第9話 初心者向けの蛇
後日、ホームセンターで買ったグッズを試してみたいとの連絡が奏さんの方からきた。一つ目の依頼はきちんとこなせたし、今回はもう少し難易度を上げて俺の方で受注してみようかと思う。
「オンライン冒険者ギルド」というゴシック体の文字がでかでかと書かれたホームページには、発注された依頼が様々に並んでいる。
「新しく発注された順」でひとまずしらべてみることにした。たとえ難易度が低かろうと、長い間解決されていない依頼は何かしらの障害を抱えている可能性が高いからだ。
「お、あったあった」
しばらくスクロールしていると、早速目当ての文字が見つかった。
『スレートスネーク討伐依頼』と書かれているそれに続く文を読む。
『住宅街付近の林でスレートスネークの目撃情報があり、住民一同不安に感じています。近づかないように林は封鎖しましたが、一刻も早く討伐してほしいです』
そう書かれた文章を少し逡巡する。緊急性は高いらしいが、実際のところ難易度がそれほど高いかと言われればそうでもない。
スレートスネーク自体初心者の冒険者が狩れるような強さのモンスターだ。
ゴブリンよりは強敵だろうがたかが知れている。
それにしても、こういう用件に関してはたいてい政府の雇った冒険者が対処するものだが、新しく発注されたばかりらしいので個人でやってる冒険者が受注できるようになっている。
まあとりあえず確認を取ろう。
連絡リストから「奏」と書かれた欄を探し、タップする。
「あのー、もしもし?」
『はい、…あ、仁さん?』
「ああ。ちょっと、依頼が見つかったんだけどさ、スレートスネークっていける?」
『スレートスネーク?……名前は聞いたことあるんだけど、よくわからないなぁ…』
「あ、そうなんだ。いけそう?」
尋ねると、すぐに返事が返ってきた。
『いけると思い、…思う。というか、やらないと力がついていかないので、やりましょう』
「おお、やる気だね。じゃあ、依頼入れとくから。郊外だけどそんなに離れてないから俺が奏さんを迎えに行くよ」
『え、ありがとう!いつぐらい?』
「明後日の八時ぐらい。よろしく」
『分かった!』
「すみません、わざわざ迎えに来てもらって」
「別に大した手間じゃないから大丈夫」
奏さんが車に乗り込みながらそういうので、バックミラーをなんとなく一瞥して返した。
「じゃあ、よろしく」
「おう」
車を走らせる。敬語を外してほしいとは言ったものの、出会ってそれほど経っていない身としては距離感を図りかねてしまった。
会話が途切れ途切れで不安にもなるが、それはあちらも同じだろう。
「ついたよ」
かなり長いこと運転していたように感じるが、実際はそれほどでもない。四十分程度だ。
依頼主から話を聞き、早速、その林に向かうことに。
進入禁止と書かれた立て看板を無視して向こう側へ乗り込み、しばらく林の中を散策してみる。
「…仁さん、あれ……」
「お、スレートスネークだな」
早速ビニール袋を地面におろし、奏に昨日買った対策グッズを握らせた。
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