第30話 まだ続けんのかい!
「奏さんは?」
「私?」
「冒険者になった理由とか」
尋ねると、不思議そうな顔をされた。
「んー…仲のいい友達がいたんだけどさ。そのこと一緒に冒険者になってバディ組んで、私の方はヒーラーの適性が高かったから…かな。仲の良かった子は前衛だったんだけど、怪我がきっかけで転職して冒険者を辞めちゃって。私はそのまま続けて、運よくパーティーにも入れてもらえたんだ」
「ああ…でもそのパーティーって」
「前にも言ったっけ?皆すごく私に気を遣ってくれるんだけど、気を遣い過ぎて…なんか、こう、息苦しいというか」
要約すると、一緒に冒険者になった仲のいい友達が先に辞めて、別のパーティーに入ったら性に合わないのに姫扱いされていた…ってことだ。
「俺は前のパーティーをクビになったからなんだけど、奏さんはどうしてパーティーを抜けてきたの?」
「えっと、なんか、私、パーティーに所属してるうちの、二人の人に『付き合ってください』って言われてたんだ。でも、正直断ろうと思ってて、そしたら、一人の方は『リーダーの言うことが聞けないのか』って結構強引に迫ってきて。なんというか…あともう一人の方も加わって、修羅場?みたいな感じだったんだよ」
わぁ。
「それで、私このパーティーにいるとダメだな、迷惑かけるだけだな、って思ったから、黙って抜けてきた」
「黙って?」
「許可を取り付けるなんてできなかったからさ」
それって、俺と組んでることがバレたら大惨事になったりしないか。いやまぁ、そんなこと早々ないかもしれないけど。
それにしても美人って大変だな。そんな理由でパーティーを抜けるなんて。
なまじ性格も良いから男にとっては…ってところだろ。俺もその気持ちはわかる。
全然わかる。やらないけど理解はできる。
そこで料理が運ばれてきたので、大人しく食べることにした。そろそろ話題にも困り始めてきたところだったからありがたい。
「あ、仁さん、それ一口ほしいな。私のもあげるよ」
「お、おう」
突然の申し出にセルフサービスの水を吹き出しそうになった。いやいやいや。しかし断る理由が一切見当たらなかったので、大人しくフォークを渡そうとして…考えた。
待てよ?これはさらなる役得のチャンスでは?
「はい、どうぞ」
「ありがと!」
俺がカルボナーラをすくいとったフォークを差し出す。奏さんは、何の迷いもなく、カルボナーラを食べた。うん。
絶対、恋人同士とかがやる「あーん」ってやつだわ。これ。
そして再び、一切躊躇などなく、奏さんはオムライスをスプーンで一口分すくって、それを差し出してきた。これは食えという合図だな。
大人しく間接キス(2回目)をしたが、ほんと、これ素でやってるんだろうか。
「おいしいね」
正直味とかあんまり分からなかった。そりゃ取り合いになるわけだわ。
妙に納得した。
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