第21話 それを脳筋という
「一応レッドタイガーなら戦ったことがあるので…」
「え、あるんですか!?」
「あるの?」
「はい。前のパーティーにいたときですが」
驚きに目を丸くされた。それほど意外なことだろうか。Bランクパーティーだし、人数もやや多めだから、狩る分にはそれほど困らなかった。
「ただ…彼女とは少し前に組んだばかりでして。人が少ない戦いは慣れてないんですよね」
少し話が長くなりそうだったので、その場に腰を下ろす。
気まずそうな顔で、スキンヘッドの男性が口を開いた。
「レッドタイガーって、とにかく素早くて力が強いとは聞いたんですけど…」
「その通りです。馬鹿力と素早さは取柄ですね」
「どうやって対抗すればいいんでしょう?俺らの実力じゃ無理ですよね」
「そうですねえ。こっちもヒーラーと防御役ですから、直接的な攻撃手段は魔法じゃないですし」
確かに戦闘経験はあるが、立ち回りは勝手が違うだろうし、何より奏さんは初心者だ。引き返すことも選択肢に入れておきたい。
「どうする?奏さん」
「私は、やりたいですけど…」
「うん。わかった。じゃあ、ちょっと策を考えようか」
策と呼べるほどのものではないかもしれないが、一応案はある。
相変わらずの景色の中に、静かな足音が響いていた。そっと木々や葉の隙間から覗いてみる。赤みを帯びた毛並み、間違いなくレッドタイガーだ。
数人の呼吸音しか伝わらない中で、捕食者のかすかな唸りがこだました。
手で合図を出す。頷いたのは見て取れた。
彼らは協力してくれるようだった。一応俺のバリアの性能を見せたのもあるが、後は冒険者としての好奇心、だそうだ。
命からがら逃げてきた相手とはいえ、倒せるものなら倒したいとリーダーの男性が言ったのだ。まあ、その心は分からないでもない。無謀と勇気をはき違えるのはいただけないが、負けず嫌いは誰にでもある心だろう。
引き際はしっかり見極めるようにだけ気を付けてほしいけれども、やるならとことんやりたい。
ショートカットの女性がピンを抜き、レッドタイガーの足元めがけてそれを投げた。
瞬間、巨大な爆裂音があたり一面を震わせる。強い光が瞬間的にあたりを照らす。眩しさに思わず目をつむった。耳鳴りが一閃、キーンと響いて、その直後にひどく大きな咆哮を耳にする。
少しの間をおいて、それは収まった。
「来ます!!」
誰のものとも知れない声がはりあげられ、身構えた。金色の、射るような大きい瞳がこちらをねめつけている。
さぁ、戦闘開始だ。
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