第31話 アオハルだ!!!

 家に帰ってきてから、私は机に突っ伏した。その勢いで少し額を打ったけど、全然気にならないくらい、別のことに気を取られていた。


 …これって、デートだよね!?


 手足でもばたつかせたいところだ。思い返すたびに羞恥心が次々とにじみだして、頬や首筋に熱が集まる。


 仁さんと組んで、そんなに長い時間は経ってない。でも、本当にいろんなことを一緒に経験したような気がして、なんというか、気分は長年連れ添った夫婦みたいな…って。



 ――私、結構、あの人のことが好きなのかな。


 自分の気持ちは自覚しつつある。だって、さすがにこの年にもなれば、「なんなんだろう…この気持ち?」なんてことはない。そんなの、少女漫画とか、空想の世界だけのお話だ。


 ちょっとだけ顔をあげて、頬をおさえる。やっぱり少し熱かった。



 前のパーティーに所属してたとき、私以外は男の人だけだったけど、こんな気持ちは一度も味わわなかった。


 小さいときから、「可愛いね」と褒められることはよくあった。私も自分の顔が少し整っている方であることは自覚している。

 でも、それで寄ってくるものなんて、大体いいものじゃなかった。


 皆私のことを外側しか見てくれない。外見が良いから幸せだとは限らない。

 むかつく、って理由で学生時代にいじめられたこともあったし、変な人に連れていかれそうになったことは何回もあった。


 親友だけは私の中身をきちんと見てくれたけど…まさか、あの子以外に私とちゃんと接してくれる人ができるなんて、思いもしなかった。

 それも、男の人だ。


 男の人に関して、私はあまりいいイメージがない。大体、投げかけられる視線で、私に近づいて何をしたいのかがわかるから。


 だけど仁さんは違った。私に何か望まないし、私を女の子扱いしない。私が全然役に立てなくても、少しずつ攻撃役を任せてくれる。


「…もっと役に立ちたいなあ」


 でも、足りない。私はもっと仁さんの役に立ちたい。今は少しずつ前衛も担当できるようになってきたけど、まだまだだ。仁さんに任せっきりの部分が沢山ある。

 それに、ヒーラーとして活躍したことなんて、ここまでで一切なかった。


 前のパーティーだと、誰が一番先に私に回復してもらうか、なんてことで言い争ってたりしたけど…きっと仁さんならそんなことはない。そもそも、一人だけだし。


 傷を治癒させる魔法に関しては、私は結構得意だ。骨折も火傷も傷跡を残さず綺麗に癒せる。

 けど、それだけじゃ駄目だ。後衛だけじゃなくて、前線で戦うには。


 …やっぱり、投擲の練習とかした方がいいのかな。

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