第14話 パーティー選びの大切さを説く講座なんて掃いて捨てるほどある

 さてこれからどうするか、という話になったとき、ダンジョンの攻略をしたいと奏さんが言った。


「どうして?」

「前のパーティーのことが原因だと思うんだけど、私、ダンジョンの攻略をして、見返してやりたいんだ」

「へえ」

「仁さんにはまだ言ってなかったっけ。前のパーティーだと、ヒーラーとしての扱いも不十分だったというか…なんか、皆優しくしてくれるのはいいんだけど、私が『戦いたい』って言っても、『女の子には危ないから』って…」


 話を聞くに、奏さんの以前所属していたパーティーは随分過保護だったらしい。後衛ではあるが、他のメンバーに守られっぱなしで、かつ自分から戦う意志を見せても戦わせてもらえないような態度だったそうだ。


 俺ならちょっとずつ様子見しながら戦闘に参加してもらうんだけどなあ。

 まあ予測するに、奏さんはパーティーの紅一点だったそうなので…分かる。同じ男としては、こんな美人なんだし、特別扱いしたくなるのは理解できる。


 でも本人の希望にそぐわないのは良くないことだ。


「だから、私、仁さんといっしょに戦えてよかった。ちょっとだけだったけど、嬉しかったよ」

「お、おう」


 なんか照れるな。


「ところでさ、俺、配信したいんだけど…」

「ああ、そういえば言ってたね。私配信ってやったことないけど大丈夫かな?」

「まあ大丈夫じゃない?一応顔はさらしてもらうことになるのは注意点かな」

「そういうの全然平気だし大丈夫だと思う」

「え、良かった」


 一応配信については前も話し合ってたけど拒否られなくてよかった。


「でもなんで配信したいの?」

「まあ、お小遣い程度なら稼げるかなっていうのもあるし…あと、習慣みたいな?」


 長い間配信者としてやってきたってこともあって、割とそういう習慣が染みついてしまっている気がする。


「でも、ダンジョンって言っても、色々あるな」

「そうだねえ」


 待ち合わせをしたのは高月ダンジョンの前だったか。あのダンジョンは比較的モンスターが弱くて、初心者でも挑みやすい難易度だった気がする。


 ダンジョンの中には挑戦に特別な許可が要るものもあるので、その辺は気を付けておきたい。

 あと、環境がそれぞれ違う。熱帯雨林がひたすら生い茂っているタイプ、砂浜と海が広がっているタイプ、砂漠がどこまでも続いているタイプ、など、階層ごとに若干の違いはあるものの、ダンジョンによって方向性は固定されている。


「どこに挑む?」

「まずは様子見でちょっとだけチャレンジしてみたいな」

「じゃあ、高月ダンジョンは?」

「あぁ、待ち合わせしたところだね」


 高月ダンジョンは中身が森林になっているタイプだったはずだ。そこで採集できる素材も比較的高く売れるので、初心者に人気だった気が。

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