第10話 駆除の仕方が完全に蛇
「じ、仁さん」
「うん?」
「これどうやって使えばいいの?」
とりあえずスネーク系のモンスターによく効くスプレーと、モンスター用の蛇取り棒を渡してみたが、使い方がわからないようだった。
「ああ、それな。頭に十秒以上噴射して、しばらく待つんだ。暴れだしたらその棒で頭を掴む。そこをひねると伸びるから」
「えっ、ああ、や、やってみる、よ……」
随分嫌そうな顔をしているので、少し尋ねてみる。
「怖いか?」
「いや…まぁ、あの、黙ってたんですけど、小さい頃、蛇に噛まれたことがあって、それ以来ちょっと蛇は苦手で……」
「あー」
トラウマね。そういう恐怖体験が尾を引くのはもう仕方がないことだ。
「じゃあ俺がやるよ」
「や、いいよ、私がやる!」
結構食い気味に押し切られた。ので、仕方なく見守りに徹することにした。
スレートスネークはまだこちらに気づいていないようだった。奏さんはおそるおそる、木の影から飛び出した。
スレートスネークがその姿に反応する前に頭へとスプレーを噴射する。
「やった…?」
「まだだ」
灰色の頭をもたげて、牙をむき出しにし、二股にわかれた舌をしきりに動かしている。金色の瞳が不気味といえば不気味だ。
「わっ」
「大丈夫。落ち着いて」
ちょっと危なっかしい。こういう事態だし許されるよな。
このまま見守っているのは少々危険だと感じたので、奏さんの手を握って、間接的に蛇取り棒の先をスレートスネークの首につきつける。
「暴れるときには尻尾が危ないから、木の影とかに下がろう」
「うん!」
ありったけの握力を籠め、蛇の首を千切りとるようにする。青色の血が噴き出た。爬虫類のくせにこういうところがモンスターっぽいんだよな。
暴れだすスレートスネークの体や尾は存外危険だ。それにあたって骨が折れるなんて事例はまれにある。いかに初心者向けといえど、注意するべきモンスターは山ほどあるし、そもそも冒険者をやっているならモンスターと戦う時には細心の注意を払わねばならない。
しばらくして、スレートスネークが静かになった。
「……やった?」
「スプレーが効いてきたらもう一度暴れだす可能性がある」
「え、そうなの?」
スプレーの毒がまわり始めると、もう一度暴れるというのが注意すべきポイントの一つだ。これをうっかり忘れてしまうと素材を剥ぎ取る時に痛い目をみることになる。
頸にはしっかりと切れ込みが入り、青色の血が垂れ流されている。白い骨がわずかに見え隠れしていた。
「じゃ、もう少し待ちますか…?」
「そうだな。少し離れて様子見しよう」
俺達はスレートスネークのそばから離れ、様子見することにした。
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