒れ果てた土地だ。

 だが私の好奇心が刺激される。

 この村をどう開拓してやろうか。楽しみで仕方がない。


「まずは税金が無ければ、貴方達の給料も払えないわ。村人を集めるため……」


 私は物体精製で、スマートフォンを精製した。

 動画配信サービスに繋げて、ある番組を見る。


「dash村を調べるわよ!」


 私達は村の開拓を始めた。

 重そうなものはケイの5つの異能の1つ、超能力で持ってもらう。

 ちなみに瞬間移動も超能力の1つとして、数えられている。


「建物の補修に使えそうな木材を集めましょう」

「面倒。建物なんて……」


 私は物体精製を発動した。

 二世帯住宅を作り上げて、取り合えず放り投げる。


「こんな風に建て直せば良いでしょう!」

「ニーナ様! 大分風景とミスマッチな建物です!」

「何ですって!? ならば仕方ありません。破壊!」


 私はバズーカを使って、二世帯住宅を破壊した。

 再び物体精製を使い、新たな建物を作り上げる。


「木造建築でどうよ!」

「歴史ない建物建造!? ニーナ様、この世界をご存じですかぁ!?」

「ならば破壊!」


 どうやらメイは私の作る建物が、お気に召さないようだ。

 仕方なく周囲の建物を参考にして、私は建物を精製した。

 ふむ、気に入らない。私としては、二世帯住宅のほうが良い。


「やっとまともな……。なんでバズーカ構えているんですか!?」

「何でって、気にいらないから」


 私は住宅を爆発した。代わりに二世帯住宅を置く。


「やっぱりこっちの方が良い」

「ニーナ様の中に、世界観はないのですか?」

「ない。私は気に入った事だけやるの。領主だから!」


 私は次々と建物を建造していった。

 村の見栄えを考えて、配置していく。

 我ながら見事な配置だと思った。


「いや、無作為過ぎ! 風景画を書く際、真っ先に避けられる」


 先ほどメイが失礼過ぎる。私は銃口を向けて、黙らせた。

 そう言えばケイの姿が、さっきから見えない。

 あいつはどこでサボっているのだろうか……?


「お嬢様。瓦礫を使って、釜戸を作ってみました」


 いつの間にかケイが、釜戸を作っていた。

 廃れた村の破片を使って、作ったらしい。


「それにしても残念な、配置ですね。失敗した落ちものパズルですか?」


 ケイは私の配置が気に入らなかったようだ。

 超能力を使って、建物の配置を変える。


「おお……! 見事な配置でございます」


 メイが関心した様子を見せた。悔しいが完璧だ。

 ケイは木材を持って、斧を手にする。


「食べ物を保管する、倉庫を作ります」

「そんなもの、冷蔵庫があればいいでしょ」

「コンセントは?」


 ケイの質問に、私は答える事が出来ない。

 仕方なく彼に、コンセントを作ってもらった。

 さすが電気系の専門。配線が得意なようだ。


「次は畑を潤しましょう」

「草刈りなら任せて頂戴!」


 私は荒れ果てた畑を、ミサイルで更地にした。

 ケイが鍬を持って、畑を耕す。


「創造神と破壊神だ……」


 メイが何もしないくせに、何か呟いていた。

 後は手頃の村人がいれば、万事解決ね。

 そう思っていると、村の中に毛皮を着た集団が入り込む。

 斧やら剣やらを持って、汚い体を見せていた。


「へへ。本当にお嬢様がいるじゃねえか」


 私を見ながら、ニヤニヤする謎の集団。


「お嬢様! 熊です! 死んだふり!」


 ケイはその場で寝転んだ。

 その手には狩猟用の銃が握られている。


「男は殺せ。女2人は攫え」

「なんだ。熊じゃないのか。じゃあ撃つ!」


 ケイは容赦なく、銃を発砲した。

 敵の肩に銃弾が直撃し、斧を落とさせる。


「痛ぇ! この野郎! 舐めたマネを!」

「そりゃ舐めるよ。頭悪そうだもの」


 ケイは銃口を握って、敵の頭に叩きつけた。

 銃でしばかれた敵は、ふらりとする。


「ニーナ様。こいつら野盗です! 私はコイツらに……」

「人を攫って売り飛ばすとは許せん! ケイ、やっておしまい!」


 私は武器を生成して、ケイに渡した。

 ケイは超能力を使って、5つの銃を受け止める。

 同時に引き金を引いて、敵に向かって照射する。


「蛮族め。朽ち果てろ!」


 ケイは弾丸を放って動きを封じた後、銃を投げ飛ばした。

 何度も同い敵を狙い、しばき続ける。


「ぎゃあ! 何で俺だけ!?」


 ケイはクイっと敵の1人を近づけた。


「貴様らのボスは何処だ? 言え!」


 そのまま拳で、敵を殴りつける。


「せめて答えさせてあげて!」


 メイのツッコミを無視して、ケイは敵の胸ぐらをつかんだ。

 前後に揺らしながら、拳を固める。


「ボスは何処だ! さっさと答えろ!」

「お、奥地にある洞窟だ」

「なんだと!?」


 ケイは再び敵の頬を、殴りつけた。


「答えたじゃん! 何で殴るんですか!?」

「答えたら助けるとは、一言も言っていない」


 うん。確かに答えろとは言ったけど、助けるとは言ってない。

 ケイは銃を回収して、敵に突きつける。

 流石に雑魚を殺しはしない。さっさと括りつけて、衛兵にでも渡す。

 

「お嬢様。こんな奴らを野放しにで出来ません」

「ええ。商人の通行安全の為にも、敵は排除せねば!」

「敵って断言しちゃうんですね……」


 私は車を精製して、運転席に乗り込んだ。

 免許など持っていないが、何故か動かし方が分かる。

 7つある異能力の1つ。触れたものの使い方を理解するが発動したようだ。


「話しを円滑に進める異能力ですね。分かります」


 ケイはたまに、良く分からない独り言をつぶやく。

 本人曰く、第4の壁を貫く異能力のようだ。


「メイ、乗って! 飛ばすわ!」

「はい。でも馬車を引く、馬がいないようですが」


 私はエンジンをかけて、サイドブレーキをあげた。

 メイが助手席に座ったのを確認し、車を発進させる。


「あ、あの! ケイさんが乗ってませんが……」

「アイツは大丈夫よ……。だって……」


 私は前方を指さした。そこにはボンネットにしがみつく、ケイの姿があった。


「何でそんな所にぃ!」


──────────────────────────────


 簡易的な檻に、数名の少女が囚われていた。

 鎖につながれて、自由を奪われている。


「お願いです……。離してください……。直ぐに薬草を届けないと母が……」

「ああ? 商品が口答えしてるんじゃねえ!」


 野盗の1人が、鞭で少女を叩きつけた。

 ボスである大男が、それ以上の追撃を止める。


「大事な商品に、傷をつけるな」

「へい。それにしても流石ボスですな~」

「この辺りは珍しい薬草が生えている。更にまだ同族が少ない」


 辺境の地まで、薬草を取に来る少女が目当てだった。

 この辺りにはモンスターもおらず、安全な場所と知られていた。

 そこに目を付けて、1人きりの少女を攫い、売り物にする。

 それが野盗たちの狙いだった。


「お願い……。帰して……」


 もう何日も閉じ込められている少女が、必死で訴えた。

 食料ろくに与えられず、痩せ始めている。

 野盗は再び鞭で、少女の事を叩いた。


「舐めた口を利くんじゃねえ!」

「おいおい。その辺にしておけよ。値下げを交渉される」


 ボスは叩かれた少女の、顎を掴む。


「商品価値が下がれば、用済みだ。後は分かるな?」


 少女は絶望の瞳で、俯いた。

 もう自分は助からない。その事を悟った。


「ボス! 大変です! 近くに変なものが!」

「あん? 何事……」


 ボスが全てを言い終える前に。

 洞窟へ車が突撃した。ボンネットから、ケイが射撃をする。

 適当に走りながら、野盗を追い回す車。


「敵よ! 撃ちなさい!」

「お嬢様に色目を使いやがって……。許せぬ!」


 ケイは走る車から、野盗に射撃をした。

 野盗は初めてみる拳銃に成すすべなく、次々とやられていく。

 呆然としているボスの所へ、車が突進した。

 そのままボスを引きながら、壁に激突する。


「メイ! 伏せなさい!」


 助手席のメイを抱きかかえて、ニーナは車を飛び出した。

 先に脱出したケイが、車のガソリンを撃ち抜く。

 そのまま車は炎上して、爆破される。


「この野郎……。良くもボスを……!」


 生き残った野盗が、斧を構える。

 ニーナは物体精製を使い、野盗に対抗した。


「2世帯住宅を喰らいなさい!」


 野盗の1人へ、ニーナは2世帯住宅を投げつけた。

 2世帯住宅は野盗を踏みつけて、洞窟の真ん中に建つ。


「さあ脳トレの時間よ! 家に入る人数を数えなさい!」


 他の3人が、つられる様に家の中へ入っていく。

 本人の意思を無視して、操られる様に家に入っていく。


「答えは……。4(死)人!」


 二世帯住宅は爆発した。


「何で爆発するのぉ!?」


 目をぱちぱちしながら、ただ戸惑うメイ。

 ニーナ達は少女達を解放する。


「もう大丈夫よ。危なかったわね」

「どう考えても、私達の方が危ないですよ……」


 ニーナに背負われて、4人の少女達檻の外に出る。

 1人歩けない人が居るが、命に別状はなさそうだ。


「お嬢様! 僕に捕まって! 奴ら時限爆弾をセットしてました!」

「明らかに今貴方が置いたものだよね! 針が一番上にあるんだけど!」

「全員退避! ケイに捕まって!」


 時限爆弾のスイッチが押された。

 少女達はケイにしがみつき、瞬間移動の準備をする。


「さらば大人の闇!」


 ケイは瞬間移動で、洞窟の外に出た。


「伏せろ!」


 ニーナの声と共に、全員が地面にうつ伏せになる。

 次の瞬間、洞窟は跡形もなく、爆破で消し飛んだ。


「さあ。みんな。家まで私達が護衛するわ」


 ニーナはヘリを精製して、少女達を乗せた。


「こ、このお嬢様、破壊神だ……」

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