第4話 ゴブリン=スズメバチ説

俺達はこれからの予定について話し合った。


「じゃあ俺が前衛で奏さんが後衛ってことで」

「…なんか、私の存在意義なくないですか?仁さんがバリア張れるなら怪我することもないと思いますし…むしろソロで活動した方が」

「え、全然そんなことないですよ!」


真っ向から否定する。

そりゃ、ソロでやっても別に良かったかもしれない。一人の方が色々と気楽なことはたぶん今までの経験で一番よく学べたし。

でも一人はなんか嫌だよなぁ。寂しいというか、心細いというか?


「いざという時すごく心強いです。誰だって痛いのは嫌だと思いますよ」

「それは確かに…そうかもしれませんね」

「はい。あと、俺なんか、ソロで活動するの向いてないと思うんです。掲示板を頼ってパーティーメンバーを募集したのも、なんか、一人じゃなくて誰かとワイワイやりたいなぁって……」

「あ、そうなんですね!」

「はい…お恥ずかしながら」


なんとなく今思ったんだけど、やっぱ俺誰かと一緒にやりたいんだわ。さすがにまたこき使われるのはまっぴらごめんだし、奏さんがそんなことをするとはとうてい思えないけど、一緒に戦ってくれる人が必要だなって。


「…んー、でもやっぱり仁さんだけに負担を強いるのは嫌ですよ。私も戦いますかね…どうやって戦えばいいかまったく分からないんですが」

「大丈夫ですよ!俺が教えます」

「ありがとうございますー、助かります…」


その後しばらく話し合った結果、活動予算と次に受注する依頼を決めることになった。


「いきなりダンジョンって…大丈夫でしょうか?」

「まず肩慣らしで、冒険者ギルドから依頼を受けたらいいんじゃないですかね?」

「あー、なるほど」

「俺、一応しばらくの預貯金はあるんですが、カツカツなので。あんまり頭金のかかる依頼は無理ですね」

「そうなんですね。じゃあ、ゴブリンの駆除依頼とかはどうでしょうか」


ゴブリンの駆除はスズメバチの駆除と同じくらいの扱いだ。

奴らは弱いし低能だし、人にとって生死をかけるほどのものではない――ただし、結構やっかいなものはやっかいだ。山林に住み着いたならともかく、人里近くに住まわれると、農作物に被害が出る。


あまり大きい依頼だったら各地にあるギルドに赴いて直接注文しなければならないが、難易度の低い依頼であれば、オンラインでの受注も可能だ。


俺と奏さんは連絡先を交換し、お互いの住所も教え合って、とりあえず今日のところは別れることになった。

聞いてみたら案外住所は近かった。たぶん活動するのにそこまで苦労しないことにほっとする。


「じゃあ、私の方で良さそうな依頼を見つけておきますから。見つかったら連絡しますね」


一時はどうなることと思ったが、なんとかなるだろうという希望が持ててきた。

人生、何が起こるかわからないもんだな。

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