第27話 そこが中高生並み
ダンジョンから出るころには、すでに日が昇っていた。空は白むどころか、完全に朝だ。
「あっという間だった気もずいぶん長かった気もするな」
「そうだね」
受付で安否確認を済ませ、外の空気を吸う。人が通り過ぎ、行きかうこの街は随分騒がしかった。あの場所でのことが嘘のようだ。
手のひらの中には、鈍い輝きを帯びたネックレスが納まっていた。
「これ、なんなんだろうな」
「結局説明なんにもなかったよね」
二人して色々と頭をひねってみたが、それらしい説明は全然つけられなかった。どういうものなのか、まったくわからない。
「呪物とかだったら嫌だな」
「そんなことはないと思うよ」
「それにあいつが誰なのかわからなかったし」
思い返してみれば、夢か何かに近しい、非現実的な出来事が沢山あった。あれらは本当に事実だったのか、疑わしいところだ。
あの人物が何なのか、そしてあの部屋は何なのか。あそこが最上階だったのだろうか?それにしては、そこまで階段を上った覚えはない。いくらたくさん階段を上ったからといって、雲を突き抜けるような高さにはとうてい届かないはずだ。
「なんか…すげえ体験をした気がするんだけど」
「それは私も思った。あれ、絶対お話にできるよね」
ダンジョンであんな部屋を通過した人のことなんて、まったく聞いたことがない。俺達は、道中にあったようなタイルを踏んで、鍵を発見した場所につながっていたタイルへ戻ってきた。
信じられないようなことばかりが起こっていて、少し頭が疲れた。
「帰るかぁ…」
「私も。汗かいちゃったし、お風呂入りたいな」
その発言がちょっとだけエロいなって思ったのは内緒だ。
「よければ送っていこうか?」
「え、いいの?」
少しここで言い出すのは変かと思ったが、俺は自家用車、奏さんは電車と徒歩でここまで来ている。奏さんは運転免許も自家用車も持っていないらしいので、必然的に俺が送っていくことになる。
こんな美人が電車に乗ってたら変な気を起こす輩も居そうだしな。万一のこともあるから、そう申し出たら、すぐに了承を得た。
…まぁ、終始当たりさわりのない話しかできなかったんだけどな。割と距離感を掴み損ねているところだった。
俺、結構奏さんのことが好きかもしれないと自覚したのが少し前。
で、これが親愛なのか恋愛なのか悩んでいるのが、今ってところだった。
「あーくそ」
ソファの上でぐだぐだと寝転がる。家に帰ってきても、奏さんと二人きりというのが頭から離れなかった。
もう俺おっさんなのに。奏さんも奏さんで多分、親切で物腰柔らかいだけだろうな。勘違いしてるのは俺の方だと思う。
溜息をついて、目を閉じた。眠かった。
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