トレーニング6「最後まで出来たご自分を褒めてあげてくださいネ」
「今日は、いよいよ最後のトレーニングですネ!」
「たった5日間なのに体型に変化が出ているの、気づいていますか?」
「ぽっこりお腹は少し引っ込んでいるし、腕だって引き締まって来ています!」
「何よりなんだか顔色も良くなりましたネ。もう全然うちのおじーちゃまには似ていません!」
「5日間では体重こそ変化はなかったかもしれませんが、筋肉量が増えて脂肪が燃えやすい身体になっていることは間違いなしですヨ!」
「え? 家でも毎日トレーニングをしてたって?」
「あ、朝も早起きしてジョギングをしていたんですか?」
「トーフ、毎日食べてくれてるんですか? 近所のワガシヤさんでおはぎも買ってるって?」
「お仕事……すごく忙しいのに……疲れてるのに……」
「うれしい……すごくうれしいですぅ……ううっ……ぐすっ」
「ゴメンナサイ、泣いたりして……ワタシ、嬉しいと泣いちゃうんです」
「今日は、これまでお伝えしたトレーニングを通しで一緒にやってみましょう」
「今までの感謝のキモチを込めて、今日も一緒にトレーニングさせてください!」
*********************
「ラスト3秒です。さーん、にー、いち! はい、終了です! お疲れ様でした! お水をどーぞ!」
「5日間本当によくがんばりましたネ。最後まで出来たご自分をたくさん褒めてあげてくださいネ!」
「ジムのトレーニングはこれで終了ですが、全て家でも出来るメニューですからぜひ続けてみてください!」
「継続は力ナリ! きっと来年の健康診断ではその成果が出ていますヨ!」
「あ、でも無理はキンモツ、です。ご自分のペースでいいですからネ」
「えっ? おためしコースじゃなくて正式にジムに入会したい?」
「…………」
「ゴメンナサイ。それは……出来ません」
「今月で……このジムは閉店することがケッテイしました」
「オーナーにお願いしてみたケド、やっぱりワタシじゃダメみたいです」
「本当はもっと早く言うべきだったのに、黙っていてゴメンナサイ」
「アナタと一緒にトレーニングするのが楽しくて、ジムが閉店するって伝えたら来なくなっちゃうんじゃないかって不安だったんです」
「みんな……そうだったから……」
「ワタシが悪いんです。このジムに通いたいって、家じゃなくてここで一緒にやりたいって思ってもらえるトレーニングが出来なかったから」
「オーナーに言われました。ワタシじゃダメだって。甘いって」
「みんな痩せたくて、鍛えたくて来てるのに私のトレーニングじゃそれが叶わないって」
「ジムに来る人はみんな甘えてるんだから、トレーナーはもっと厳しく指導してやらなきゃダメだって言われました」
「だけどね、ワタシそうは思えなかったんです」
「甘えてる人なんて一人もいません」
「甘い、意志が弱い、怠けてる。そんな人いません。ボディは意志の弱さや強さだけで測れないこと、ワタシ知っています」
「ワタシがトレーニングについた人は色んなジジョウがありました」
「アナタのようにお仕事がとっても忙しい人、アカチャンのお世話をしている人、おじーちゃまやおばーちゃまのカイゴをしている人もいました」
「そんな生活の中で、ヘルシーなボディを維持することがどんなにタイヘンか、ワタシわかります」
「みんな自分のためだけに使える時間の少ない人たちばかりです」
「それなのに、そんなキチョウな時間を使ってワタシのジムに来てくれました。どうにも出来ないジジョウを抱えながら、なんとかしようと努力していた人たちです。甘えている人なんていない。ワタシ、そんなみんなのことゼンリョクで応援したかった」
「……だけど、本当にみんなの役に立てたのかはアヤシイです」
「これからどうするのって?」
「まだ、何も決めていません。フリーのトレーナーとしてお仕事は続けたいと思っていますが、ワタシには向いてないのかもしれません」
「そろそろロシアに帰る時が来たのかもしれませんネ……」
「でもネ、アナタが正式に通いたいって言ってくれたこと本当にうれしかったです。ワタシのやり方はダメなことばっかりだったけど、ダメじゃないこともあったのかなって思えました」
「ずっと自信がなかったから」
「短い間でしたけど、最後まで来てくれて本当にありがとうございました!」
「これからも元気に楽しく、トレーニング続けてみてくださいネ! 応援しています!」
「シェスリーヴァ……!」
*********************
「ど、どうしたんですか!? そんなに息を切らして……ランニングの帰り?」
「えっ? パーソナルトレーナーとしてワタシと個人契約したい?」
「これからも一緒にトレーニングがしたいからって……?」
「…………」
「ううっ……うう……!!」
「スパシーバ……すごくうれしいです!」
「本当はいつもひとりで寂しかったです……みんながジムに来ないとオマエなんか用済みだって、いらないって言われてるみたいで……」
「ワタシでもまだ出来ることがあるんですネ……!」
「アナタのこと、これからもゼンリョクで応援します!」
「これからは本格的な減量に向けて一緒にがんばりましょうネ! ジュラーユ・ウダーチ!」
――第一章・完
【あとがき】
ここまでお読みいただきありがとうございました。
また、★や応援をくださった方々、ありがとうございます。励みになります。
こえけん応募用に初めてラブコメを書いてみたため、一旦ここで第一章完結です。
タイトルほど減量ライフになったのか、かなり怪しいので(5日間じゃ痩せん!水が抜けた程度!)この続きはまたこつこつ書いていきたいと思っています。
ちなみに、アリョーナさんは元格闘家(柔術)という設定があったりします。
158cmと小柄な体型ながら国代表に選ばれるほどの実力家でしたが、学生の頃に怪我で引退。その後、紆余曲折あり日本へやってきました。
日本のお菓子(特にチロルチョコのきな粉餅味)とアニメが大好き。
『雄っぱい』という言葉を教えてくれた友達はアニメ繋がりで知り合ったそうです。
いつかその辺りのお話も書けたらいいなと思っています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます