第33話 やめろ!出るな!(フラグ)

「…そういえば、あいつらって今どうしてるんだろ…」


 ふと思い立ち、パソコンを開いた。配信をやっていたことが幸いして、彼らの動向は今も追えそうだ。


 …連絡先はまだ残っている。あの時一つけじめがついたような気がして、踏み切ったはずだったんだけど。

 結構未練がましいんだな、俺。改めて自覚する。


 さんざん目にしたチャンネル名を検索欄に入れて、少し調べてみる。


「…なんかなあ」


 ただ、アーカイブを閲覧すると、なんとなく不調が見て取れた。段々と挑むモンスターのレベルが下がってきているように感じるし、メンバーの顔つきも良くないような。


「…重大発表?」


 俺が抜けたのは、もちろんのこと既に動画としてあげられていた。

 しかし、その後の日付の動画に、「重大発表」と銘打たれたものが存在している。


 疑問を感じつつ、その欄をクリックした。


『えー、今日は大切なお知らせがあります。

 四人のメンバーのうち、漣がこのパーティーを抜けることになりました。

 理由としては一身上の都合ということで…』


「は?」


 どうして漣が抜けるのか、よくわからなかった。俺が抜けて皆万々歳のはずじゃなかったんだろうか。あれだけ嬉しそうにパーティーメンバーから蹴ったんだから、多分そういうことだろう。


 …いや、待てよ。


 このパーティーって、俺が貢献してた分が、今ないんだよな?

 じゃあ、どうなってるんだ?


「あー…?」


 もしかすると漣は何かしらを察して抜けたのか、何なのか。

 そもそも…奏さんにもさんざん言われたけれども、俺が抜けたら大変なことになってるはずだと。


 傾きかけた泥船に乗りたがる人間なんていない。

 じゃあやっぱり、それを察したのだろうか。


 令士ダンジョンに潜るまではどういう予定にしようかと思っていた頃だった。


「うーん…」


 なんか、心配にはなってくるが、どう考えてみても、自業自得というほかない気がする。だって、俺は追放されなければパーティーにとどまっていただろうし、あいつらがそこそこ食えていたのは俺がパーティーにいたからで。


 まぁ、後で考えるか。


 それより、令士ダンジョンにもぐる前に、奏さんに場慣れさせるため、依頼をいくつかこなそうかと考えていたところだった。


 それに関しては初心者から数体、少し慣れてきた人向けのモンスターも数体、依頼があるものを選んだのだ。


「えー、こいつは最後に回した方がいいな…最初に回すのは、」


 突然の着信音だった。


 奏さんか。慌ててスマホの画面を見る。


「……………海斗?」


 しかし、予想と反し、画面にはかつての仲間の名前が表示されていた。

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